『ブラウンじいさまのお話』





 ブラウンじいさまは梟です、もうかなり長い間生きています。
 それで鳥達の中では長老と言っていい位です、夜になると若い梟やミミズク達にいつも昔のお話をせがまれる程です。 
 今夜もでした、起きてお家から出て来てお家の傍に木の枝に停まっているじいさまのところにです。まだ小さい梟が来ておねだりをしてきました。
「じいさま今晩は」
「うん、今晩は」 
 まずは挨拶からでした。
「また話を聞きに来たのじゃな」
「うん、いいかなら」
「やれやれじゃな」
 じいさまは笑ってこう言いました。
「全く、わしの話の何処が面白いのか」
「だってじいさまの昔のお話は一杯あってね」
 そしてという子供でした。
「どれも凄いから」
「凄いかのう」
「凄いよ」
 実際にそうだと言うのです。
「何かにつけてもね」
「そうかのう、まあそれでもじゃな」
「うん、何かお話を聞かせてよ」
「どんな話でもよいか?」
「うん、何でもいいよ」
 子供はこうじいさまに言うのでした。
「そうしてよ」
「わかった、ではな」
 じいさまも子供の言葉を受けました、そしてじいさまがお話したこととは。
 じいさまがまだ若い頃です、じいさまはその時まだ独身でした。独立したばかりで一羽で森に住んでいました。
 そのじいさまにです、ミミズクのグレーさんが言ってきたのです。
「あんたもそろそろ結婚したらどうだい?」
「結婚かい?」
「うん、独立してすぐだけれどね」
「そうだね、けれど一羽だけだとあれだろ」
「何かとしんどいから」
「結婚したらどうだい?」
 こうじいさま、若い頃のじいさまに言うのでした。
「誰か若い娘とね」
「若い娘とねえ。誰かいるかな」
「隣の森のビリーちゃんはどうだい?」
「ビリーちゃん?」
「ああ、そうした娘がいるんだよ」
「それで僕とその娘が」
「ああ、会ってみるだけでもどうだい?」
 グレーさんはこうじいさまに勧めます。
「一度ね」
「そうだね、じゃあね」
 じいさまもグレーさんの勧めに頷きました、こうしてでした。
 じいさまは隣の森に行ってそのビリーさんと会うことにしました、そうしてです。
 その次の夜でした、じいさまは隣の森に飛んで行きました。そうして夜の森に行ってです。
 ビリーさんを探しました、しかし隣の森に梟は見当たりません。それでじいさまは森の中にいた問おいたミミズクさんに尋ねました。
「あの、梟のビリーさんって人は」
「ああ、ビリーちゃんんじゃな」
「この森にいますよね」
「昨日まではな」
 ミミズクさんはこうじいさまに答えました。
「この森にいたのじゃが」
「今は?」
「引っ越したぞ」
 そうしたというのです。
「東の森にな」
「そうだったんですか」
「昨日じゃ、急に引っ越したわ」
「それは残念ですね、とにかく東の森にですね」
「うむ、行ったわ」
 そうだというのです、それでなのでした。
 じいさまは次の夜にその東の森に行きました、そうして若い女の子の梟つまりビリーさんを探しましたが。
 やっぱりいません、それで下にいたアナグマに尋ねますと。
「ビリーさんねえ」
「この森にいるんですよね」
「いや、昨日一日いただけでね」
 それでもだというのです。
「引っ越したよ」
「そうですか」
「西の森に行ったよ」
「西の森にですか」
「何でも一緒になれるつがいの相手を探しているそうだよ」
「結婚相手をですね」
「そう、それでね」
 もうこの森にいないというのです。
「残念だったね」
「わかりました、じゃあ西の森に行ってみます」
 こうしてでした、この日もでした。
 じいさまはそのビリーさんに会えませんでした、それでまた次の日に。
 西の森に行ってみました、そうして西の森でもでした。
 若い女の子の梟はいません、いても皆結婚しています。それでじいさまはまたかもと思いながら今度は子連れの栗鼠のおばさんに尋ねました。
「あの、ここにビリーさんという梟さんは」
「ああ、あの娘だね」
「いますか?」
「今夜、さっきね」
「さっきですか」
「出て行ったんだよ」
 そうだとです、おばさんはじいさまに言うのでした。
「誰か。若い独り身の梟がいないかね」
「そうだったんだ」
「この森には若い雄の梟がいてもね」 
 それでもだというのです。
「皆結婚してるからね」
「だからですね」
「相手がいないのなら仕方ないって」
「それでなんですか」
「この森から出て行ったよ」
「そうですか、じゃあ」
 こうしてでした、じいさまはまたそのビリーさんに会えませんでした。ですがそれでもなのでした。
 そのビリーさんが独身の梟を探していることはわかりました、つまりそれは。
「僕のことだね」
「ああ、そうなるね」
 グレーさんもじいさまに応えました。今じいさまは自分の森に留まっています、それでグレーさんと同じ木の枝に止まってお話をしているのです。
「確かに」
「そうだよね、じゃあね」
「もうあれこれ動かずにだね」
「待っていようかなとも思うけれど」
「この森にだね」
「ビリーさんの方で来るんじゃないかな」
 こう考えてです。
「そう思うけれど」
「そうだね、どうも君のお話を聞いてるとね」
 どうかとです、グレーさんも言うのでした。
「ビリーちゃんはあちこちの森を飛び回ってるからね」
「そのうちこの森にも来るよね」
「多分ね」
「じゃあこの森で待っていようって思うけれど」
「その考えもあるね。けれどね」
「けれど?」
「若しもだよ」
 こう前置きしてからです、グレーさんはじいさまに言いました。
「ビリーちゃんがこの森に来る前に相手を見付けたら」
「若い雄の梟をだね」
「独身のね、そうなったらね」
「僕も困るね」
「そうだろう?松のもいいけれど」
「動くこともだね」
「それも方法だよ」
 結婚相手を見付けるそれだというのです。
「まあどっちがいいかはね」
「わからないんだね」
「正直なところ僕にもね」
 グレーさんにも、というのです。
「それはね」
「そうなんだ」
「そう、まあそのビリーちゃんがあちこちの森を渡っていることはわかったよ」
「相手を探してね」
「そのことを考えると」
「かなり相手が欲しいみたいだね」
 結婚相手をです。
「僕と一緒だけれど」
「君より積極的だね」
「そうなるね」
 こう言うのでした。
「じゃあ若しもだよ」
「君がビリーちゃんと会えたらね」
「結婚出来るかな」
「そうなれる可能性は高いね」
 グレーさんはじいさまのお顔を見ながら言いました。
「君は性格もいいし。ちょっと短気だけれどね」
「正確に問題はないんだね」
「それに羽根の色もいいし顔立ちも悪くない」
「じゃあビリーさんもいいって言ってくれるかな」
「しかも獲物を捕まえることも上手だし」
 こうしたいい条件が揃っているからというのです。
「ビリーちゃんもいって言ってくれるよ」
「そうなんだね」
「自信を持っていいよ、ビリーちゃんと出会えたら」
 その時はというのです。
「きっと上手くいくよ」
「まずは会うことだね」
「何につけてもね」
 そrからだというのです。
「まずは会わないとね」
「そういうことだね」
 こうしたお話もしたのでした、そしてです。
 じいさまはこの日はとりあえず待ってみることにしました、そのビリーさんが自分達の森に来るのかどうか。すると。
 夜が深くなったその時にでした、じいさまの前にです。
 若い雌の梟が来ました、梟は目がとても大きく可愛らしい感じです。
 その梟がです、じいさまにこう尋ねてきました。
「あの、いいかしら」
「何かな」
「貴方がブラウンさんね」
「うん、そうだよ」
 名前を尋ねられてです、じいさまはその通りと答えました。
「僕がブラウンだよ」
「ふうん、確かに若いわね」
 雌の梟はじいさまをまじまじと見ながら言います。
「それに顔立ちもいいし」
「あの、僕の顔を見ても」
「見ても?駄目ましら」
「駄目じゃないけれど」
「じゃあいいわよね。私ずっとまだ結婚してない若い雄の梟探してたの」
 自分から言うのでした。
「そうしてたの」
「まさか君がビリーさん?」
「あら、私の名前知ってるのね」
「僕も君を探してたんだよ」
「ということは」
「そう、僕も結婚相手を探してたのよ」
「じゃあ丁渡いいわね」
 ビリーさんはじいさまの言葉を聞いて笑顔になりました、そのうえでじいさまに対してこう言ってきました。
「私も相手を探して貴方もだから」
「それじゃあまさか」
「私でいいかしら」
 ビリーさんはじいさまに笑顔で尋ねました。
「相手は」
「まさか君から言ってくるなんてね」
「だって探してたのよ」
 結婚相手を、というのです。
「それなら当然のことでしょ」
「ううん、それじゃあ」
「それで返事は?」
 ビリーさんはまた自分からじいさまに言ってきました。
「いいの?それとも駄目なの?」
「僕も探してたから」
 それ故にとです、じいさまはビリーさんに答えました。
「それじゃあね」
「いいのね」
「うん、いいよ」
 イエスだというのです。
「これから宜しくね」
「楽しく暮らしましょうね」
 ビリーさんは笑顔でじいさまの言葉に頷きました、そうしてなのでした。
 じいさまはビリーさんと結婚しました、そのお話を子供の梟にお話したのです。
 そのお話を聞いてです、子供はこう言いました。
「ううん、じいさまも最初は一羽だったんだ」
「そうじゃよ」
 その通りとです、じいさまは笑顔で答えました。
「意外かのう」
「じいさまはずっとじいさまだと思ってたよ」
「ほっほっほ、それは違うのじゃ」
「じいさまにも若い時があったんだね」
「そうじゃ、それでじゃ」
「独身だった時もあるんだね」
「それどころじゃ」
 じいさまは子供にこのこともお話しました。
「わしも御前さんみたいな頃があったぞ」
「僕みたいなって?」
「子供だった時もあるぞ」
「えっ、そうなんだ」
「卵から産まれたばかりでな」
 その時からお話するのでした。
「飛べなくて巣の中にだけいたな」
「そうした時もあったんだ」
「そうじゃよ、わしもな」
「じいさま凄い飛ぶの上手でお年寄りなのに」
「歳は取っておるがじゃ」
 それでもというのです。
「わしもそんな時があったのじゃ」
「子供の時がなんだ」
「飛ぶこともじゃ」
「飛べなかった時もあったんだね」
「そうじゃ、皆同じじゃよ」
「ううん、信じられないよ」
「御前さんも長生きすればわかるぞ」
 今のじいさまの様にです。
「今以上に飛べる様になって結婚してな」
「歳を取って」
「そうしていけばわかるからのう」
「じいさまみたいになれば」
「そうじゃ、まあ時々頭にくる栗鼠が来ることもあるがじゃ」
 それでもというのです。
「生きていれば色々とわかってくる」
「まずは生きることなんだね」
「そういうことじゃ。御前さんも長生きする様にな」
「うん、わかったよじいさま」
 子供はじいさまの言葉に明るく頷いて答えました。
「僕じいさまみたいに長生きしてね」
「そしてじゃな」
「色々なことを知るよ」
「そうするのじゃ。まずは生きることじゃ」
 全てはそれからだというのです。
「生きていれば何でも出来るからのう」
「そういうことなんだね」
 子供もじいさまの言葉に頷きます、そうしたお話をしてでした。
 子供はじいさまにです、こうも言いました。
「それでビリーさんは今は」
「おいおい、御前さんもいつも会ってるぞ」
「ということは」
「そうじゃ、ばあさんじゃよ」
 その梟だというのです。
「わしといつも一緒におるな」
「ああ、ばあさんがなんだ」
「そうじゃ、ビリーさんじゃよ」
 まさにというのです。
「ずっと一緒にいるのじゃよ」
「今もなんだね」
「そうじゃ、あの時からじゃ」
「そうだったんだ、ビリーさんはばあさんだったんだ」
「そうじゃ、このこともわかったな」
「よくね、何か凄い話だね」
「凄くないぞ、誰でもそうなるからのう」
 やはり長く生きていればです、じいさまはここでも子供に言うのでした。
「御前さんもな」
「やっぱり長生きしていたら」
「そうじゃ、では身体に気をつけて危ないことからは逃れてな」
「長生きしていけばいいんだね」
「全てはそういうことじゃ」
 じいさまは子供にお話するのでした、子供はそのお話を聞いてこれからのことを考えるのでした。自分もじいさまみたいに長生きしようと。


ブラウンじいさまのお話   完


                             2014・5・15



ブラウンじいさまの若い頃のお話か。
美姫 「それを子供たちに聞かせてあげているのね」
しかも、おばあさんとの出会いについて。
美姫 「誰にでも若い時は勿論、子供時代はあるのだけれどね」
子供の頃はあんな感じじゃないかな。
美姫 「ほのぼのとした感じだったわね」
だな。楽しく読ませてもらいました。
美姫 「ありがとうございます」
ではでは。



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