『新オズのオジョ』




                第八章  赤い谷の仙人

 カドリングに入りました、するとそれまで青一色だったのが一気に赤一色になりました。その赤い世界の中でも。
 今オズマ達がいるのは川と山に囲まれた場所でした、オズマはその中にいてこんなことを言いました。
「水墨画みたいね」
「そんな光景ね」
 ビリーナも言います。
「ここは」
「そうよね」
「オズの国にもこうした場所があるのね」
「ええ、オズの国は色々な場所があってね」
「こうした場所もなのね」
「あるのよ」
 オズマはビリーナにお話しました。
「こうしてね」
「そうよね」
「ええ、ではね」
「この景色を見ながらね」
 山や川は遠間では黒く見えます、そして後ろのお空は白く見えます。霞もかかっていてこの世のものとは思えない景色です。
 その景色を見つつです、オズマはうっとりとして言いました。
「歩いていきましょう」
「何かね」
 ボタンはその景色を見ながら言いました。
「普通に何か出てきそうだね」
「仙人さんーー達でしょうーーか」
「うん、船や鳥さんはもう見えるけれど」 
 川には船頭さんが乗っている小舟があり霞の中に山と山の間を鳥が飛んでいるのが見えます。ボタンはそうしたものを見つつチクタクにお話します。
「それだけでなくね」
「仙人さんーーもーーですーーか」
「そう思ったよ」
「仙人さんも中国だね」 
 オジョはボタンのお話を聞いて言いました。
「そういえば」
「そうだよね」
「うん、仙人さんも雲に乗ってお空を飛ぶね」
「孫悟空さんみたいにね」
「その仙人さんもだね」
「いそうだよ」
 ボタンはオジョにも言いました。
「本当に」
「そうだね」
「仙人さんもいるわよ」
 オズマは仙人さんのお話をする二人に言いました。
「この近くに」
「そうなんですか」
「ええ、そうよ」
「そうだったんですね」
「この近くの山に住んでいて」
 そうしてというのです。
「修行もしているわ」
「中国みたいですね」
「だから中国もオズの国には入っているから」
「だからですね」
「仙人さんもいるのよ」
「そうなんですね」
「関羽さんも孫悟空さんもおられるのよ」
 それならというのです。
「仙人さんもでしょ」
「おられても不思議じゃないですね」
「そういえばですね」
 恵梨香が言いました。
「四霊獣もいますし」
「ええ、オズの国にはね」
 ナターシャは恵梨香のその言葉に応えました。
「それぞれの方角にいるわね」
「青龍、白虎、朱雀、玄武がいて」
 ジョージはその四霊獣の名前を出しました。
「それで真ん中には麒麟がいるね」
「それぞれの方角のオズの国を守護しているね」
 カルロスも言います。
「中国の神聖な獣さん達が」
「干支もあるんでしたね」
 神宝はオズマに尋ねました。
「そうでしたね」
「ええ、今のオズの国にはね」
「色々入っていますね」
「そうなっているのよ」
「そうですよね」
「腹ペコタイガーとトトは自分が干支に入っていて喜んでいるわ」
 彼等はそうなっているというのです。
「自分達がね」
「そうなんですね」
「あとエリカとガラスの猫もね」
「あれっ、猫は干支には」
「いえ、中国や日本の干支ではでしょ」
「それでアメリカにも干支は入っていて」
「こうした国々の干支では猫は入っていなくても」
 それでもというのです。
「ベトナムとかでは干支に猫が入っているからね」
「だからですか」
「喜んでいるわ」
「アメリカにベトナム系の人もいて」
「そこからオズの国にも入っているからよ」
 オズの国はアメリカが反映されます、だからアメリカにベトナムが入っているとどうしてもオズの国にもベトナムが入って出て来るのです。
「だからよ」
「それで、ですね」
「そうよ、だからエリカ達もよ」
「干支に入っていてですか」
「喜んでいるのよ」
「そうですか」
「ビリーナも入っているしね」
 オズマはビリーナを見てにこりと笑いました。
「鳥、鶏だから」
「そうよ、私も干支よ」
 ビリーナは胸を張って応えました。
「トト達と一緒よ」
「そうだね」
「あと木挽きの馬もだし」
「僕もだよ」
 赤兎馬が言ってきました。
「馬だからね」
「そうよね」
「そう、馬も入っていることがいいね」
「そうよね」
「鼠に牛に虎、兎に龍に蛇に」
 オジョはその干支を挙げていきます。
「馬に羊、猿、鳥、犬、猪だね」
「その順番よ」
 オズマはオジョに正解と答えました。
「干支はね」
「そうでしたね」
「オズの国は十二の星座とね」
「干支がですね」
「一緒にあるわ」
「そうなんですね」
「干支をそれぞれ司る神聖な生きもの達もいて」
 十二支の彼等にというのです。
「それに十二星座もね」
「ありますね」
「十二宮があって」 
 そしてというのです。
「それぞれの生きものや人達もいるのよ」
「へえ、十二宮もですか」
「オズの国には存在するんですね」
「それぞれの星座の」
「干支と一緒に」
「そうですか」
「天界にあるの」
 十二宮はとです、オズマは神宝達五人に答えました。
「そちらはね、それで干支の生きものさん達も天界にいるわよ」
「そういえば」
 ここで神宝が言いました。
「干支の生きものは神様でした」
「中国ではそうね」
「はい、そうなっています」
「それはオズの国でも同じでね」
「神様だからですね」
「天界にいるのよ」
 オズマは神宝にあらためてお話しました。
「そうなのよ」
「そうですか」
「四霊獣の人達はオズの国の地上にいるけれど」
「干支の神々はですね」
「天界にいるの」
「そちらですか」
「そうなっているのよ、ただオズの国のそれぞれの海には」
 オズの国の周りのです。
「龍王がいるわ」
「四海龍王ですね」
「あの人達がいて」
「それぞれの海を守護していますね」
「オズの国の海の他の神様と共にね」
「そうですか」
「オズの国は中国の神様も多くなったわ」
 オズマの今の口調はしみじみとしたものでした。
「本当にね」
「そうなったんですね」
「そうなの」
「それがしもいるのだから」
 ここで関羽さんが言います、今は赤兎馬に乗っています。大きな関羽さんが大きな赤兎馬に乗って余計に大きいです。
「他の神々がいてもだよ」
「当然ですね」
「そうなるな」
「左様ですね」
 神宝もまさにと頷きます。
「中国、道教の神様が大勢おられても」
「そうだよ」
「そうですね」
「はい、それで孫悟空さんもおられて」
 そしてというのです。
「その人達ともですね」
「機会があれば会えるよ」
「そうですね」
「本当にね」
「そして今回の旅では関羽さんとお会いして」
「願ったのならだよ」
「孫悟空さんともお会い出来ますね」
 この人ともというのです。
「そうなりますね」
「そうなるよ」
「色々と楽しみですね」
「というかオズの国はどんどん変わりますね」 
 しみじみとしてです、オジョは言いました。
「色々なものが入って増えていって」
「どんどん素晴らしい国になっていますね」
「そうだね」 
 オジョは神宝に応えました。
「そうなっているね」
「そうですよね」
「ドロシーさんが最初に来た時から素敵な国だったけれど」
「その時からもですね」
「どんどん素晴らしい国になっているよ」
「何処まで素晴らしくなるでしょうか」
「何処までもよ」
 オズマが二人に答えました。
「それはね」
「果てがないんですか」
「何処までっていいますと」
「そうよ、お空に果てがない様にね」
「オズの国が素晴らしくなることにも」
「果てがないんですね」
「そうなのよ」
 こう二人にお話します。
「そうなのよ」
「そういえば」 
 オジョがここで言いました、オズマのお話を聞いて。
「最初はカリダも狂暴で」
「悪い魔女もいたわね」
「そうでしたね」
「ガーゴイルや透明な隈も怖かったわね」
「今は普通に大人しいですが」
「カバキリンもね」
 この生きものもというのです。
「そうだったでしょ」
「ラゲドー王も悪い人で意地の悪い巨人もいて」
「色々問題があったけれど」
「そういったこともでしたね」
「どんどんよくなっていってるでしょ」
「はい」 
 実際にとです、オジョはオズマに答えました。
「本当にそうですね」
「私達も政治でそうなる様にしたし」
「オズの国はよくなったんですね」
「そしてこれからもね」
「素晴らしい国になっていくんですね」
「問題はなくなっていいものは増えて」
 そうなっていってというのです。
「よくなっていくわ」
「そうなんですね」
「だからね」
 それでというのです。
「何処までもなのよ」
「そういうことですね」
「これは他の国で誰でもでしょ」
「何処までもですか」
「よくなっていけるわ、完全や絶対はなくてもね」
 それでもだというのです。
「際限もね」
「ないんですね」
「そうよ、だからね」
「僕達もですね」
「何処までもよくなっていけるわ」
「仙人にしてもだよ」
 関羽さんがまた言います。
「修行の結果仙人になっても」
「際限なくですね」
「そこからよくなっていけるのだよ」
「仙人さんもですか」
「それがしは菩薩とも言われているが」
 関羽さんはオジョにこのこともお話しました。
「仏教の」
「確か関菩薩ですね」
「そう言われているが仏にしても」
 こちらもというのです。
「煩悩から解き放たれて解脱しても」
「何処までもですね」
「解脱した先の道もあるから」
「さらにですか」
「修行をしてね」 
「よくなっていけるんですね」
「そうだよ、釈尊も」
 お釈迦様もというのです。
「解脱してからも修行をされていたね」
「そういえばそうですね」
「入滅されてもその後も」
「今もですか」
「修行をされているのだよ」
「そうですか」
「そしてそれがしも」
 関羽さんご自身もというのです。
「ずっと修行に励んでいるのだよ」
「神様になられてもですね」
「際限がないのだから」
 よくなっていくそのことにです。
「そうしているよ」
「そうですか」
「そして」
 関羽さんはさらにお話します。
「武芸も学問もそして人格も」
「磨く様にしていますか」
「そうしているのだよ」
「そう、国も人も努力していけば果てしなくよくなるから」
 だからだとです、オズマも言います。
「オズの国もよ」
「素晴らしい国にですね」
「よりなっていくわ」
「そうなんですね」
「ええ、そうなっていくわ」
 オズマはオジョににこりと笑ってお話しました、そしてです。
 そうしたお話をしつつです、オズマは皆を連れて先に進んでいきます。そうしてある山の前に来るとです。
 白い頭にお鬚そして質素な中国の昔の赤い服と杖を持ったお年寄りが山から下りてきてそうして声をかけてきました、見れば随分大柄です。
 お年寄りはオズマ達に笑顔で言ってきました。
「こんにちは、オズマ姫」
「ええ、こんにちは」
 オズマが笑顔で応えます。
「お元気そうね」
「はい、この通りです」 
 お年寄りは笑顔で返しました。
「元気ですぞ」
「それは何よりね」
「オズの国にいますから」
 老いも病も死もないその国にです。
「そして修行もしていますので」
「尚更ね」
「元気にしております」
「それは何よりね」
「そしてこの子達がですね」
 お年寄りは神宝達を見てまた言います。
「オズの国の名誉市民の」
「ええ、五人の子供達よ」
「左様ですね」
「はじめまして」
 五人はここで、でした。それぞれ名乗りました。お年寄りもそれを受けてとても優しいお顔で名乗りました。
「身共は尉遅敬徳という、今はここで仙人として暮らしているよ」
「えっ、尉遅敬徳さんですか」
「そうだよ」
 仙人さんは神宝に笑顔で答えます。
「知っているかな」
「唐の頃の将軍ですね」
「そして退いてからは山で修業していたね」
「仙人さんになろうと」
「子供達と遊びながらね」
「それでオズの国にですか」
「今はいてね」
 そしてというのです。
「こうしてだよ」
「仙人として暮らしておられますか」
「そうなのだよ」
「そうですか」
「この辺りの子供達とも遊んでいるよ」
「今も子供が好きですか」
「大好きだよ」 
 大柄で一見すると厳めしいお顔です、ですがそのお顔立ちはとても優しくて穏やかなものです。眼の光も優しいです。
「もう武器を持って戦には出ないしね」
「仙人さんとしてですね」
「楽しく暮らしているよ」
「そうなんですね」
「何かですね」
 オジョは仙人さんにこう言いました。
「尉遅敬徳さんも大きいですね」
「ははは、よく言われるよ」
「それで力もかなり」
「自信があるよ、けれどもうね」
「武器を持たれることはですか」
「ないよ」 
 もうそのことはというのです。
「そうだよ」
「そうですか」
「今は修行をして子供達と遊んで」
「暮らしておられるんですね」
「後は桃や胡桃を食べてね」
「仙人さんだからですね」
「そうしているよ、ただこの身体だから」
 大きなお身体だからというのです、見れば関羽さんより少し小さい位です。これは関羽さんがあまりにも大きいのです。
「どうしてもね」
「沢山食べてしまいますか」
「それが悩みだよ」
「仙人さんとしては」
「あまり食べたくないともね」
 その様にというのです。
「考えているよ」
「節制ですか」
「それも気をつけてね」
 それでというのです。
「修行をしているけれどね」
「別に食べることはいいだろう」
 関羽さんは仙人さんに言いました。
「それは」
「よいでしょうか」
「オズの国は楽しむ国だし」 
 関羽さんはさらに言いました。
「それに仙人は苦しむ立場かな」
「そう言われますと」
「だから食べることの節制も」
 それもというのです。
「気にしなくていい、そもそもオズの国は食べなくても生きていけるね」
「はい、それは」
「楽しむ為に食べる国だから」
 それがオズの国だからというのです。
「ここはだよ」
「沢山食べてもですか」
「いい筈だよ」
「では」
「そのことに後ろめたさを感じないで」
 それでというのです。
「楽しめばいいよ」
「そうですか」
「そう、子供達と遊ぶのもそうだね」
「身共は子供が好きで」
「ならだよ」
「食べてもですか」
「いいと思う、オズの国の法律は守っているのだし」 
 それならというのです。
「是非だよ」
「桃や胡桃をですね」
「他の食べものもだよ」
 それもというのです。
「食べてもいいよ」
「そうですか、では」
「気持ちよくね」
「沢山食べてですね」
「いいよ、ではこれからは」
「それでは」
 仙人さんは関羽さんのお話に笑顔で頷きました、そしてです。
 にこにことなって神宝達に言いました。
「これから遊ぼうか」
「何をしてでしょうか」
「鬼ごっこでもかくれんぼでもね」
 何でもというのです。
「楽しめるよ」
「そうですか」
「何でもね」
 遊ぶならというのです。
「一緒に楽しもう」
「僕も一緒に遊んでいいかな」
 ボタンは仙人さんのお話を聞いて仙人さんに尋ねました、見れば今ボタンは五人のその中に一緒にいます。
「そうしても」
「勿論だよ」
 これが仙人さんのお返事でした。
「ここにいる皆と遊びたいよ」
「それじゃあ」
「ただね」
 今度はビリーナが言います。
「仙人さんは仙術使うわね」
「うん、仙人だからね」
「遊ぶ時に使われたら」
「ははは、身共が勝ってしまうね」
「楽にでしょ」
「子供達と遊ぶ時に仙術は使わないよ」
 ビリーナにこう答えます。
「絶対に」
「そうするのね」
「子供達が仙術で遊んで欲しいのなら使うけれど」
 それでもというのです。
「鬼ごっこやかくれんぼの時は使わないよ」
「そうよね」
「スポーツで遊ぶ時も」 
 その時もというのです。
「使わないよ」
「そうなのね」
「好きなーースポーツはーー何でしょうーーか」
 チクタクは仙人さんにそのことを尋ねました。
「それーーで」
「野球に相撲にマーシャルアーツだよ」
「格闘技ーーお好きーーですーーか」
「プロレスもだよ」
 こちらもというのです。
「後バレーボールもね」
「そうーーですーーか」
「砲丸投げもやるし」
「色々ーーされますーーね」
「自分でも思うよ」
「野球となると」
 オジョは仙人さんだけでなく関羽さんも見て言いました。
「関羽さんもお得意ですね」
「うむ、それがしはキャッチャーがな」
「そのポジションがですか」
「一番入ることが多い」
「打順は」
「四番か五番だよ」
「関羽さん打つタイプですからね」
 このことを感じて言います。
「だからですね」
「そうなるね」
「身共は外野手かサードをやることが多いよ」
 仙人さんも言います。
「やはり打順は四番か五番だよ」
「そちらですか、仙人さんも」
「時々日本人の街にも行って」
 そしてというのです。
「縦縞のユニフォームも着ているよ」
「ああ、あのチームですね」
「あのチームはとても素敵なチームだね」
「虎がモチーフで」
「いや、素敵なチームだよ」
「それがしもあのチームは好きだよ」
 関羽さんも笑顔で言います。
「華があってとても素敵なチームだよ」
「そうですね」
「うん、本当にね」
「外の世界でも素敵なチームなんですけれど」
 神宝は微妙なお顔になって言いました。
「最近どうも」
「調子悪いよね」
 カルロスのお顔はとても悲しそうです。
「あのチームは」
「打線本当に打たないからね」
 ジョージも残念そうに言います。
「毎回ね」
「あれだけ打たないって凄いわよ」
 ある意味とです、ナターシャも言います。
「特にチャンスでね」
「だから勝てないのよね」
 恵梨香はこうまで言いました。
「あのチームは」
「何か外の世界のあのチームは凄いみたいね」
 オズマは五人のお話を聞いて言いました。
「どうも」
「よくない意味で凄いです」
「本当に打線が打たなくて」
「いつも負けます」
「折角投手陣が頑張っても」
「全然打ってくれませんから」
「打線が打たないとね」
 オズマもこう言います。
「どうにもならないわね」
「相手より沢山の点数を取れば勝てるけれど」 
 オジョは野球の真実を一言で言いました。
「それが難しいからね」
「それがしが今の日本にいれば」
 関羽さんは残念そうに言いました。
「そのチームは助かるだろうか」
「身共でもいいかな」
 仙人さんも言います。
「あのチームには親しみを感じるし」
「そうしてくれたらいいんですが」
「関羽さんや仙人さんがいてくれたら」
「あのチームにバッターとしていてくれたら」
「それだけで全く違います」
「主力バッターがいてくれますと」
 五人はお二人に切実なお顔で言いました。
「宜しくお願いします」
「外の世界におられたらあのチームに入って下さい」
「虎に栄光をもたらして下さい」
「あんな華のあるチームはないのに」
「それでも調子が悪いですから」
「というか何かあるんじゃないかな」
 オジョは五人にかなり真剣に言いました。
「外の世界のあのチームには」
「そうかも知れないですね」
「あの負け方はないですから」
「ここぞって時に信じられない負け方して」
「それで負け続けていますから」
「それを見ますと」
「そうかもね、オズの国には呪いとか祟りとかないけれど」
 それでもというのです。
「外の世界にはあるね」
「そうですからね」
「若しかするとですね」
「外の世界のあのチームにはですね」
「若しかしたら」
「呪いとか祟りがありますね」
「そうかもね、さもないとね」
 それこそというのです。
「ここぞっていう時に負け続けないよ」
「そうですよね」
「幾ら何でも有り得ない負け方しますから
「ニッポンシリーズに出てもそうですし」
「負けに負け続けて」
「それで、ですからね」
「実際オズの国のあのチーム強いからね」
 オジョはあくまでオズの国のことからお話します、生まれも育ちもオズの国なので自然とそうなっています。
「それもかなり」
「左様、あのチームは華があるだけではない」
 関羽さんも言います。
「強さも備えている」
「左様ですね」
「だから真にいいチームだ」
「そうですよね」
 オジョも頷きます。
「あのチームは」
「だからそれがしも大好きだ」
「球場もいいね」
 仙人さんはこちらのお話もします。
「オズの国の高校野球もやっているしね」
「あれも素晴らしい」
「全くですね」
「何か仙人さんって」
 神宝は仙人さんが関羽さんやオジョと野球についても明るくお話をしているのを見てそれで言うのでした。
「思った以上に」
「どうしたのかな」
「気さくで親しみやすいですね」
「別に気取ったことはしていないよ」
「といいますか」
 神宝は仙人さんにさらに言います。
「仙人さんって尉遅敬徳さんですね」
「外の世界ではそうだったよ」
「皇帝さんにお仕えした物凄く強い人だったのに」
「かつてはそうだったがそれでもだよ」
「今はですか」
「元々だよ、宮廷を退いたら」
 その時はというのです。
「この通りだったのだよ」
「元々ですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「身共は元々こうなのだよ」
「そうですか」
「だからね」
 仙人さんは神宝にさらにお話します。
「気取ったことはね」
「ないですか」
「元々こうした人間だよ」
 オズの国に来る前からというのです。
「そうだよ」
「そうですか」
「ただね」
「ただ?」
「もう武器は持たないことはね」
 このことはというのです。
「絶対だよ」
「そのことはですね」
「宮廷にいた頃はよく戦場に出て」
 そしてというのです。
「戦いもしてね」
「武器も持たれていましたね」
「武芸も身に着けているけれど」
 それでもというのです。
「今はだよ」
「そのことはですか」
「そうだよ、今はね」 
 実際にというのです。
「しないよ」
「そうなんですね」
「ただ武芸の鍛錬は今もしていて」
 そしてというのです。
「そこで武器は持つよ」
「そうされていますか」
「勿論武器を持たない格闘技もしているしね」
「先程マーシャルアーツもと言っておられましたね」
「あとね」
「あとっていいますと」
「柔道もしているよ」
 日本の武道であるそちらもというのです。
「あれもいいね」
「そちらもですか」
「西郷四郎という人に教わってね」
 この人からというのです。
「そうしてね」
「楽しんでおられますか」
「そうしているよ」
「スポーツ、格闘技としてですか」
「そうだよ」
 楽しんでいるというのです。
「いつもね」
「そうなんですね」
「何かとね」
「随分楽しんでおられますね」
「何かとね」
「そうですか」
「じゃあ何をして遊ぼうか」
 またこう言う仙人さんでした。
「それで」
「そうだね、何をしようか」
「折角野球のお話出たから」
 それでとです、オズマが応えました。
「野球しない?」
「野球ですか」
「ええ、そうしてはどうかしら」
「それでは」
 仙人さんも応えます、そうしてです。
 皆で野球をして遊ぶことにしました、ですがここでビリーナはこう言いました。
「あたしは野球はしないから」
「そうなの」
「だってグローブとかバットとか持てないから」
 だからだというのです。
「それでね」
「しないのね」
「人がやる野球はね」
 それはというのです。
「しないわ」
「そうなのね」
「だからあたしは応援専門よ、両方のチームを応援するわ」
「私と神宝達五人にオジョ、ボタン、チクタクで九人だけれど」
 オズマはまずは一つのチームを挙げました。
「けれど後は」
「身共はこうして」
 ここで仙人さんはでした。
 一気に八人に分身して言いました。
「この通りです」
「あっ、分身して」
「はい、八つのポジションと打順をです」
 その二つをというのです。
「受け持ちます」
「そうしてくれるのね」
「何なら九人にも」
「最後の一人はそれがしが」
 関羽さんは笑顔で名乗り出ました。
「引き受けさせて頂きますぞ」
「そうしてくれるのね」
「それでは」
「では関羽殿は四番キャッチャーでお願いします」
 仙人さんも笑顔で言います。
「それで」
「それでは」 
 こうしてです、皆は山の近くのグラウンドで野球を楽しみました。その野球はとても楽しいものになりました。
 野球が終わってです、仙人さんは笑顔で言いました。
「いや、楽しかったですな」
「そうですね、凄く楽しくプレイ出来ましたね」
 オジョも笑顔で応えます。
「本当に」
「そうだね、じゃあね」
「はい、僕達はまたです」
「旅を続けるね」
「そうしていきます」
「その旅が楽しくなることをね」
 まさにというのです。
「期待しているよ」
「有り難うございます」
「では身共は山に帰ってね」
「休まれますか」
「そうするよ、帰ったら果物にね」
 それにというのです。
「精進ものを食べるよ」
「そうですか」
「関羽殿に言ってもらったし」
「これからはですね」
「お腹一杯食べてもね」 
 それでもというのです。
「後ろめたく感じることもね」
「ないですか」
「もうね、だから心おきなくね」
 まさにというのです。
「食べさせてもらうよ」
「それはいいことですね」
「うん、では何を食べようか」
 にこにことして言う仙人さんでした。
「これから」
「精進ものにですね」
「胡桃や桃もね」
「楽しまれますか」
「うん、そうするよ」
「オズの国は何でも楽しむ国だから」
 オズマも笑顔で言います。
「楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
「是非ね」
 オズマは笑顔で仙人さんに言ってでした。
 一行は仙人さんと手を振り合って別れました、すると神宝達五人は明るい笑顔でこんなことをお話しました。
「面白かったね」
「仙人さんと一緒に遊べて」
「オズの国にも仙人さんがいてね」
「それで一緒に遊べて」
「楽しかったわ」
「うん、野球が出来て」
 それでとです、オジョは五人にも言います。
「よかったね」
「そうですよね」
「とても気さくで優しい人で」
「しかも公平で」
「子供と笑顔で遊んでくれて」
「いい人でしたね」
「凄く立派な人である筈なのに」
 仙人という立ち場からです。
「それでもね」
「そうですよよね」
「気さくで優しくて」
「それで、ですね」
「私達と同じ目線になってくれて」
「いい人ですね」
「あれは童心っていうんだね」
 こうも言うオジョでした。
「まさに」
「大人でありながら子供の純粋な心を失わない」
 関羽さんはオジョに応えました。
「人の極意の一つだよ」
「そうですよね」
「尉遅殿はそれを備えておられるのだよ」
「そこが凄いですね」
「だからこそ仙人になれて」
「そしてですね」
「オズの国にもいるのだよ」
「そうですね」
 オジョは関羽さんの言葉に頷きました。
「あの方は」
「それがしもあの様に」
「童心をですね」
「持つ様にしよう」
「関羽さんも持っておられると思います」
「だといいが」
 それでもとです、関羽さんはこう返しました。
「若し持っているならそれを失わない」
「その様にですね」
「したいね」
「そうですか」
「そう、だから」
 それ故にというのです。
「頑張っていくよ」
「関羽さんもですね」
「そうするよ」
 ここはというのだ。
「それがしも」
「そうですか」
「うん、是非ね」
「関羽様はもう童心を持たれていますけれど」
 神宝が見るにです。
「その童心をですね」
「失わない様にね」
「努力されるんですね」
「そうするよ」
「そうですか」
「今話した通りにね」
 神宝にもお話します。
「そうさせてもらうよ」
「そうですか」
「こうしたことも努力だね」
「そうですね、では」
「これからもですね」
「君達とも遊んで」
「童心をですね」
「持って行くよ」
 こう言ってです、関羽さんは。
 何と神宝達五人をそれぞれ左右の手に持ち上げました、五人をご自身の両手にそれぞれ座らせて言うのでした。
「どうかな」
「うわ、凄いですね」
「僕達を手に座らせられるなんて」
「流石関羽さんですね」
「大柄で力持ちですから」
「こうしたことも出来るんですね」
「この通りね」
 こうお話します、そしてです。
 関羽さんは五人と一緒に遊びながら旅を続けます、他皆もその関羽さんと一緒に遊びながら旅をするのでした。








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