『オズのケーキ』




               第十一幕  皆が来て

 朝になって皆でパンとお野菜のシチュー、ヨーグルトにフルーツを食べてでした。ケーキは一緒に食べている皆に言いました。
「ではいよいよですね」
「そう、これからね」
 アン王女が応えました。
「皆が来るから」
「まずはですね」
「皆を迎えるのね」
「そうしましょう」
「わかったわ」
「そう、そしてね」
 王女はさらに言いました。
「パーティーをはじめましょう」
「そうしましょう」
 是非にとです、ケーキも頷いてでした。
 皆で国の正門に行きました、フェアリーの女王に六人の大臣達、ケーキと王女にリンキティンク王とボボ王子にナターシャ達五人の顔触れです。
 その皆で正門に着くとでした。
 遠くからまずはでした、ムシノスケ教授とモジャボロ、かかし、樵がやってきました。教授は頭のシルクハットを取ってです。
 皆に恭しく一礼をして他の皆も教授と同じく皆に恭しく一礼しました、そうしてから教授が皆にお話しました。
「ラベンダー熊さん達が後から来るよ」
「後からですか」
「そう、少しクマセンターでやることがあってね」 
 それでとです、教授はケーキに答えました。
「だからだよ」
「そうですか」
「私達は先に出発してね」
「今来られましたね」
「そうなのだよ」
「彼等ももうすぐに来るからね」
 モジャボロも笑顔で言ってきました。
「だからね」
「それで、ですね」
「楽しみにしておいてね」
「それでは」
「臆病ライオン君はオズマとドロシーを迎えに行ったからね」
「二人と一緒に来るよ」
 かかしと樵は臆病ライオンのことをお話しました。
「だから待っていてね」
「彼のことも」
「それでは」
「ほっほっほ、まずは楽しいお友達の第一陣到着じゃ」
 リンキティンク王は教授達の到着に明るい笑顔で言いました。
「よいはじまりじゃ」
「パーティーは今からですね」
「はじまっておるのう」
 リンキティンク王は王子にも言いました。
「そうであるな」
「そうですね、王様のお考えですと」
「パーティーは乾杯からはじまるのではなくな」
「お客さんが来てからですね」
「はじまりじゃ」
「ですね、では」
「今からじゃ」
 まさにと言うリンキティンク王でした。
「パーティーのはじまりじゃ」
「いや、それにはまだ早いですよ」 
 ナターシャがはしゃぐ王様を宥める様にして言ってきました。
「はじめるには」
「どうしたのじゃ?」
「また来られました」
 正門からはじまる黄色い煉瓦の道の先を見ての言葉です。
「お客さんが」
「あっ、クマセンターの人達だね」
 ジョージはその人達を見て声をあげました。
「あれは」
「ラベンダー熊さんに伍長さんに」
 神宝は彼等を見て言いました。
「そしてピンクの子熊さんだね」
「お仕事が終わったんだね」
 カルロスはそれで彼等が来られたことに喜んでいます。
「それも早く」
「遅れるって聞いたからもう少し後かと思っていたけれど」
 恵梨香の考えはそうでした。
「けれど早く終わったんですね」
「それは何よりね」
 ケーキは五人のお話を聞いて言いました。
「それじゃあ今度はね」
「はい、あの人達をお迎えしましょう」
「かかしさんや樵さん達に続いて」
「そうしましょう」
「早く来てくれて何よりですね」
「本当によかったです」
 五人で笑顔でお話します、そしてです。
 今度はラベンダー熊達を迎えます、三人はそれぞれ皆に礼儀正しく頭を下げて挨拶をしました。その後で。
 ラベンダー熊は明るい声で皆に言いました。
「仕事があったけれど」
「そのお仕事をですね」
「急いでかつちゃんと終わらせてね」
 そうしてとです、ラベンダー熊は女王にお話しました。
「来たよ」
「私のお誕生日のパーティーに」
「そうさせてもらったよ」
「それは何よりです」
「二本足で歩くと熊は遅い」
 伍長はこのことを言いました。
「だから四本足で歩いてきたのだよ」
「僕が提案したんだ」
 ラベンダー熊が抱いているピンクの子熊も言ってきました。
「そうして急いでいこうってね」
「だから皆早かったのね」
 アイリはこれでぬいぐるみの熊達がすぐに来てくれたことについて言いました。
「そうだったのね」
「そうよね、足は二本よりも四本で進むとね」
 ミユはアイリの言葉に頷きました。
「足が倍になって余計に速いからね」
「だからお仕事で遅くなっても」
 それでもと言うナナミでした。
「そうすれば速く進めるのね」
「熊さん達もそうなのね」
 カヤは腕を組んでうんうんと頷いています。
「ピンクの子熊さんのいいアイディアね」
「特に熊さんは二本足だと遅いから」
 マユはこのことを指摘しました。
「速く進みたかったら四本足の方がいいわね」
「それも走ったら」
 ミナミはそうすればと言いました。
「余計に速いわね」
「しかも僕達はぬいぐるみだから疲れないしね」
 ピンクの子熊がまた言ってきました。
「幾らでも走られるからね」
「しかも転んでも怪我をしないね」
 かかしがピンクの子熊にこのことを言いました。
「そのこともあるしね」
「そう、だから何の心配もなく走られるから」
「余計に速く進めたんだね」
 樵もピンクの子熊に言います。
「それで僕達のすぐ後位に来たんだね」
「そういうことなんだ」
「あの」
 ケーキはピンクの子熊達のお話をここまで聞いて尋ねました。
「転んだりしたら」
「石にひっかけたりしてだね」
「破れたりは」
「僕達は厚い毛と生地に覆われているんだよ」
 ラベンダー熊がケーキに答えました。
「だからね」
「転んだりしてもですか」
「土や泥で汚れたりはするけれど」
 それでもというのです。
「破れたりはしないよ」
「そうなんですね」
「だからそうした心配もなくね」
 そうしてというのです。
「先に進めるんだ」
「そうなんですね」
「ただ、泳ぐと」
 伍長はこの場合についてお話しました。
「水を吸ってしまって」
「ぬいぐるみは中身はスポンジや生地だから」
「重くなって沈んでしまうのだ」
「だから泳げないのね」
「お水の中では底を歩いて進むのである」
 泳ぐのではなくです。
「そうしているである」
「そうしているのね」
「何かつぎはぎ娘さんやかかしさんと似ているわね」
 ここまで聞いてです、ナターシャは思いました。
「どうも」
「そうね、何か」
「つぎはぎ娘さんもぬいぐるみだし」
「そうしたところはね」
 どうしてもとです、ケーキはナターシャに答えました。
「そのことは」
「そうよね」
「身体の仕組みがそうなっているからだね」
 モジャボロも言ってきました。
「自然とそうなるんだよ」
「そう、オズの国の人はそれぞれ色々な身体を持っているのだよ」
 教授は少し胸を張ってお話しました。
「ならクマセンターの諸君はそうした身体だからそれでいいのだよ」
「それもまたオズの国だから」
 それでとです、王女はモジャボロと教授の言葉に頷きました。
「面白いのよね」
「泳ぐのではなく水の底を歩いて進むことも」
 それもと言ったのは王女でした。
「やり方の一つね」
「泳ぐだけではないのである」
 伍長も胸を張って言います。
「そうした方法があるのならである」
「その方法でよね」
「進むべきである」
「そうよね、さて後は」
「カエルマンさんがおられないですが」 
 ケーキはここでこの人のことを言いました。
「あの人は」
「ああ、彼は途中迷子がいてね」
 モジャボロがケーキに答えます。
「その娘のご両親を探しにね」
「行かれましたか」
「その迷子の子の村は何処かその子に聞いてすぐにわかったから」
「その子を連れてですか」
「村に向かっているからね」
 だからだというのです。
「あと少しで来るよ」
「そうでしたか」
「あと少しで彼も来るよ」
 教授もそのことはとお話します。
「待っていればいいよ」
「それでは」
 ケーキは教授のお話にも頷きました、そうしたお話をしていると実際にでした。
 カエルマンが後ろ足でぴょんぴょんと高く跳びながらやってきました、そうしてそのうえで正門のところに来てです。
 教授よりもやや気取った感じでシルクハットを取って恭しく挨拶をしてそれから皆にこう言いました。
「遅れて申し訳ない」
「そうした理由なら仕方ないですよ」
 ケーキはカエルマンににこりと笑って答えました。
「迷子の子を村に連れて行ったのですね」
「うん、困っている人を助けるのはオズの国の決まりだね」
「だからですね」
「それに困っている人を見捨てることは」
「よくないですね」
「特に子供はね、だからね」
「子供を村に連れて行きましたか」
「そうしてきたよ、それでその後で」
「ジャンプしてですか」
「私はこうしたら歩くよりずっと速いからね」
 そうして進めばというのです。
「だからね」
「そうしてですね」
「進んでね」
 そうしてというのです。
「ここまで来たよ」
「そうでしたか」
「急いできたかいがあったかな」
 カエルマンは額から流れる汗をハンカチで拭きつつ言いました。
「間に合ったし」
「まだ六時にもなっていないわ」
 王女は自分の左手の腕時計を見て言いました。
「それでこれだけ集まるなんて」
「ああ、まだ六時にもなんだ」
「私達日の出と一緒に起きて」
 そうしてというのです。
「朝ご飯食べて歯を磨いたりしてね」
「そしてだね」
「皆を出迎えに来たけれど」
「朝早いね」
「ええ、それでこれだけ来るなんてね」
 このことはというのです。
「集まるのが早いわね」
「皆早起きだからだね」
 それはどうしてかとです、かかしがお話しました。
「だからだよ」
「皆四時半、日の出と一緒に起きて」
「それで進んでいるからなのね」
「そう、特に僕達はね」
「寝る必要がなくて疲れもしないから」
「二十四時間進めるからね」
「その分速いわね」
「今回僕達は教授とモジャボロ君といたからその分普通の足だったけれど」
 それでもとです、樵もお話します。
「それでもね」
「お日様が出ると共に進むと」
「ご飯を食べてね、夜は寝てもね」
「速いのね」
「ずっと歩くとね」
 朝から晩までです。
「ちゃんと舗装された煉瓦の道を進むしね」
「そうそう、跳んで進んでもね」
 そうして進んできたカエルマンも言います。
「ちゃんとした道の上ならね」
「進みやすいね」
「だから皆すぐに来ているのね」
「そうだよ」
「そういうことね、わかったわ」
「ではですね」
 ケーキも言ってきました。
「これからですけれど」
「ええ、これから来る人はね」
「オズマ姫とドロシー王女と臆病ライオンさんですね」
「そうね、いよいよね」
「あの方々が来られますね」
「そのことが楽しみだわ」
「一体何時来られるのかしら」
 ここで、です。女王も言いました。
「オズマ姫とドロシー王女達は」
「そうですね、何時になるか」
「あの人達が来られたら」
 その時こそというのでした。
「いよいよです」
「パーティーのはじまりですね」
「その時こそ」
 こうしたことをお話してでした、そのうえで。
 皆でオズマ達を待つことにしました、そのことを決めるとすぐにでした。黄色い煉瓦の道に三人が見えてきました。
 オズマにドロシーが臆病ライオンを挟んで歩いてきました、女王はその三人を見てそうして言いました。
「来られましたね」
「はい、お話をすれば」
 ケーキが応えました。
「来られましたね」
「そうですね、何といいますか」
「何ていうか?」
「オズの国ですね」 
 まことにというのでした。
「お話をすれば来てくれる」
「そうした国ですね」
「はい、では」
「これからですね」
「国の中に入ってもらって」
「そしてですね」
「パーティーのはじまりです」
 いよいよというのです。
「その時のはじまりです」
「そうですね」
「では」
「これから」
「お招きしましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 オズマ達を迎えました、オズマとドロシーは皆の前に来るとレディーのお辞儀をしました。臆病ライオンも頭を下げて挨拶をしました。
 その後でオズマはフェアリ―の女王ににこりと笑って言いました。
「今回はお招きしてもらって嬉しいわ」
「いえ、こちらこそです」
 女王はオズマに畏まって応えました。
「来て頂いて」
「そう言ってくれるの」
「はい」
 まさにという返事でした。
「心から」
「有り難う、ではね」
「それならですね」
「これからお国の中に入れてくれるかしら」
「喜んで」
 女王だけでなく六人の大臣の娘達も答えました。
「そうさせて頂きます」
「ではね」
「それではね」
「さて、皆で中に入ろう」 
 臆病ライオンも言いました。
「これからね」
「どうぞ」
 女王は臆病ライオンにも笑顔で応えました。
「皆さんも」
「それではね」
「さて、パーティーだけれど」
 ドロシーがここで臆病ライオンに言いました。
「フェアリーの人達は菜食主義だから」
「それでだね」
「お肉はないわよ」
「わかってるよ」
 臆病ライオンはドロシーににこりと笑って答えました。
「そのこともね」
「だから貴方が食べるものはね」
「パンやオートミールにだね」
「ヨーグルトやチーズよ」
 そうしたものだというのです。
「あとお菓子ね」
「僕はお菓子も食べるしね」
「だったらね」
「そうしたものを頂くよ」
「そうしてね」
「わかっているよ、特にミルクをね」 
 こちらをと言う臆病ライオンでした。
「頂くよ」
「そうしてね」
「うん、それとね」
「それと?」
「パンだけれど」
 臆病ライオンはこちらの食べもののお話もしました。
「バターをたっぷりと塗ってね」
「そうしてなのね」
「それで食べたいけれど」
「わかったわ、じゃあ貴方のパンはね」
「そうしてだね」
「食べましょう」
「そうさせてもらうよ、最近ミルクが美味しく感じられて」
 思わぬ舌なめずりする様なお顔で、です。臆病ライオンはドロシーに言いました。
「飲みはじめたらね」
「どんどん飲むわね」
「そうなるんだよね」
 飲みはじめたらというのです。
「腹ペコタイガーが驚く位にね」
「本当にそうなっているわね」
「そうだよね」
「だからなのね」
「パーティーの時もね」
「ミルクを飲むのね」
「そうさせてもらうよ」
 臆病ライオンはドロシーににこにことして答えました。
「是非ね」
「お肉がなくても満足出来るなら」
 それならともです、ドロシーは臆病ライオンにお話しました。
「いいわね」
「そうだね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「ミルクだけではないから」
「そうだね、今のお話にも出てるね」
「オートミールやパンもあるし」
 それにというのです。
「お菓子もあるから」
「オズの国の動物はお菓子も食べるからね」
「だからね」
 それでというのです。
「そちらも楽しんでね」
「そうさせてもらうね」
「是非ね」
「さて、皆揃ったし」
 王女はオズマ達は来たところで言いました。
「これからね」
「いよいよパーティーのはじまりですね」
「そうなるわね」
 女王にも言いました。
「これから」
「そうですね、いよいよ」
「でははじめましょう」
「それでは」
 女王は王女の言葉ににこりと笑って応えました、そうしてです。
 皆でパーティーが行われる森の中の広場に向かおうとしました、ですが。
 ここで、でした。門番さんがここで皆に言ってきました。
「あの、もうお一人です」
「もう一人?」
「来られています」
 こう女王に言ってきました。
「黄色い煉瓦の道から」
「あれっ、もうこれで皆揃ってるわね」
 オズマは門番さんの言葉に首を傾げさせました。
 それで黄色い煉瓦の道の方を見ると実際に誰かがフェアリーの国の方に来ています。オズマはその人を見て言いました。
「ラゲドー王かしら」
「そうね、あの人は」
 ドロシーもその人を見て言いました。
「ラゲドー王よ」
「そうよね」
「先日来られましたけれど」
 ケーキもその人、ラゲドーを見て言います。
「またですか」
「あの人はもういい人ですが」
 フェアリーの女王も言いました。
「また来られるなんて」
「確か今は気の赴くままの旅をされているそうですが」
 ケーキはまた言いました。
「それならですね」
「そうですね、まさに気の赴かれるままに」
「またこちらに来られたんですね」
「そうですね」
 女王はケーキの言葉に頷きました。
「あの人は」
「それで来られて」
「それでは」
「はい、あの人が来られたら」
「あの人もお客様として」
 その立場でというのです。
「この国に入ってもらいましょう」
「そうされますね」
「オズの国はどなたも迎え入れる」
 まさにと言うのでした。
「それがオズの国の法律ですね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとです、オズマが女王に答えました。
「私が定めた法律よ」
「そうでしたね」
「だからね」
「ラゲド―王もですね」
「お迎えして」
 そしてというのです。
「パーティーをね」
「一緒にですね」
「楽しみましょう」
「それでは」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ラゲドーが来ると皆で迎えました、するとラゲドーは皆の笑顔を見てご自身も満面の笑顔になって応えました。
「またふらりとここに来たがのう」
「それが縁だよ」
 かかしがラゲドーに答えました。
「まさにね」
「そうなのじゃな」
「それでだよ」
 今度は樵がラゲドーにお話します。
「貴方もこれからね」
「これから?」
「パーティーにどうかな」
「フェアリーの女王のパーティーに参加してくれるかな」
「わしも参加していいのか」
 ラゲドーはかかしと樵の言葉に驚いて尋ねました。
「ただふらりと来ただけじゃが」
「だからそれが縁なのよ」
 ドロシーもラゲドーに言います。
「そうしてふらりとね」
「パーティーの場所に来たことは」
「だからその縁に従って」
 そうしてというのです。
「貴方もね」
「パーティーにか」
「参加して」
 そしてというのです。
「楽しみましょう」
「ではな」
「ではあらためて」
 女王が笑顔で言いました。
「パーティーの場所に行きましょう」
「それでは」
 皆で女王の言葉に応えてでした、皆でパーティーが開かれる森の広場に向かいました。そこにはもうフェアリーの人達が集まっています。
 そこに入るとです、まずはオーケストラの曲が演奏されました。
「オズの国の国歌ですね」
「はい」
 女王はケーキに笑顔で答えました。
「お祝いの場ですから」
「まずはですね」
「オズの国の国歌ですね」
「この曲を奏でて」
 そしてというのです。
「お祝いとして、そして」
「そしてですか」
「次にフェアリーの国の国歌を」
 この国の国歌もというのです。
「演奏させてもらいます」
「まずはこの二曲からですね」
「パーティーのはじまりです」
「そうなりますね」
「ではこれから」
「パーティーのはじまりですね」
「では女王様はこちらに」
 カヤが女王に言ってきました。
「玉座に」
「もう玉座は用意しています」
 マユも女王に言います。
「ですからそちらに」
「私達の席もあります」
 ミユはその席の方を見ました、見れば緑の蔦や木の葉で作られた奇麗な玉座の一段下に六つの席もあります。
「あちらに座りましょう」
「それで七人で楽しみましょう」
 ミナミは演奏にうっとりとしながら言いました。
「そうしましょう」
「これから食べものや飲みものも出ます」
 ナナミはこちらのお話をしました。
「音楽を楽しみながら観ましょう」
「他の催しもありますし」
 アイリはパーティーのお話をさらにしました。
「そちらも楽しみましょう」
「おお、色々あるね」
 教授はフェアリーの人から差し出してもらったパーティーの進行予定を見て言いました。
「コーラスも劇もバンドもあって」
「コントもあるね」
 モジャボロも予定を見て言います。
「お笑いもあるんだね」
「ほっほっほ、やはり笑うことが一番じゃ」
 リンキティンク王はもう笑っています。
「お笑いもあるのはいいことじゃ」
「京劇も歌舞伎もあるし」 
 王子は演目に注目しています。
「これはいいですね」
「京劇は関羽さんが主役で歌舞伎は廓文章なんだね」
 カエルマンはその演目の中身を見ています。
「いや、これはいいね」
「関羽さんが曹操さんを見逃す場面とは」
 伍長が言うことはといいますと。
「また恰好いい場面であるな」
「廓文章も幸せになるお話だし」
 ピンクの子熊は歌舞伎のお話をしました。
「いいね」
「ミュージカルもあるけれど」
 ラベンダー熊はこの演目を見ました。
「いいね、オードリーは面白いんだよね」
「何か凄く色々あるけれど」
 ナターシャは演目のあまりもの多さに驚いています。
「これ何日もかかるんじゃ」
「そうよね、物凄い数だから」
 恵梨香もこう言います。
「歌劇のオベローンも結構時間かかったんじゃ」
「ミュージカルに京劇に歌舞伎って」
 ジョージはここまであると、と言うのでした。
「朝から晩までやってもね」
「三日はかかるんじゃないかな」
 神宝はそれ位ではないかと言いました。
「これは」
「相当長いパーティーになるのかな」
 カルロスもこう予想しました。
「これは」
「ええ、そうなの」
「女王様のお誕生日のパーティーは三日かかるの」
「三日の間皆で楽しむの」
「色々な演目を出してね」
「そうしていってね」
「三日三晩のお祭りになるのよ」
 六人のフェアリーの大臣達がナターシャ達に説明しました。
「私達フェアリーはお祭りが大好きだから」
「よくパーティーも開くけれどね」
「この時は特別なの」
「何しろ私達の女王様のお誕生日だから」
「三日間楽しむの」
「そうしてるのよ」
「そうなのね、そうしたパーティーなら」
 それならとです、ナターシャは六人の言葉に頷きました。
「是非ね」
「ええ、楽しんでね」
「三日間ね」
「私達もそうさせてもらうし」
「色々な演目があるし」
「飲みものも食べものも出るから」
「そうしてね」 
 六人はナターシャに笑顔でお話しました。
「勿論私達も演目に出るわよ」
「この時は女王様も出られるから」
「私達は七人でいつも歌って踊ってるの」
「このことはもうお話したわね」
「だからね」
「宜しくね」 
「そしてですね」
 ケーキもにこにことして言ってきました。
「お菓子も」
「そのお菓子は、だね」
 カエルマンがケーキのお話に応えました。
「君が作ったものもだね」
「はい、あります」
 ケーキはカエルマンににこりと笑って答えました。
「そういったお菓子も」
「そうだね」
「色々なお菓子を作って」
 そうしてというのです。
「ケーキも作って」
「おお、ケーキかい」
 ケーキト聞いてです、カエルマンはその目をにこりとさせました。この人もケーキが大好物なのです。
「それは楽しみだよ」
「それにです」
「それに?」
「苦手ですけれど」
 こう前置きしてお話するのでした。
「奇麗な和菓子も」
「お抹茶と一緒に食べる」
「ああした和菓子も作りました」
「そうなんだね、ではね」
「そちらも宜しければ」
「あの、ケーキさん本当に和菓子苦手なんですか?」
 ナターシャはここで村でよくケーキと一緒にいるカエルマンに尋ねました。
「奇麗な和菓子が」
「いやいや、それはケーキ嬢の謙遜だよ」
 カエルマンは右の人差し指を立ててナターシャにお話しました。
「実は彼女はそうした和菓子もね」
「得意なんですね」
「とても美味しいものを作ってくれるよ」
「それで何故苦手なんて」
「得意苦手ということは主観なのだよ」
 カエルマンはナターシャだけでなく他の子達にもお話しました。
「実はね」
「主観ですか」
「他の人から見てよく出来ていると思ってもね」
「それでもですか」
「自分が苦手と思っていたらだよ」
 それでというのです。
「苦手になるのだよ」
「そういうものですか」
「だからね」
「ケーキさんは奇麗な和菓子はですか」
「苦手と言っているのだよ」
「そうなんですね」
「得意苦手は主観なのだよ」
 自分自身がどう思うかというのです。
「自分が思うことと人が思うことは違うのだからね」
「このことは何でもですよね」
「そう、本当にね」
 実際にと言うのです。
「私にしてもだよ」
「ご自身が苦手と思われていても」
「他の人から見ればね」
「そうしたことがですね」
「普通にあるからね」
「そうなんですか」
「私はバタフライが苦手だけれど」
 この泳ぎ方がというのです。
「そうなんだけれどね」
「他の人が見るとですか」
「他の泳ぎ方と同じくね」
「得意とですか」
「思われているんだよ」
 こうナターシャそして他の四人の子達にお話しました。
「これがね」
「カエルマンさん泳ぎ凄くお上手ですよ」
「どの泳ぎ方も」
「立派ですよ」
「速いし幾らでも泳げて」
「フォームも奇麗ですし」
「皆はそう言ってくれるけれどね」
 それでもというのです。
「私自身としてはね」
「バタフライは苦手ですか」
「そう思われていますか」
「他の人がどう思っても」
「そうなのですね」
「ご自身では」
「そうだよ、そしてね」
 それでというのです。
「ケーキ嬢も奇麗な和菓子はね」
「苦手とですか」
「思われていますか」
「そうなのですね」
「けれど食べるとですか」
「そうすればですか」
「美味しいですか」
「そう、だからね」
 カエルマンはさらにお話しました。
「期待していいよ」
「わかりました」
「それではです」
「ケーキさんの和菓子も楽しみにしています」
「一体どんな美味しさか」
「今から楽しみです」
「是非共ね、私は嘘は言わないからね」
 カエルマンは胸を張ってこうも言いました。
「期待していてね」
「是非共。それにですよね」
 ナターシャは目をきらきらさせてカエルマンにお話しました。
「ケーキも」
「スポンジのケーキだね」
「焼いたクッキーも出るそうですが」
 それだけでなくというのです。
「スポンジのケーキも沢山出るんですよね」
「はい」 
 女王が笑顔で答えました。
「ケーキはフェアリーの大好物の一つなので」
「だからですね」
「ケーキもです」
「出ますね」
「はい、ですから」 
 それでというのです。
「楽しみにしておいて下さい」
「それでは」
「私も楽しみにしていますし」
 女王自身もというのです。
「ですから」
「スポンジのケーキも」
「そうしておいて下さい」
「それでは」
「しかしあれじゃのう」
 リンキティンク王はオズの国の国歌からフェアリーの国の国歌になりその国歌が終わり今度はオーケストラの別の曲が奏でられる中で言いました。
「ロシアという国はケーキが二つあるのじゃのう」
「昔は一つでした」
「焼くケーキか」
「それだけでした」
「そうであったか」
「クッキーみたいな感じのケーキだけでした」
 そうだったというのです。
「本当に」
「そしてそこにじゃな」
「スポンジのケーキも入って」
 そしてというのです。
「二種類のケーキがです」
「今はあるのじゃな」
「はい、そうです」
「成程のう」
「ただ、来日して」
 ナターシャはリンキティンク王にそれからのこともお話しました。
「それからはケーキは」
「スポンジのケーキだけか」
「そうなりました、オズの国でも大抵そうですね」
「スポンジのケーキじゃな」
「他の国ではケーキは全部そうですね」
 スポンジのケーキだというのです。
「そうなっていますね」
「わしもずっとケーキはな」
「スポンジのケーキですね」
「それだと思っておった」
 そうだったというのです。
「ロシア系の民がわしの国に入って来るまでな」
「そうでしたか」
「うむ、しかしじゃ」
「しかし?」
「食べてみるとそちらのケーキもな」
 ロシアのケーキもというのです。
「美味しいのう」
「そうですよね」
「ロシアのケーキもまた美味い」
 また言うのでした。
「だからな」
「召し上がられていますね」
「左様じゃ、では今のパーティーもな」
「両方のケーキをですね」
「召し上がろう」
「それではな」
 二人でお話しました、皆フェアリーの国歌が終わると起立からそれぞれの席に座ってそうしてでした。 
 演目を楽しみはじめました、それと共にお菓子や飲みものがどんどん出されます。皆そのお菓子や飲みものをビュッフェ方式で食べますが。
 女王はスポンジのケーキを食べてにこりとしてオズの国家元首の座に座っているオズマに対して言いました。
「オズマ姫も」
「ケーキをなのね」
「如何でしょうか」
「ええ、今はアイスクリームを食べているけれど」
「その後で、ですね」
「ケーキをね」
「はい、それでは」 
 女王はにこりとして答えました、そしてです。
 ご自身が食べているケーキについてこうも言いました。
「葡萄のケーキも美味しいわね」
「そうですか」
「なら後で食べています」
「色々なケーキがありますけれど」
「そちらのケーキも頂きます」
「他のケーキも美味しいですよ」
「どのケーキも」
 六人の大臣達も女王に応えて言います。
「ですから」
「皆で全部のケーキを食べましょう」
「このお祭りの間に」
「ケーキは沢山ありますし」
「是非です」
「そうしましょう」
「そうね、ケーキが沢山あるなら」
 それならとです、女王も笑顔で応えました。
「皆で食べましょう」
「そうよ、本当に皆で色々なケーキを作ったから」
 王女が女王にお話します。
「他のお菓子と一緒にね」
「だからですね」
「ケーキはね」
「色々なケーキをですね」
「沢山食べてね」
 そうして欲しいというのです。
「そうしてね」
「わかりました」
「そしてね」
 王女はさらにお話しました。
「飲みものも飲みましょう」
「そちらもですね」
「女王は今は何を飲みたいのかしら」
「紅茶を」
 こちらをとです、女王は王女に答えました。
「頂きたいです」
「ではね」
「紅茶ね」
「ローズティーを」
 こちらの紅茶だというのです。
「頂きたいです」
「そうなのね」
「はい、そして」
 女王はさらに言いました。
「次は林檎のケーキを」
「そちらのケーキなのね」
「はい、それを頂きたいです」
「わかったわ、ただね」
「ただ?」
「とびきりのケーキもあるから」
 こうも言う王女でした。
「そちらのケーキもね」
「楽しみにしていいですね」
「ええ、そうしておいてね」
 こうも言ったのでした。
「是非ね」
「それでは」
「ええ、楽しい思いはこれからよ」
 はじまったばかりだというのです、こうお話してでした。
 女王は実際に今度は林檎のケーキを食べました、そしてローズティーも飲みながら音楽も楽しむのでした。








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