死ぬことが望みと、彼は言った。

 それはただ淡々としていて、そこには誤魔化しも強がりもない、ただ事実だけを語る口調だった。

 けれど、それに納得できる面々ばかりではない。

 

「なにそれ? そんなこと言うなら勝手にやればいいじゃない」

 

 忍が憤慨を露わに問い詰める。角度的に見えないけど、気配からして瞳の色、赤くなってないか?

 しかし、その忍を前にしても神雷さんの気配に変化――緊張や警戒はない。むしろ――

 

「それができるなら、苦労はない」

 

 やるならさっさとやれと言わんばかりに、首を晒していたりする。

 

「? ……どういう意味?」

「そのままの意味だが」

 

 えーっと、つまり今の言葉を逆算すると――

 

「あの、あなたが神雷さん、でいいんですよね?」

 

 今まで黙って成り行きを見ていたはやてが質問した。

 

「そうだが……」

「あの、ちょっとお話聞いてもいいですか? 知り合いにあなたのこと調べるよう頼まれてるんで……」

 

 そう言われて、神雷さんは怪訝そうな雰囲気になった。そのまましばしはやての顔を(眼帯の目が)じっと見ていたが、やがてチッと舌打ちを一つして、

 

「まぁ、いい。聞きたいことというのもだいたい分かる」

 

 なにに言い訳をするのかそんなことを言って、

 

 

「おそらく、俺たちが受けた不老不死の呪いのことだろう?」

 

 

 

 

 

 

      第6話  「不死」

 

 

 

 

 

 

「は? なに言ってるんだ、キミは」

 

 志乃の口から語られた真実――不老不死という言葉を、思いっきり呆れた口調で否定する。他の皆も、声にこそ出さないものの似たような心境だと表情で分かる。

 けれど、否定された当の本人――志乃は、

 

「そうだよねぇ。だから、言わなかったんだよ……」

 

 はぁ……、と疲れたようなため息も加えて答えた。そして一度、聞いている全員の反応を確かめるように見回して、

 

「まぁ、信じてなんて言わないよ? 他人事だったらあたしだって信じないだろうから……」そう言って力なく笑い「でも、君に否定されるのはなんだか釈然としないなぁ……」

 

 それはどういう……ああ、さっき羽を見せたからか。

 それにここ、さざなみ寮はそういう、ちょっと違うものが集まりやすい場所だ。

 HGS。退魔士。霊剣。妖狐。他にもいろいろ。

 志乃もまた、そんな場所に辿り着いたうちの一人だ。不老不死くらい不思議じゃない……のか?

 

「……じゃあ、参考までに聞くけど、何年生きてるって言うつもりだ?」

「だいたい……千年くらいかな」

「は!?」

 

 これには本気で驚いた。

 志乃は見た目、二十代前半にしか見えない。

 なのに、千年?

 

「あの、ひょっとしてこの子も……ですか?」

 

 アリサが隣に座っているあすかを指して訊く。

 

「そのはずだよ。あたしと同じ、『呪い憑き』なんだから」

 

 ありったけの戸惑いと不審を乗せた視線があすかに集まる。

 この、どう見てもアリサやなのはより年下の子供まで千年生きている? 冗談にしては笑えない。

 

「……そこは驚くところじゃないと思うよ。不老不死なんだから外見の年齢なんてまったくあてにならないんだし」

 

 や、言われるまでもなくそうなんだけどさ……

 

「それに、御架月だってあたしが作ったのは四百年くらい前なんだし……」

 

 その言葉で、何人かの視線が御架月へと集まる。

 霊剣『御架月』。

 以前このさざなみ寮にいた霊剣『十六夜』と姉弟になる剣に宿った幽霊。

 彼らについて、薫や本人たちから多少は聞いている。でも、その話の中に志乃の名前はなかったはずだ。

 耕介もそれを疑問に思ったのか、

 

「本当なのか? 御架月」

「ええ、そうみたいです。僕も志乃様に聞くまでは知らなかったんですけど……」

 

 耕介の問いに御架月は答えた。

 なんというか……自信のなさそうな答えだ。

 

「御架月はああ言ってるけど……」

「当然だよ。あたしが作ったのは霊剣の素体で、それに魂を封印させたのは灯真だった。それに、あたしはその場に立ち会わなかったし」

 

 だから、自分と御架月に面識はなかった。

 言外に志乃はそう言った。

 それは確かに理屈は通る。誰だって自分が生まれる前や生まれたときのことは覚えていない。

 

 ボクだって昔は……

 

 ちょっといやな記憶に入りかけた思考を、頭を振って元に戻す。今考えるのはそんなことじゃない。

 それよりも今確かめるべきなのは、

 

「……ところで、その話は証拠とかあるのか?」

「なんの証拠?」

 

 満面の笑みで返される。今になってなに言い出すんだコイツ。

 が、確かにここまでの会話を思い返すと、そう言われる案件は二つある。

 まずは話の前提の方から。

 

「……キミが不老不死だっていうことの証拠」

「それは難しいね。『死なないこと』を証明するには死んで見せないといけないから」

 

 それもそうか。

 だけど――

 

「なにか問題があるのか?」

 

 普通に考えれば、理由などいくらでも思いつける。倫理、法、常識。一番分かりやすいところで子供の前だからとか。

 でも、そのどれを取るのかちょっと興味が出たので訊いてみた。そして返ってきた答えは、

 

「あるんだよね、これがもう」呆れたとしか言いようのない口調になって「どうも、体の構造は普通の人とそう変わらないようだし、痛みも普通に感じる。それに、最後に『顕現』もある。だから、見せてくれとか言われても、気軽にできることじゃないんだよ」くつくつと笑うようにして言う、その顔から急に笑みを消し「それでもやるようなら、そこにいる全員を殺すことになるだろうから、気をつけてね」

 

 ……いきなり物騒なことを言うな。なにを、どう気をつけろという気だ?

 まぁいい、そこまで言うなら、

 

「……とりあえず、その話……不老不死ということを信じるとしよう」

 

 とりあえず、の部分を強調しておく。本当に信じるにはまだ少し情報が足りない。

 そしてそれはたぶん志乃も分かってる。その証拠のように苦笑してるし。

 

「それで、なんでそれが、キミとその子が殺しあうことに繋がるんだ?」

 

 

 

      *   *   *

 

「まぁ、それはいいわ。それでなんで、神無にあんな態度取ることになるわけ?」

 

 不老不死、などという非常識を、忍はあっさりと受け入れてしまった。

 まぁ、彼女は夜の一族だ。ひょっとしたらそういう方面にも理解があるのかもしれない。実際、ノエルは自動人形だから似たようなものだろうし。

 それよりも忍は、さっきの神雷さんの神無さんへの対応の方が気になる――というか気に入らないようだ。いつの間にそこまで仲良くなってたんだ? 

 だけど、神雷さんの返答は、

 

「今の言葉で気づかないか?」

 

 そう言われて、忍は怪訝そうに首を傾げて、こっちを見る。いや、そんな風にされても、俺にも分からないんだが……。

 まぁ、気づけという方が無理か、と誰に聞かせるでもなく神雷さんは呟く。

 そこで、シグナムさんがなにかに思い至ったらしく、口を開いた。

 

「先程、呪いを受けた、と言ったな?」

「ああ。言った」

「ならば、『誰が』その呪いをかけた?」

 

 その言葉で、ハッとそのことに気づいた。見れば、他の皆も同じような反応をしている。

 そうだ。さっきの言い方だと、確かにそういうことになる。神雷さんでも神無さんでもない、他の誰かに不老不死にされた、と。

 そして、その反応が面白いのか、神雷さんは愉快そうに、

 

「勘がいいな。……いや、それともこっちに造詣があるのか?」

「それは……」

 

 なにかを言いかけて、シグナムさんが横目ではやての足を見た。それがなにを意味するのか分からないが、そのときの曇った表情から、それがただ事ではないと理解できる。

 ほんの数秒の沈黙。

 結局、そこは神雷さんの方が折れた。

 

「……まぁいい。それで、さっきの答えだが、それは俺も知らない」

「なに? ならばなぜ、そんな呪いをかけられる!?」

「この呪いは特定の個人を狙ったものじゃないからな。つまるところ、条件を満たしていれば誰でもよかったんだろう」

「条件?」

 

 ああ、と神雷さんは頷いて、

 

「この呪いは、もともと不老不死が目的ではないからな」

 

 は? さっき不老不死の呪いとか言ってませんでしたか?

 

「不老不死はあくまで副次的なもので、本当の目的は、異能の力を持つ者を霊脈に繋げること。その結果、霊脈から流れてくる力で『呪い憑き』は不老不死になった」

 

 たぶん、丁寧に説明してくれているのだろう、とは思う。

 けど、その内容は理解に苦しむ。美由希と忍、シグナムさんはなんとか理解しているという感じで聞いているが。

 

「そして最後に、死ぬことで『呪い憑き』にされた者の異能の力は、霊脈の奥にいる術者の下へと収集される。その先に、その術者の目的があるんだろう」

「はぁ……」

 

 誰ともなしに相槌を打つ。

 というか、とんでもない矛盾が今の言葉になかったか?

 

「あの、不老不死なのに死ぬんですか?」

「ああ。一つだけ、『呪い憑き』を殺す方法があるからな。俺もその方法で二人殺している」

「二人も?」

 

 いったい、全部で何人いるんだろう?

 

「……なぁ」

 

 そこで、今まで黙って聞いていたヴィータが、不意に口を挟んだ。

 

「その『呪い憑き』ってのにさ、あすかって奴はいんのか?」

「あすか?」一瞬、怪訝そうな様子を見せて「……二つ名は分かるか?」

「え?」少し戸惑って「……ひょっとして、黒翼……とか?」

 

 それで分かったのか、神雷さんは納得したようにああと頷いて、

 

「いる。確か、『丙』がそんな二つ名だったはずだ」

「ヒノエ?」

 

 聞き慣れない言葉が出てきた。

 

「知らないか?」

 

 全員が首を縦に振った。

 その反応を見て、神雷さんはため息を吐き、

 

「この呪いは術を安定させるために十干の概念を使っている。丙は、その陽の火に当たる字だ」

 

 

 

      *   *   *

 

「えっ……と、ジッカンってなんですか?」

 

 もういくつめになるか分からない知らない言葉で、頭の容量はパンク寸前。

 それでもそれが神雷さんの秘密に繋がるならと、戸惑いをなんとか抑えて尋ねる。

 

「昔あった、なんでもかんでも陰陽と五行に当てはめるっていう考え方だよ。陰と陽の二つと、火水木金土の五つの組み合わせで十の文字になるね」

 

 へぇ……。そんな考え方があったんだ。

 多くの次元世界があって、それぞれに違う文化を持っているとは知っているけど、それでもやっぱり自分の知らない文化に触れるのは不思議な感覚だ。

 見れば、なのはたちも初めて知ったように、感心したように頷いている。

 けれどそこで、リスティさんがなにかに気づいたらしく、

 

「ちょっと待て? つまり、その不老不死の呪いを受けてる人は……十人いるってことか?」

「うん、そう。あたしが知っているので……」指折り数えて「五人、かな。あたしが『辛(かのと)』。その子が『丙』。あとは、『己(つちのと)』に《神雷》、『丁(ひのと)』に《獅子姫》、『癸(みずのと)』に《幻影》。……あと他に五人いて十人になるね」

 

 一度手を開いて指をまた一つずつ折りながら、名前を挙げていく。はっきり言って、さっぱり分からない。

 でも――

 

「今、《神雷》って言った?」

 

 わたしより早くアリサが反応した。

 

「? 言ったけど……なにかおかしい?」

「え?」

 

 あっさりと返されて、逆にアリサの方が戸惑う。

 でも、たぶん今のは志乃さんの方が正しい。あの人が『そう』である可能性は、最初からあった。それを確かめたくて、この話を聞かせてもらってるんだから。

 

 思い出すのは初めてあの人を見た夜。

 なにかの光で胸に穴を開けられて、それでも生きていたあの姿。

 他にも、いくつもの違和感がようやく晴れた。……それでも、全部の謎が消えたわけではないけど。

 

 とりあえず、ちょっと整理しよう。

 数日前の神無さんの話と、今の志乃さんの話で得た情報。それらをたった四回だけしか会っていない神雷さんの言動と照らし合わせてみようとして――

 横からクイクイと袖を引っ張られた。振り向くと、

 

「フェイトちゃん」すずかが困惑の表情で「ひょっとして、神無さんもそうなのかな?」

「え?」

 

 そう言われて思い出すのは、数日前に翠屋で会った神雷さんのことを知っていた女性。

 あのときは――というかあのときも、神雷さんのことの方を優先しててそんなことは考えなかった。

 でも、あの人も神雷さんや志乃さんたちと同じように不老不死というのは、ありえると思う。むしろ、そうでないといろいろと説明できない気もするし。

 

「あれ?」それを耳ざとく志乃さんが聞きつけて「もしかして、他の『呪い憑き』に心当たりがあるの?」

「ふぇ?」

 

 いきなり会話に参加させられて驚いたのか戸惑ったのか、すずかは変な声を出した。

 

「あ、あの……それは、えっと……」

「そんなに慌てなくていいよ。べつにどうこうしようってわけじゃないんだから」 

「でもさっき……」

 

 うん、あれを見てその言葉をそのまま信じるのはどうかと思う。

 それを分かってくれたのか志乃さんは、

 

「ああ、大丈夫。その心当たりの相手やその子は、もう襲わないように気をつけるから」

「気をつけるって……キミ」

 

 呆れたようにリスティさんが呟く。

 それで志乃さんはリスティさんを見て、それからあすかへと視線を向けて、

 

「あたしとその子は初対面だけど、でも会ったらすぐに『ああ、同じだ』って分かる。すると、呪いがあたしの敵意や殺意に干渉して……まぁ、さっきみたいなことになる」

 

 さっきみたいな、というのは、いきなりあすかに襲いかかったことだろう。今思い返せば、確かにあのときの二人はどこかおかしかった――というか、キレてた、とでもいうのかな、あれは。勢いに呑まれてバインドで止める余裕もなかったし。

 

「だけど、ある程度は理性で抑えることができるはずなんだよ? 実際、五百年前に《獅子姫》と一緒にいた頃はできてたことだし」

 

 後半は目を閉じて、昔を懐かしむように志乃さんは言った。

 でも、今の言葉からすると――

 同じことを考えたのか、耕介さんが口を開いた。

 

「その《獅子姫》っていう人は……その、どうなった?」

「さっき名前を言った五人の内、二人はもう死んでるよ。《獅子姫》は《神雷》に殺された。《幻影》はあたしが殺した」すうっと閉じていた右目を開き「だから、あたしが殺したいのは《神雷》だけ。他のコは我慢する」

 

 その目を見た途端、ゾクリ、と言いようのない悪寒が背中を走る。

 そしてなんでかわたしを見て、

 

「言っておくけど、これはあたしとあの男の問題。君があの男とどんな関係か知らないけど、邪魔はしないでよ?」

「あの……なんでわたしに?」

「……? なんとなく、かな? なんだか君、あの男に深入りしようとしているみたいだから」

「うう……」

 

 反論できない。確かにその通りだ。さらにその理由が自分でも分からないから、どうしていいかも分からないというのがこの問題の一番厄介なところだ。

 なんと言ってこの場を誤魔化そう。そう思い頭をフル回転させていると、

 

「あすかちゃん、どうかしましたか?」

 

 フィリス先生が戸惑ったような声を上げた。

 見れば、あすかは思いっきり不満そうな顔で志乃さんを見ていた。

 

「なにかな?」

「おまえもわたしと同じ、化け物なのだろう? なのになんで、そんなに気楽でいられる!?」

 

 噛み付くような剣幕で、あすかは叫ぶ。……あれ? この子って、こんな子だったっけ?

 けど志乃さんは、その剣幕もどこ吹く風といったように、

 

「ん〜〜……。君よりはましな人生だったからじゃないかな?」

 

 あっさりと言われ、あすかは唖然とした顔で志乃さんを見詰める。

 

「とは言っても、あたしもろくな生き方はしていないよ。人を殺したこともあるし、呪いのせいで一箇所に留まるなんて無理な話だった。ま、それでもそれなりにやってきたけど……」そこであすかをしっかりと見据えて、皮肉げな笑みを浮かべて「君の千年は、どれだけ悲惨なものだったのかな?」

 

 

 

      *   *   *

 

 一通り、話し終えて神雷さんは息を吐いた。

 皆、常識を超えたというか外れたというか、そんな話を一気にされたせいでか状況の整理に手一杯みたいな顔をしてる。

 

「それで、神無を遠ざけておく理由だったな」

 

 そういえばそういう話やったね。

 神雷さんは忍さんを見て語る。

 

「この呪いは最後の一人になるまで、理由がなくとも殺しあうよう強迫観念も仕込んである。けどそれは、俺のように心の欠けた鬼や、あいつのように心を持たない人形には問題ないはずだった」

 

 心を持たない人形……? はずだった……?

 

「だが、あいつは十年掛けて心を手に入れてしまった。そうなればいずれ殺意を覚え、呪いによって俺と殺しあう日が来る。だから、そうなる前に捨てた」

「さっき死ぬのが望みとか言ってなかった?」

「……あいつに殺される気はないとも言ったはずだが?」

 

 ああ、確かに言うてましたね。

 

「まぁ、あいつに限らず、誰であろうと今のままなら俺を殺すことはできないんだが……」

 

 どういう意味やろか。自嘲めいた笑みで呟いた言葉がやけに気になる。

 だけど、もう神雷さんは話す気はないらしく、

 

「さて」パンッと手を打ち「この話はここまでだが――」

 

 そこで神雷さんは一度言葉を区切り、道場にいる人たちを見渡して

 

「なんで俺が、こんなに話したと思う?」

 

 え……?

 言われてみれば……という感じで、戸惑いながら全員が互いの顔を見合わせる。少なくとも、単純に信頼されている、ということはないと思う。フェイトちゃんが訊いても、知らない方がいいって答えなかったって聞いてるし。

 そこへ、神雷さんは言う。

 

「お前らにも、この呪いを解くための駒になってもらうつもりだからだ」

「駒って……」

 

 こうもはっきりと言われると逆に清々しい。下手な信用で背中を刺される心配がないからね。

 でも、忍さんはこれだけじゃ納得できないらしく、

 

「なんでわたしたちを?」

「はっきりとは分からないが、どうも普通の人間とは違う気配がここにいるうちの半分。ならば、呪いを解く可能性は、砂粒一つ分程度でも上げておくに越したことはない」

 

 たいして期待する様子もなく、そんなことを言ってくれた。

 けど、その言葉に少しだけ、思うところがある。

 

――普通の人間とは違う

 

 その言葉が指す相手――シグナムとヴィータ、そしてこの場にいないシャマルとザフィーラの四人を想う。

 ……この子たちも、この人と同じなんやろか。

 ロストロギア『夜天の魔導書』の『守護騎士プログラム』として生み出され、永い時を書と共に旅して、自分の下に辿り着いた騎士たち。

 今はもう夜天の魔導書――リインフォースから独立してそれぞれがそれぞれの個体としてこの世に残っているということだけど、将来はどうなのだろう。

 

 成長し、子を産み、育て、老いて、死んでいく。

 そんな当たり前のはずの生き方が与えられているのか?

 まだ魔法に対する造詣が浅い自分でも、その答えは分かる。リインフォースから残された知識で分かってしまう。

 

 無理、と。

 

 今、この人の話を聞くまで考えなかった、考えようともしなかった事実。

 そのせいでいつか――

 

 ああ。だから、この人は死にたがってるんかなぁ。

 他の人たちとは違う時間を生きて、誰かと一緒に生きることができなくて――

 ずっと一人で生きることに疲れてしまって。

 

 だから、魔が差した、とでもいうのだろう、この状況は。

 死ぬなんてことは絶対反対やけど、その呪いを解いて普通の人に戻れるんなら、手伝ってあげてもいいかな。

 そんなことを考えてしまったんだから。






 さて、今回は真相暴露ということで 主人公の神雷をゲストに招待しています

「ああ」

 さて、今回は長々と引き伸ばしていた設定――この作品の根幹の説明みたいなものだけど、どうよ?

「いや、どうと聞かれても……」

 だって、こういうオリジナル設定ってかなり度合いが難しいんだよ? 半端にすると後で綻びや矛盾、凝りすぎると読み手に優しくない設定魔。自分、後者なんじゃないかって疑っていたりするし

「そうだな。序章ですでに糸口は出ていたが、肝心なところはとことんはぐらかしているようだしな」

 ……『呪い憑き』の十人全員、二つ名と異能の力を考えてたりするし……。生い立ちは今出てる四人で手一杯だけど。さらに別路線のオリキャラの設定が八、九人分

「…………十分設定魔だろう、それは」

 (全力で無視して)ふぅ……。じゃあちょっと早いけどそろそろ次回予告。次回ではとうとう(?)神雷が剣を手に取り暴れます。そして恭也に一つの問いを投げかけて――。

「そうだな。そのつもりで不破恭也のところに来たのだし」

 そんなわけで、また遅くなるでしょうけど待っていてください。





明かされたのは不死の秘密。
美姫 「いやー、そんな事だったなんてね」
しかし、これからどうなっていくんだろうか。
美姫 「確かに次回以降の展開が気になるわね」
果たして、呪いは解けるのか。
美姫 「次回も待ってますね〜」



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