『タビタ奥さんのお話』





 タビタ奥さんはリビー奥さんの従姉妹でトムとミトン、モペットのお母さんです。三匹の子猫のお母さんなのでいつも大忙しですが。
 そのタビタ奥さんにです、ご主人がお仕事に行く時にこんなことを言ったのです。
「紅茶切れたから」
「あら、そうなの」
「うん、今朝僕が飲んだ分でね」
「私も子供達も飲んだし」
「そう、実は僕今日かなり飲んだから」
「喉が渇いてなの?」
「そうなんだ、今朝はどうもね」 
 それで紅茶をかなり飲んでしまってなくなったというのです。
「だから今日お買いものに行ったらね」
「紅茶も買っていてってことね」
「それでいいかな」
「ええ、わかったわ」
 タビタ奥さんはご主人に笑顔で答えました。
「お茶は皆が飲むしね」
「だからね」
「買っておくわ」
「それじゃあ頼むよ」
 ご主人は奥さんに笑顔で言ってからでした、お仕事に出掛けました。そしてお買いものに出たのですが。
 市場の入り口で従姉妹のリビー奥さんに会ってです、こう声をかけられました。
「これからお買いもの?」
「そうなの、今日の晩御飯の食材にね」
 それにというのです。
「紅茶も買わないとね」
「あら、紅茶もなのね」
「そう、ティーパックにしても葉にしても」
「紅茶を買わないといけないのね」
「そうなの」
 実際にというのです。
「だから買いに行くけれど」
「紅茶の葉ね、いつも買っているのにするの?」
「そうするつもりだけれど」
「たまには別の紅茶にしてみたら?」
 リビー奥さんはご自身の従姉妹のタビタ奥さんにこう提案しました。
「いつも飲んでるのとは変えてね」
「気分転換で?」
「そう、そこから美味しい紅茶の発見もあるかもだし」
「そうね、いつもの葉ばかりでもね」
「ワンパターンでしょ」
「紅茶はいつも飲んでるから飽きないけれど」 
 それでもなのです。
「やっぱりね」
「たまには変えてもいいわね」
「そうでしょ、私もお買いものに行くし」
 それでというのです。
「よかったらね」
「一緒に探してくれるの?」
「そうさせてもらっていいかしら」
「ええ、お願い」
 それならと応えたタビタ奥さんでした。
「それじゃあ」
「一緒に探しましょう、私もよさそうな葉があったら買うわ」
「あら、貴女の方もお茶が切れたの?」
「まだあるけれど」
 それでもというのです。
「よさそうな葉は見付けておくといいでしょ」
「それで必要な時に買って飲むのね」
「そうしたいからね」
「じゃあ一緒に葉を探して選びにね」
「行きましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。 
 従姉妹で市場でそれぞれの晩御飯の食材を買ってその最後に待ちに待った紅茶を買う時になりましたが。
 ここで、です。リビー奥さんはお店に並べられているお茶の葉やティーパックを見て言いました。
「どれがいいかね」
「迷うわね」
「ええ、紅茶って一口に言っても」
「最近どんどん種類が増えてるわよね」
「そう、だからね」
「紅茶を選ぶにしても」
「どれが一番いいかしら」
 勿論タビタ奥さんがいつも買っている葉やティーパックもあります、ですがその他の葉やパックを見るとです。
 物凄く多くて、です。こう言ったのでした。
「迷うわ」
「どれが一番いいかってなると」
「困るわね」
「そうね」
「何でも好きなの買っていっていいよ」
 お店のおじさんであるハムスターは二匹のお母さん猫にこう言いました。
「本当にね」
「ううん、そう言われても」
「それでもね」
 お母さん猫達はおじさんハムスターの言葉にかえって戸惑いました。
「こうあるとね」
「何を買ったらいいのか」
「迷うわ」
「どうにもね」
「まあ迷ってそれから決める」
 おじさんは二匹に明るい感じで笑って言うのでした。
「それも面白いんじゃないかな」
「そうかしら」
「迷うのって困るわ」
「何についてもね」
「どうしようどうしていいかしらってなるから」
「面白くないわ」
「困るわ」
 こう返した二匹でした、お母さん猫達にとっては今の状況はどうにもいいものではありません。それで悩んでいますと。
 何時の間にかお日様が落ちて夕方になってしまっていました、ここでリビー奥さんはさらに困ったお顔になって言いました。
「大変よ、もう子供達が帰って来るわ」
「そうね、早く決めないと」
「けれどどれを買っていいかね」
「わからないわね」
「どうもね、こうなったら」
 ここでこう言ったリビー奥さんでした。
「新しい紅茶を決めるのはまた次の機会ってことで」
「今は、なのね」
「もう迷っている時間はないから」
「早く決めて」
「そう、買ってね」
 紅茶をというのです。
「お家に帰りましょう」
「そうね、もうあれこれ考えていたら」
 タビタ奥さんは夕日を見ました、もう子供達が三人共お家に帰ってきそうな時間です。
「子供達も帰ってくるし晩御飯の用意もあるし」
「そうでしょ、私もよ」 
 リビー奥さんにしてもというのです。
「また機会があればね」
「次に買う紅茶を決める」
「そうするから」
「今はお家に帰るのね」
「そうするわ、時間は待ってはくれないわ」
 こう言ってでした、タビタ奥さんは紅茶の葉やパックを慌てて買ってリビー奥さんと今日会ったところでお別れをしてでした。 
 慌ててお家に帰りました、すると幸いまだ子供達は帰っていなくて晩御飯の用意をしてでした。
 そうしてです、晩御飯の時にお茶を出して今日の市場のことをお話しましたが。
 そのお話を聞いてです、ご主人はこう言いました。
「まあ別にね」
「いいっていうの?」
「お茶はね」
 紅茶はというのです。
「今のままでいいさ」
「ええ、結局ね」
 タビタ奥さんが勝った紅茶はといいますと。
「いつものだったけれど」
「時間がなくなって」
「慌てていつものを買ったの」
「残念に思っているから」
「やっぱりね、色々探したし」
「それでも時間がなくなって」
「いつもの紅茶にしたけれど」
 皆でそのいつもの紅茶を飲みつつお話をしています、トム達はお母さんとお父さんのお話をよそにお魚をとても美味しそうに食べています。
「それでもいいっていうのね」
「僕はね。美味しい紅茶が飲めるなら」
「いつものでもいいのね」
「そうだよ、僕は別にいいから」
「ううん、折角探したのに」
「気にしないでいいよ」
「けれどまた選ぶわ」
 ここでまた言ったお母さんでした。
「時間があればね」
「それで新しい紅茶を飲んでみるんだ」
「そうするわ、折角リビーちゃんと探したし」
 従姉妹のその猫とです。
「またね」
「それでいい紅茶に出会えたら」
「皆で飲みましょう」
 こう言うのでした、今はいつもの紅茶を飲みながら。


タビタ奥さんのお話   完


                2017・7・11



迷う気持ちは分かる。
美姫 「確かにアンタも結構、考える方だもんね」
まあな。新しい物を選ぶのは難しいよ。
美姫 「今回はどうやら見送ったようね」
いつもの紅茶で。
美姫 「今回も楽しませてもらいました」
ありがとうございます。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る