『栗鼠のナトキンのお話U』





 謎々好きの栗鼠のナトキンは今も謎々を考えています。
 それで森の中の木の下に座って謎々の本も読んでいますがそこに子猫のトムが来て彼に尋ねてきました。
「何の本を読んでるの?」
「謎々の本だよ」
 ナトキンはトムに答えました。
「僕が読む本といえばそうだね」
「そういえばナトキンさんっていつも謎々の本読んで謎々を言ってるね」
「何しろ謎々が大好きだからね」
 それでというのです。
「今も読んでいるよ」
「成程ね」
「うん、こうして謎々の本を読んで」
 そしてというのです。
「勉強をしているんだ」
「そうなんだ、そういえば僕も謎々を知ってるよ」
「どんな謎々かな」
「うん、蟻と蜂と蜘蛛で仲間外れは何かな」
「その三つの中でなんだ」
「何かな。お父さんに教えてもらった謎々だよ」
 トムのお父さんにというのです。
「この中で仲間外れはね」
「どれか」
「ナトキンさんはわかるかな」
「それは蜂だよ」
 ナトキンはすぐに答えました。
「蜂だけ飛べるじゃないか」
「ああ、それじゃあ一つだけらしいよ」
「一つだけ?」
「うん、蜘蛛も仲間外れなんだ」
 トムはナトキンに言いました。
「だって蜘蛛は虫じゃないよ」
「ああ、そういえばそうだ」
 ナトキンも言われて気付きました。
「蜘蛛は虫じゃない」
「そう、だから蜘蛛も仲間外れだよ」
 蜘蛛もそうなるというのです。
「だからね」
「それはそうだね」
「そして蟻もだよ」
 こちらもというのです。
「仲間外れだよ」
「蟻はどうしてかな」
「だって蟻は地面に巣を作るね」
「それでかい」
「蜘蛛でもそうした蜘蛛がいるけれど」
「ジグモだね」
「それでもね」
 普通の蜘蛛を見てというのです、あの網を張った巣です。
「大抵そうだから」
「そういうことだね」
「だからこの謎々はどれもなんだ」
「それぞれ仲間外れだね」
「そうなるんだ」
 こうナトキンにお話します。
「この謎々はね」
「成程、面白いね」
 ナトキンもお話を聞いて感心したお顔になりました。
「そんな謎々もあるんだ」
「うん、答えは一つじゃないんだね」
「謎々によっては」
「それじゃあ謎々をあらためて勉強するよ」
 ナトキンはトムの言葉を受けて謎々をさらに勉強する様になりました、そして暫くじっくりと勉強してです。
 その答えが一つではない謎々を自分に紹介してくれたトムにお話しました。
「鷲と鮫と豹の同じ点は何かな」
「鷲と鮫と豹?」
「この三つの生きもののね」
「そうだね」
 そう聞いてです、トムは考えてからナトキンに答えました。
「どの生きものも肉食だね」
「そうだね」
「うん、鷲も鮫も豹もね」
「一つ正解だよ」
「これで一つだね」
「正解はあと二つだよ」
 それだけあるというのです。
「この謎々にはね」
「後は怖いね」 
 トムは今度はこう答えました。
「どの生きものも」
「うん、僕達にとっては会ったら全力で逃げる位だね」
「そうだよね」
「そう、怖いよ」
 ナトキンはその通りだと答えました。
「これで二つ目の正解だよ」
「じゃああと一つだね」
「最後の一つは何かな」
 ナトキンはトムに尋ねました。
「それじゃあ」
「ううん、そういえば僕この三つの生きもの見たことないからね」
 トムは右手の人差し指を自分の顎の先に充てて考えるお顔になって言いました。
「後はね、わからないよ」
「それで答えの半分だよ」
「半分答えてるんだ」
「そう、トムが見たことないということは」
「ああ、この辺りにはいないからだね」
 トムも言われて気付きました。
「そうだね」
「そう、この森と近所にはいないよ」
 ナトキンはまさにと返しました。
「どの生きものもね」
「鷲はこの辺りにはいないしね」
「鮫は海にいるね」
「豹はこの国自体にいないし」
「どの生きものも僕達は会わないよ」
「それが最後の答えだね」
「そうだよ、しかしこうした謎々も面白いね」
 あらためてです、ナトキンはトムに言いました。
「これからも考えて出していきたいね」
「そうだね、答えは一つじゃない」
「謎々だけじゃなくて世の中もそうかも知れないしね」 
 こうしたお話をしながらでした、ナトキンとトムは謎々のお話をさらにしていきました、そうして二匹で楽しみました。


栗鼠のナトキンのお話U   完


                 2020・12・2








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