『オズのホボ王子』




                第十二幕  最高のパーティー

 まずはかかしと樵が来ました。
「やあ、お世話になるよ」
「楽しみにしているよ」
 見れば二人共普段よりずっとお洒落です。かかしは洗濯を受けて中の藁は新品です。樵は全身を油でぴかぴかに磨いています。
「僕達もお洒落をしてきたしね」
「果たしてどんなーティーかね」
「もう今から楽しみで仕方なくて」
「うきうきしているよ」
「全くだよ」 
 ファイター大尉も来ました、この人も全身を油でぴかぴかに磨いています。
「もうどんなパーティーになるか楽しみで仕方ないよ」
「ただ僕達は食べることも飲むこともしないからね」
 ジャックも奇麗な服を着てカボチャは採れたてです。 
「他のことを楽しませてもらうね」
「それは我々も同じだね」
「全く以て」
「飲んだり食べたりする必要がないことは」
 こう言ってです。
 ラベンダー熊とノッコ伍長そしてピンクの子熊が来ました、そうして一同に明るく挨拶をして言いました。見れば彼等も奇麗に洗濯をして奇麗になってしかも乾燥も為されていてふわふわになっています。
「さて、それでは」
「どんなパーティーか」
「音楽や踊りや劇を楽しむよ」
「楽しみ方は色々だよ」
 今度はガーゴイル達です、彼等もです。
 木を磨いています、それでぴかぴかの身体で口々に言います。
「跳んだり跳ねたり」
「観て聴くのもよし」
「そうした楽しみ方もあるから」
「我々もパーティーは大好きだよ」
「音楽が楽しみだね」
 ミュージッカーの関心は当然こちらでした。
「どんないい音楽なのかな」
「私達も期待しているわ」
「一体どんなパーティーか」
「招待された時は嬉しかったし」
「今もそうよ」
「これまでずっと楽しみにしていたし」
「今からその楽しみを体験出来るのよね」
「そう思うと嬉しくて仕方ないわ」
 妖精の女王と六人の大臣達も来ました、七人共髪の毛をセットしてお風呂に入ったうえで香水もかけてそれぞれの色のドレスを着ています。
「宜しくね」
「今からお邪魔させてもらうわ」
「そしておもてなしを受けさせてもらうわ」
「ではまずは待たせてもらうわ」
「その間も期待しているから」
「一体どんなパーティーなのか」
「私達は待っているわね」
 七人が笑顔で言うとでした。
 カエルマンとクッキーも来ました、カエルマンはいつもの黄色いタキシードですが新品で奇麗に整えられていてシルクハットもそうなっています。クッキーはいつもの服装ですがやっぱりかなり奇麗なものです。二人共お風呂に入ってセットもしています。
「遂に来たね」
「そうですね」
「では今から」
「楽しみましょう」
 二人の次はです。
 狐と狸と貉のそれぞれの王様が来ました、彼等は欧州の貴族の様な礼装を着ています。フリルが一杯付いていてきらきらしていて彼等自身も奇麗な毛並みになっています。
「いよいよ来たね」
「そうだね」
「これまでずっと楽しみにしていたけれど」
「遂にパーティーの時が来た」
「なら楽しもう」
「そうさせてもらおう」
 三人共楽しみにしている感じです、そして。
 今度は幸村さんと十勇士が来ました、十人共赤い袴姿で家紋は六文銭です。まずは幸村さんが赤い馬から降りて言いました。
「皆の者、これよりだ」
「はい、宴です」
 佐助さんが応えました。
「これより」
「殿、我等は宴の時も一緒ですな」
 才蔵さんも言います。
「だから今もこうして」
「我等はオズの国でも共にいますからな」
 清海さんは笑っています。
「ですからこの度も」
「我等もと言って下さり何よりです」
 伊佐さんもいます。
「殿が参られるなら我等もと」
「全く以て我等は果報者です」
 海野六郎さんは感激しています。
「殿にそう言って頂いて」
「かつて死ぬ時と場所は同じと誓い合った仲」
 望月六郎さんも感無量な趣です。
「それがオズの国までとは」
「そしてこの宴もとは」
 甚八さんは泣きそうになるのを必死に堪えています。
「何と言っていいか」
「我等これからも殿と共におりまする」
 鎌之介さんも幸村さんに言います。
「それが我等の最高の喜びですから」
「では殿これよりです」
 小助さんも笑っています。
「宴を楽しみましょう」
「宴を楽しむ時も常に共に」
 十蔵さんの声は感極まっています。
「そうしましょうぞ」
「これよりな。では大助」
 幸村さんは十勇士に囲まれ満面の笑顔で応えつつ共にいるご子息の大助さんにお顔を向けて声をかけました。
「我等はな」
「宴の招きに応じ」
「楽しむことになる」
「わかり申した」
 大助さんも応えます。
「それではこの度は」
「我等十二人共にな」
「宴を楽しみましょう」
「うわ、凄い人達が来られたわね」
 妖精の七人のうちのマユが幸村さん達を見て言いました。
「日本のお侍さんと忍者さん達ね」
「真田幸村さんと十勇士に大助さん」
 アイリも言います。
「立派ね」
「あの人達が噂に聞く人達ね」
 ナナミはじっと見ています。
「武芸十八般を備えた」
「忠義と信義に生きる人達ね」
 ミユはそのお心について言います。
「誠実に」
「心技体全て整っているのよね」
 ミナミもこのことを知ってます。
「そうよね」
「はじめてお会いするけれど」
 カヤの言葉はしみじみとしたものです。
「そう出来て光栄よ」
「そして他の人達にもお会い出来たから」
 女王であるヨシノが最後に言います。
「何て素敵な一日なのかしら」
「そうですね」
「本当に光栄の極みです」
「しかもオズマ姫まで来られるそうですし」
「リンキティンク王もおられます」
「どの方々も立派な方ばかりで」
「これからのパーティーも楽しみですね」
 七人で笑顔でお話します、そしてです。
 ここでモジャボロは渋い色の着流しの上にマントそして帽子を身に着けた面長の男の人を見て唸りました。
「粋な格好の人だね」
「そうだね」
 弟さんもその人を見て言います。
「これはまた随分と」
「昔の日本の恰好みたいだね」
「一九三〇年代かその頃だね」
「確かそうだったね」
「日本の年号ですと昭和のはじめ頃ですね」
 日本人の恵梨香が言ってきました。
「その頃は」
「確かそうだったね」
 神宝が恵梨香に応えます。
「一九三〇年代だと」
「その頃は和服と洋服が一緒だったね」
 カルロスも言います。
「日本は」
「和洋折衷ね」
 ナターシャはこの言葉を出しました。
「この服装は」
「正反対の様で合ってるね」
 ジョージもその人の服装について言います。
「見事に」
「いいセンスだね」
 ボボ王子もそれはとなっています。
「あの人のファッションは」
「そうね、着流しの上にマントなんて」 
 アン王女も言います。
「素敵過ぎるわ」
「全くだね」
「よろしゅう」
 その人が笑顔で応えました。
「織田作之助です」
「貴方が大阪出身で今はあの街にいる」
 教授が応えます。
「作家さんだね」
「そうです、私がです」
 その人も笑顔で頷きます。
「織田作之助、織田作です」
「そうだね、貴方の本は読ませてもらっているけれど」
 教授は笑顔で応えました。
「どの作品も親しみやすくていいね」
「そう言うてくれますか」
「うん、これからも読ませてもらうよ」
「これからも書かせてもらいます」
「さてさて、どんな宴かのう」
 今度は金色に輝く日本の礼装を着た小柄でお猿さんみたいなお顔の人が来ました、随分と剽軽で気さくな感じです。
「一体」
「この人がじゃな」
 リンキティンク王はその人を見て言いました。
「豊臣秀吉さんじゃな」
「その通りじゃ」 
 その人ご自身が応えました。
「わしが羽柴藤吉郎、本姓と諱を豊臣秀吉という」
「そうなのじゃな」
「昔は本姓と諱は言わなかったが今はよい」
 そうだというのだ。
「好きに呼んでくれ」
「では秀吉さんとな」
「呼んでくれるか」
「そうさせてもらう」 
 こうお話しました、そして。
 ビリーナにノーム王、オジョ、驢馬のハンク、トロット、キャプテン=ビル、ベッツイ、エリカ、腹ペコタイガー、臆病ライオン、ガラスの猫、つぎはぎ娘、オズの魔法使い、グリンダ、トト、そしてオズマとドロシーが来ました。
 楚の皆を見てです、王子は笑顔で応えました。
「遂に皆来たね」
「わしもおるぞ」
 南蛮風の服を着た面長で整った顔の男の人が来ました、声はかなり高いです。
「宜しくな」
「そう言う貴方は」
「織田三郎という」
「平信長さんですか」
「織田信長とよく呼ばれておる」
 王子に笑顔で言います。
「わしも招かれておってな」
「それで、ですか」
「この度参った」
 こう言うのでした。
「宜しくな」
「はい、こちらこそ」
「他の皆も来たぞ」 
 リンキティンク王がまた言ってきました。
「よいぞよいぞ」
「関羽さんもエジソンさんもですね」
 ジョーズはさらに来た人達にも驚いています。
「他の人達も」
「そうであるな」
「それでこの人達とですね」
「パーティーじゃ」
「これからですね」
「そうよ、皆で楽しむのよ」
 ドロシーが言ってきました。
「これから」
「そうですよね」
「そう思うとでしょ」
「物凄く楽しみです」
 ジョージはドロシーに笑顔で応えました。
「本当に」
「私もよ、じゃあはじまるまではね」
「それまではですね」
「他のことをして楽しみましょう」
 こう提案するのでした。
「そうしましょう」
「それまでは、ですか」
「ええ、遊ぶかお休みするか」
 そうしてというのです。
「そうしましょう」
「それでは」
「それとね」 
 ドロシーはさらに言いました。
「私達は面白いものを持って来たの」
「面白いもの?」
「そう、地中を泳げる様になる軟膏よ」
「地面の中をですか」
「そうなの、服はそのままでね」
 水着でなくてというのです。
「泳げるのよ」
「それは素敵ですね」
「しかも汚れないのよ」 
 つぎはぎ娘がこう言ってきました。
「これがね」
「それは凄いね」
「そうでしょ、パーティーの間それで泳ぐ?」
 つぎはぎ娘はジョージに提案しました。
「これから」
「そうするんだ」
「あんた達がよかったらね」
「これで何処でも泳げる様になったんだよ」
 魔法使いは笑顔でお話しました。
「お水でなくてもね」
「ううん、それも魔法の道具ですね」
「魔法にね」
 それに合わせてというのです。
「科学もね」
「加わったものですか」
「そうだよ」
 こうジョージにお話します。
「その軟膏はね」
「魔法と科学ですか」
「この二つが合わさると凄いものが出来て」
「その軟膏もですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうしたものだよ」
「そうなんですね」
「ではね」
「その軟膏を身体に塗って」
「泳ぐかい?」
「それじゃあ。ただ」
 ここでジョージは少し考えて言いました。
「軟膏を塗るといっても」
「身体全体ですか?」
「それだと水着になりますね」
「着たままで泳ぐのと」
「そうですよね」 
 ジョージだけでなく恵梨香達四人も言います。
「そうなりますよね」
「それじゃあやっぱり水着が必要なんじゃ」
「ちょっと水着お借りしないと」
「それなら」
「借りてきますね」
「そう思うでしょ」 
 ここでオジョが笑って言ってきました、見れば後ろにラングイデイア姫とユフ王家の人々が場に入ってきています。
「それがなんだ」
「お鼻に塗るだけでいいのよ」
 ベッツイも言ってきました。
「軟膏は」
「そうするだけですか」
「お鼻に塗るだけですか」
「それだけでいいんですか」
「そうしたら地面の中で泳げるんですか」
「服を着たままで」
「そうよ」
 トロットが答えました。
「だからすぐにでも泳げるわ」
「僕達だって泳げるんだよ」
 臆病ライオンが楽しそうに言ってきました。
「そうしたらね」
「潜れるしね」
 腹ペコタイガーはこちらも出来るとお話しました。
「とてもいいよね」
「私だって泳げるしね」 
 ビリーナは自分のことをお話します。
「嘴の上に塗ったら」
「泳ぐなら塗りなさいよ」
 ガラスの猫はジョージ達に右の前足を振りつつお話しました。
「そうしたらいいから」
「そうそう、地中で泳ぐのもいいものよ」
 エリカはこう言いつつ地面を見ています。
「お水の中とはまた違った趣でね」
「僕はもうドロシーに塗ってもらったよ」
 トトはそうでした。
「だから今から準備体操をして泳ぐけれどどうかな」
「さて、泳ごうか」
 ハンクもその気になっています。
「今からね」
「ほっほっほ、では泳ごうか」
 リンキティンク王はもうその気です。
「軟膏を塗らせてもらうぞ」
「そうですね、では僕も」
 王子は王がそう言うならと続きました。
「塗りますね」
「そうするのう」
「はい、これから」
「軟膏の効果が切れたら自然と地表に出るからね」
 ノーム王のカリフ氏はこのことをお話しました。
「安全だよ」
「そうなのか」
「そう、しかも地面で汚れないから」
「そうなのじゃな」
「あとあがろうとても」
 その時もというのです。
「自然にだよ」
「あがれるか」
「そうしたとても安全な泳ぎが出来るから」
 だからだというのです。
「どうかな」
「わしは最初からそのつもりじゃ」
「それではだね」
「塗るぞ」
「そして奥もね」
 王子も続きます。
「そうさせてもらうよ」
「じゃあ僕達も」
「そうさせてもらいます」
「地面の中を泳げるなんて面白いですね」
「一緒に泳がせて下さい」
「そうして楽しみましょう」
 ジョージ達五人も言います、こうしてです。
 皆で楽しく地面の中で泳ぎに入りました、この場にいる皆がそうしましたがここで王女は幸村さんの泳ぎを見て言いました。
「泳ぎもお上手なのね」
「水泳も武芸に入るからね」
 傍にいる王子が応えました。
「だからだよ」
「幸村さんは水泳もお上手なのね」
「馬術に剣術にね」
 それにというのです。
「槍、弓、手裏剣もで」
「そうしたものは全て出来るのね」
「それでだよ」
「水泳も武芸のうちだから」
「それでなのね」
「幸村さん達はね」
 見れば大助さんも十勇士の人達もかなりのものです。
「お上手なんだ」
「成程ね、それに王子も」
 見ればこの人もでした。
「かなりのものね」
「僕は海に面している国にいるからね」
「いつも泳いでいるから」
「それでだよ」
 こう王女にお話します。
「水泳はね」
「得意なのね」
「そうなんだ」
 笑顔での言葉でした。
「本当にね」
「だからなのね」
「楽しませてもらうよ、そしてね」
「そうしてよね」
「パーティーもね」 
 こちらもというのです。
「楽しもう」
「そうしましょう」
 皆でこうお話してでした。
 皆で地中の水泳も楽しみました、その他にも色々な遊びを楽しみました。そしてパーティーになりますと。
 皆はリンキティンク王の宮殿に集まりました、その宮殿の最上階の庭園に出ました。そこは様々な色と種類のお花が咲いていて。
 運河やお池もあってその中にはお魚が沢山います、そうしてです。
 鳥や蝶々が飛んでいます、王様は皆をそこに招待して笑顔で言いました。
「空中庭園じゃな」
「あっ、実際にそうなっているね」
 トトが言うとです。
 庭園があるフロアが宮殿から離れて空中に浮かんでいます、それでトトはこれはというお顔になって言いました。
「ここはね」
「空中庭園じゃな」
「文字通りのね」
「普通に建物の最上階に庭園があるのはある」
 この通りにというのです。
「しかしそれだと面白くないからのう」
「王様が考えまして」
 王子も皆にお話します。
「それで、です」
「この様にな」
「ボタンを押すと空中に浮かぶ様になったんです」
「ボタンはわしが持っておる」
 見ればスイッチもあります、まるでテレビのリモコンの様です。
「それを押せばじゃ」
「こうして浮かぶんですよ」
「しかも自由に動かせる」
「スイッチにはコントローラーもありまして」
 それでというのです。
「それが出来ます」
「凄いわね」
 ドロシーもそのことに頷きます。
「まさかこんな庭園を造るなんてね」
「外の世界に空中庭園にあると聞いた」 
 そうなったというのです。
「大昔にな」
「バビロンの空中庭園ね」
 ナターシャはすぐにそれだとわかりました。
「世界七不思議の」
「古代にあったのよね」
 恵梨香が応えます。
「高い建物の屋上にお水を引いて庭園を造ったのよね」
「今じゃ何でもないけれど昔は凄い技術でね」
 神宝はこのことを言います。
「不思議とさえ言われていたんだよね」
「今と昔じゃ技術が違うからね」
 カルロスもそれでと言います。
「だからだね」
「今じゃよくあるけれど昔は凄い技術で」
 ジョージも言いました。
「不思議と言われる位だったんだよね」
「わしはその話を聞いてなら本物の空中庭園をと思ったのじゃよ」
 王様は笑顔で言いました。
「それで造ったのじゃ、そしてここでじゃ」
「パーティーをするんだね」
「そうじゃ」 
 魔法使いに笑顔でお話します。
「王子が主催するな」
「場所も僕が選びました」
 その王子が言います。
「そうしました」
「そうなのね、それでこれからなのね」
「うん、歌に踊りにお芝居に」
 王子はラグイデイア姫に笑顔で応えました。
「そしてご馳走に飲みものにね」
「色々楽しむのね」
「そうだよ、席も用意したしね」
 見れば庭園の緑と様々な色と種類のお花の中にです。
 大きなステージがあります、王子はそのステージの前に置かれている沢山の四人用のテーブルを指差してお話しました。
「あそこにね」
「あそこに座ってなのね」
「皆でね、そしてね」 
 そのうえでというのです。
「座っているとお料理はどんどん運ばれてくるから」
「飲みものもなの」
「食べたいものを言えば」
 それでというのです。
「持って来てくれるよ」
「作ってくれて」
「そして飲みものもね」
 こちらもというのです。
「ちゃんとね」
「持って来てくれるのね」
「どんなお料理も作ってくれてね」  
 そうしてというのです。
「出してくれて飲みものもだよ」
「だからなのね」
「皆で楽しもう」
 こう言うのでした。
「そして自分が詠って踊りたいなら」
「ステージに立てばいいのね」
「そうだよ」
「ではわしが話をしてもよいか」 
 秀吉さんが言ってきました。
「最近漫才や落語も身に着けてのう」
「そうなんですか」
「うむ、講談も出来るが」
 それでもというのです。
「そうしたことも出来る」
「じゃあしてくれますか」
「うむ」 
 そうだというのです。
「よかったらな」
「ではお願いします」
「そして馳走じゃが」
 秀吉さんは笑顔でこうも言いました。
「実はわしは臼で挽いた米、挽き米や麦飯が好きじゃが」
「あれっ、質素なんだ」
 カエルマンさんはこのことに驚きました。
「天下人っていうからね」
「贅沢だと思うじゃろ」
「きんきらきんの服だしね」
「確かに贅沢は好きで美味いものもな」
「お好きだね」
「美味いものは大歓迎じゃ」
 秀吉さんは満面の笑みで言いました。
「しかし質素なものもな」
「好きなんだ」
「うむ、やはり一番好きなのはな」 
 秀吉さんはカエルマンに笑顔でお話しました。
「そうしたものじゃ」
「挽き米や麦飯なんだね」
「それをねねが作ってくれた漬けものと一緒に食うことがじゃ」
 それがというのです。
「最高なのじゃよ」
「そうしたところが親しみ持てるわね」
「そうよね」
 ベッツイとトロットは秀吉さんのそうしたところに思いました。
「質素なところもある」
「そんなところがね」
「わしは自分の舌に素直でな」
 それでとです、秀吉さんはベッツイとトロットにも言います。
「一番となるとな、昔から食っていた」
「そうしたものなの」
「それでお漬けものとなの」
「食うのが一番いい」
「ちなみにねねというのはこ奴のかみさんじゃ」
 信長さんが笑って言ってきました。
「これが出来た者でのう」
「そうなんですね」
「うむ、それでじゃ」
 信長さんはクッキーに応えて言いました。
「この世界でもこ奴をよく支えて仲良くしておる」
「そうなんですね」
「そうじゃ、あとわしは味噌が好きでな」
 信長さんは自分の食べものの好みのお話もしました。
「焼き味噌がな」
「お好きですか」
「そうなのじゃ、毎食食っておる」
「では今回のパーティーの時も」
「食うぞ」
 その焼き味噌をというのです。
「最初に」
「そうされますか」
「うむ」
 その様にするというのです。
「無論洋食や中華も食うが」
「最初はですね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「焼き味噌、そしてその前にな」
「焼き味噌の前にですか」
「梅干しじゃ」
 この食べものだというのです。
「それを食う」
「毎食ですか」
「わしは梅干しも好きでな」
 それでというのです。
「これも外せぬ」
「それでオズの国でもだね」
 モジャボロが聞きました。
「梅干しを食べるんだね」
「焼き味噌もじゃ」
「その二つは絶対なんだ」
「わしはのう、あと酒はな」
 こちらはといいますと。
「よいぞ」
「いらないんですか」
 モジャボロの弟さんが尋ねました。
「お酒は」
「好きな様に見えるじゃろ」
「はい、とても」
「しかしわしは外の世界でも酒は飲めず」
 そうしてというのです。
「今もほんの少し飲むと酔い潰れてします」
「つまり下戸なのね」 
 つぎはぎ娘が言ってきました。
「信長さんは」
「それで甘いものが大好きじゃ」
「じゃあパーティーの時も」
「色々食するがな」
「デザートが一番楽しみなのね」
「そして甘い飲みものもな」 
 こちらもというのです。
「そうするぞ」
「いやあ、食べものの好みも面白いね」
「そうだね」
 かかしと樵が見てもです。
「僕達食べない人から見ても」
「何かとね」
「信長さんがお酒飲まないっていうのが意外だよ」 
 ジャックも信長さんに言います。
「甘いものが好きっていうのも」
「ははは、よく言われるわ」
「やっぱりそうなんだね」
「しかし実際に酒が飲めぬのじゃ」
 信長さんはジャックに少し苦笑いを浮かべてお話しました。
「だからオズの国におってな」
「それでだね」
「甘いものがふんだんにあるからな」
 だからだというのです。
「実によい」
「じゃあ皆で楽しもう」
「甘いものも飲んで食べてね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーも言います。
「そしてそのうえでね」
「パーティーを楽しもうね」
「では今からはじめよう」
 主催者の王子が言ってでした。 
 皆席に着いてそれぞれの野みたいものを手にして乾杯しました、食べない人達は拍手をしてそれに加わり。
 皆で飲んで食べてそうしてです。
 歌や踊り、お芝居も楽しみました。そのうえで。
 自分が歌って踊りたい人達もステージにあがりました、つぎはぎ娘は跳んではねて七人の妖精達も歌って見事なダンスを披露して。
 秀吉さんは落語を、魔法使いはマジックを見せました。そしてです。
 織田作さんは浄瑠璃をしてみせてからです。
 自分のテーブルに戻ってカレーを頼んで食べますが。
 そのカレーは最初からご飯とルーが混ざられていてその真ん中に生卵があります、織田作さんはその卵におソースをかけてです。
 カレーと混ぜ合わせて食べます、ドロシーはそのカレーを見て言いました。
「また独特なカレーね」
「あの街にあるカレーの一つでな」
 織田作さんはドロシーに笑顔でお話しました。
「これがまた美味いんや」
「そうなのね」
「お姫さんもどや」
 織田作さんはドロシーに笑って誘いをかけました。
「食べてみるか」
「そのカレーを?」
「そや、どないや」
「そうさせてもらっていいかしら」
 ドロシーも笑顔で応えてでした。
 そのうえでそのカレーを食べます、そうして一口食べて笑顔になりました。
「これは確かにね」
「美味いやろ」
「ええ、こんなカレーもあるのね」
「そや、それでや」
 織田作さんは自分の向かい側に座って食べているドロシーにお話しました。
「私は外の世界におった頃からや」
「そのカレーを食べているのね」
「そうなんや」
「そうなのね」
「それでな」
 織田作さんはさらに言いました。
「これからもな」
「このカレーを食べていくのね」
「そうしてくで、あとかみさんと一緒の時は」
「このカレーを食べるだけじゃないわね」
「わかってるか、善哉もや」
 こちらもというのです。
「お椀が二つ出て来るな」
「それも食べるのね」
「そうしてるねん」
「そうなのね」
「そや、そちらも楽しいで」
「じゃあ今度いただくわね」
 ドロシーは織田作さんに笑顔で応えました、そうしてです。
 カレーを食べ終わった後でベッツイとトロットそれにオズマの四人でコーラスを歌いました、そのコーラスを聴いてです。
 王子は笑顔になって同じテーブルにいるジョージ達五人に言いました。
「パーティーをしてよかったよ」
「そうですよね」
「とても素敵なパーティーですよね」
「開いてよかったですね」
「本当にそうですね」
「そう思いますね」
「全くだよ」
 こう言うのでした。
「僕もね」
「これまでオズの国を巡って」
「色々な人を招待して」
「それでパーティーの準備もして」
「そこまでしてですね」
「そうしてですね」
「本当によかったよ」 
 満面の笑顔での言葉でした。
「今そう思うよ」
「そうなんですね」
「確かに素敵なパーティーになっていますし」
「それで、ですね」
「王子もそう思われますね」
「開いてよかったって」
「そうね」
 実際にというのです。
「そう思っているよ」
「僕達もそう思います」
「とても素敵なパーティー会場ですしね」
「お空の上に浮かんでいて」
「草木やお水やお花に囲まれていて」
「それで歌や踊りやお芝居もありますから」
「色々考えたんだ」
 パーティーのことをというのです。
「僕もね、それでね」
「こうしたパーティーにしよう」
「そう思われていたんですね」
「それで実際に出来て」
「嬉しいんですね」
「王子としても」
「考えていた以上だよ」
 それよりもというのです。
「これはね」
「そうですか」
「予想以上ですか」
「王子としては」
「そこまでなんですか」
「このパーティーは」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そう思うよ」
「ほっほっほ、そうしようと努力すればじゃよ」
 ここでリンキティンク王が言ってきました。
「それ以上のものが得られるのじゃ」
「そうなんですか」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのです。
「王子もじゃ」
「このパーティーはですか」
「王子が思っていたよりもな」
 さらにというのです。
「よいものになったのじゃ」
「そうですか」
「だからな」
 それでというのです。
「このことを素直に喜んでな」
「そうしてですか」
「やっていくことじゃ」
 こう言うのでした。
「これからもな」
「色々なことをですね」
「わしもじゃ」
 王様自身もというのです。
「そうしていくぞ」
「そうですか」
「そしてじゃ」
 王様はさらに言いました。
「楽しい思いをするぞ」
「これからもですね」
「うむ」
 実際にというのです。
「その様にな」
「では僕も」
「これからもじゃな」
「そうしていきます」
 王様に笑顔で約束しました。
「一生懸命に」
「何でもな」
「努力していきます」
「わしも遊びにじゃ」 
 それにというのです。
「歌と踊りにな」
「努力されていますね」
「いつもやっておる、これがな」
「努力ですね」
「一生懸命やっておればな」 
 それがというのです。
「努力じゃ」
「そういうことですね」
「だから王子もじゃ」
「はい、パーティーの為にもそうしましたし」
「そしてこうなっておるからな」
 だからだというのです。
「ここはな」
「そうしていきます」
「是非な、ではな」
「はい、これからですね」
「ちょっと歌うか」
 王子にステージを見てお話を切り出しました。
「そうするか」
「二人で、ですか」
「歌って踊ってな」
 そうしてというのです。
「そしてな」
「そのうえで、ですね」
「楽しもうぞ」
「そうしますか」
「どうじゃ、それで」
「はい、しましょう」
 王子は王様に明るい笑顔で応えました。
「ここは」
「うん、見てみたいな」 
 ボタンも笑顔で言ってきました。
「王子と王様のダンスを」
「そうだよね」
「僕達も見てみたいよ」
「お二人のダンスがどんなものか」
「今からそうしたいわ」
「是非ね」
 ジョージ達五人も言います。
「ですから宜しくお願いします」
「よかったらお願いします」
「歌って踊ってくれるなら」
「見させて下さい」
「そうしてくれたら有り難いです」
「そこまで言うならね」
 王子は五人ににこりと笑って応えました。
「丁度ステージも空いているし」
「ええ、じゃあ今からね」
 王女も王子に言います。
「そうしてね」
「さて、一体どんな踊りかな」
「よかったら拝見させてくれるかな」
「今からね」
 旅に同行した教授とモジャボロ、弟さんも言います。
「それじゃあね」
「そうしてくれるかな」
「よかったらね」
「そこまで言ってくれるなら」
 王子もでした。
 それならとなってです、王様に言いました。
「はじめますか」
「そうしようぞ」
「二人でそうしましょう」
「パーティーはこれからだけれどね」
 王女が笑顔で言ってきました。
「これからね」
「うん、僕達の歌と踊りをね」
「見せてもらうわ」
「そうしてね」
「ではステージに行こうぞ」
 王様も笑顔で言ってでした。
 王子は王様と一緒にステージに上がりそこで歌と踊りを披露しました、皆その歌と踊りに拍手喝采でした。
 そしてステージが終わってから王子は皆に美味しくて甘いワインが入った杯を手にこう言いました。
「ではこれからも楽しんで下さい」
「是非共」
 皆笑顔で応えて乾杯しました、そうしてパーティーを楽しみ続けるのでした。








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