1月28日 (土) AM 0:01

 

――さあ、殺し合いを始めようか

 

 その視線のはるか彼方に、あたしの鷹の目ははっきりとそう捉えた。

 ほんの数分前に突然、認識の靄が晴れるように現れた臨海公園。そこで傍に二人の女の子をはべらせてあの男は立っている。その彼我の距離は、目算でざっと四、五キロといったところか。

 

 通常であれば、この距離を越えて弓で狙撃するなど不可能な話だ。(そもそも目視することが不可能だけど)

 だけど、今のあたしにその常識は通用しない。『万里』を使えば、矢を飛ばすだけなら条件付きで地球の裏まででも飛ばすことはできる。この呪弓は使用者の命を代償に、どんな正確な射的さえ成し遂げるのだから。ただ、その問題として標的を正確に狙えるかどうか、というのがあるが。

 とはいえ、そんな問題あたしの鷹の目には無意味なものだ。

 左手に構えた『万里』はそのままに、右手に再び黒い矢を(今度は二本)創り出し、はるか彼方の神雷を見据え――

 

 ゾクリ、と肌が粟立った。

 

 あの男はまだあたしの居場所を捕捉していない。それはわずかとはいえ視線が探るように動いていることから分かる。

 だがこの気迫はどうだろう。これほどの距離を隔ててなお息苦しささえ覚えるほどの、濃密な殺気。

 

「これが……」

 

 五百年もの昔、この国を震撼させた鬼の本当の姿。その一端。

 ゴクリ、と唾を飲んでから、その気迫に呑まれないように深呼吸。そして――

 

「うん。始めよう」

 

 聞こえるはずがないのは分かっている。でもそれはお互い様。

 それだけ答え、『万里』に第二の矢をつがえた。

 

 

 

 

 

 

      第12話  「死合」

 

 

 

 

 

 

 彼方から確かに自分へと向けられている殺気を感じる。それはおそらく……いや、間違いなく無刃のものだが……

 

 遠い。

 方向からするとおそらく最初の夜と同じ場所からだろう。が、ここからではそこは芥子粒ほども見えない。それを正確に狙撃するその目の良さと腕の良さに改めて驚嘆する。……それを今夜、これから己の手で散らすということになにを感じるわけでもないのだが。

 なんにせよ、やるべきことは変わらない。

 抑えようのない高揚――久方ぶりに全力で殺し合いをできる昂りに身を熱くし、それでも頭の方は冷静に、最後の状況確認を行う。

 

 剣士と射手。

 互いに一つの武具の窮みに至り、さらにその奥へと歩み続ける者。

 だがそんなことは関係ない。この殺し合いに臨むのが達人であれ素人であれ、結末は二つに一つ。

 自分はこれから降り注ぐ矢をかいくぐり、刀の間合いまで駆けられるか。

 無刃はそれまでにいかなる手段を用いてでもこの身を滅ぼせるか。

 それだけの勝負。

 それを少しややこしくする要素として、互いが不老不死の呪いを持つということがあるが、『呪い憑き』を殺す術は互いに理解している。

 

 ……まぁ、あの女が俺を殺せるなら、それでもいいが……

 

 ため息を吐いた。

 それは無理なことだと理解している。そもそも自分は『殺す』方法では死ねない。首が落ちようと、心臓が潰れようと、全身が燃えて灰になろうと、そこに『死』という結末は存在しない。

 なのに、『殺し合い』などという言葉を使い、茶番を演じる。

 そんな己の道化ぶりに自嘲の笑みを浮かべ、すぐに消した。

 己の体がどうあれ、これからの過程と結末がどうあれ、やるべきことに変わりはないのだから。

 

 眼前に垂直に模擬刀を構え、目を閉じ、深く息を吸って、吐く。

 目を閉じようと、無防備、ということはない。両の眼球が復元し、視力を取り戻した今になっても心眼の結界は機能している。

 その心眼の結界の延長に、盲目のうちに歩き回って知ったこの街の地理を脳内で構成する。

 その地理では以前無刃が狙撃してきた場所はここから一里はある。しかし直線で走れば数分で踏破できる。

 だが、そうもいかない。相手が常に狙撃を企むならまず狙わせないことから手を打つべきであり、となれば回り道は当然。すると無刃の元へ至るにはその三倍は見るべきだろう。

 際どい、か……

 飛来する矢を見切る自信も斬り落とす自信もある。ただ問題は――

 ヒュンッ、と空気を裂いて構えていた模擬刀を振り下ろす。切っ先を地面に対し寸止めし、閉じていた目をゆっくりと開き――

 バチン、と弾ける音を皮切りに手にする模擬刀が、ほのかに黒と銀の光を纏う。

 その二色の光が電気へと姿を変え、刀身を這うと同時に、切っ先を向けられていた地面が弾けた。

 

 雷刃『千鳥』。

 

 手にした模擬刀が黒と銀の雷を帯び、千もの鳥のさえずりの如く響く音を発する。今やこの刃に斬れぬ物はなく、金剛石さえも豆腐のように斬り裂ける。

 

 

 刮目して見るがいい。

 この黒と銀の雷は、『御巫』の力と冥界の呪詛――生と死の相克により生まれるもの。

 本来ありえない――まさに神の領域より生まれる雷。そしてそれを持つ者。

 

 ゆえに、《神雷》。

 

 それが二つ名の由来。

 かつて鬼神と謳われ、万の軍勢すらその身一つで滅ぼした、最強の魔物を示す名。

 

 

 手にする雷剣を低く構える。

 全身が弓の弦を引き絞るように、力を溜めていく。肉食獣のように獰猛にして凶悪な意志を宿した体が、今か今かと解放のときを待つ、そこに合いの手が入る。

 

「神雷様」

 

 なにかと思い振り返ってみれば、神無が発した言葉はただ一言。

 

「ご武運を」

 

 告げるその目には信頼が満ちている。おそらく神無にとっては、この殺し合いの結果などすでに決まっており、それを疑うこともないのだろう。

 だから――

 

「ああ」

 

 絶対の自信を以ってそれだけ答える。無用な言葉は要らない。相手が絶対の信頼で接してくるなら、相応の言葉を返すくらいはできる。

 そして再び正面へと視線を戻す途中、フェイト・テスタロッサと一瞬だけ目が合うが、あえて無視する。この娘は本来、この場には不相応の存在なのだから。そしてなにより、本当にヒカリに似ていて落ち着かない。

 息を吸い、吐きながら肩を中心に余分な力を抜く。

 

「……いくぞ」

 

 小さく呟き、一歩目と同時に、飛来した二本の矢を斬り捨てて、無刃の元へと駆け出した。

 

 

 

      *   *   *

 

 それはまさに疾風のように――いや、電気を纏ってるから雷光の方がいいかな。

 なんにせよ、声を掛ける余裕もなく、あっという間に神雷さんの姿は闇の向こうへと消えていった。

 ……最後に、一瞬だけ目が合ったのになにも言ってくれなかった。

 その事実が少し苦しい。

 理由は分からない。そもそも、これから戦いなんだから話すことも理由もないと言われてしまえば納得するしかない。

 ともかく、今は神雷さんの後を追うために飛ぼうとして、

 

「どこへ行く?」

 

 呼び止められた。

 振り返ると、神無さんが睨むようにわたしを見ていた。

 

「まさか、神雷様を追うつもりではないだろうな」

 

 そう言う神無さんは、さっきまで神雷さんと話していたときより表情も声も険しい。

 

「そのつもりです……けど……」

 

 神無さんの雰囲気に気圧されて、答える言葉は小さくなっていく。それでも、追うことを考え直すというわけではないけど。

 それにさっき神雷さんには言っていなかったけど、今夜はあの人の戦いを見るためになのはやヴォルケンリッター、さらにはアースラまで動いている。なのにわたしだけ見れないのは、なんとなく嫌だ。

 でも神無さんは射抜くような目で、

 

「あの方は、自らの手で因縁を断つために戦うことを選んだ。何人たりともその戦いを妨げることは許されない」

「? そんなことしないです」

 

 分かっている。生きていくなら逃げてはいけない戦いがあるということは。

 

「そうか? さっきのあなたを見ているとそうは思えなかったが」

 

 そう、なのかな? そんなつもりはなかったんだけど、神無さんにはそう見えていたらしい。

 でも、そう言う神無さんはやけに落ち着いていて、それが少し疑問を煽る。

 

「神無さんは、心配じゃないんですか?」

 

 今夜神雷さんが戦う相手――志乃さんがどれくらい強いのかはよく分からない。

 でも、最初の夜に腕を失くし、胸に穴を開けた神雷さんを見ているからか、不安や心配は消えずにわたしの胸にある。

 なのに――

 

「……心配で此度の結末を選べるというのなら、いくらでもしよう。だが、そんなものは無意味なものだ」

 

 あっさりと、はっきりと言った。

 

「心配ではなにも変えられはしない、そんなものはただ徒に己の心を乱すだけ。それよりも今、あの方を想うのに必要なのは信頼だ」

「……信じてるんですか? 神雷さんが勝つって」

「当然だろう。あの方に敗北などない」

 

 圧倒される。なんてすごい信頼。

 この人は本当に、一片の疑いもなく神雷さんの無事と勝利を信じてる。

 でも――

 

「ごめんなさい」

 

 わたしはそこまで自信を持てない。

 信じたいという気持ちはある。でも、このままここで結果を待っているだけというのは不安で押し潰されそうな感じで耐えられそうにない。

 だから、それだけ答えて、

 

「なっ!? あなたはなにを――……」

 

 最後まで止めようとする声を振り切って、すでに姿の見えなくなった神雷さんの後を追うために、海鳴の夜空を飛んだ。

 

 

 

      *   *   *

 

 海鳴市市街地上空。

 足元に緑色に輝くベルカ式魔法陣を展開し、広域探査魔法を使用中。蒐集していたときより範囲はずっと狭いけど、目標の片方はなぜか捕捉しづらくて、集中を解いたらすぐにでも見失いそう。

 でも私だって、癒しと補助の力で『騎士』の称号を得るに至った身。早々簡単に見失ったりはしない。気合も新たにクラールヴィントを操作し、全力で監視の目の維持に努める。(なお、これによって得た情報は全て八神家リビングやアースラにも転送されている)

 

 今夜私たちがこうしてなんの関係もないはずの戦いを観戦しているのは、はやてちゃんの心配が多分に含まれた好奇心と、このことをテスタロッサちゃん経由で知ったリンディ提督からの依頼。

 管理局は手を引くという話だったけど、やっぱりまだ興味はあるらしい。事件としてではなく、人材発掘が目的な気がするのは否めない。確かシグナムがそのことに関して報告書を出していたし。

 

 そんなことを考えていると、急に念話が飛び込んできた。

 

(シャマル、神雷さんは今どこ?)

「テスタロッサちゃん」

 

 必要はないが、声を出して念話に応答する。

 

「なにをしてたんですか? さっきまで反応が消えて、急に出てきましたけど」

(それはわたしもよく分からないんだけど……。それより教えて、神雷さんは今どこにいるの?)

「あ、はい。えっと、今は――」居場所を確認して「オフィス街の方に向かってます。相手の人はたぶん国守山ですから、方向が違うんですけど……」

(ありがとう)

 

 それきり念話は途切れ、金色の魔力光がオフィス街の方へと飛んでいくのが見える。

 

「今のは、テスタロッサからか」

 

 いつの間に来ていたのか、隣にはシグナムがいた。

 

「ええ。あの人がどこにいるのか教えて欲しいって」

「そうか。テスタロッサもあの男に関心を持つか」

 

 なんとも言いがたい複雑な感情を込めた声で、シグナムは唸るように呟く。ライバルを盗られるとか、そんな気分なのかもしれない。

 でも、疑問に思うんだけど、テスタロッサちゃんのあの人に対する感情はなんなのだろう。

 はやてちゃんのような好意、とはどこか違う。リンディ提督たちの警戒心や興味とも違う。なにか色んなものが混ざっていて、本人も持て余しているような印象を受けるその感情はなんなのか。

 そんなことを考えそうになって、すぐに振り払う。今はそんな余裕はない。

 なんにせよ、あの人は今、色んな人から色んな目で見られているということは確かなこと。

 それに、それは私たちも同じ。あの神雷という人には興味がある。

 あの人は本当に、はやてちゃんの好意を受けるに相応しい人物なのか、と。

 夜天の王の守護騎士として、そして私たちに心をくれたあの子の家族として、はやてちゃんには幸せになって欲しいから。

 そのためにもまず、今夜生き延びてもらわないといけないんだけど――

 監視の目は緩めず、隣に佇む仲間へと問う。

 

「……シグナムはどうなると思う?」

 

 その質問が指すのは勝ち負けだけではなく、この戦いの結果そのものについて。

 

「それは分からん。……だが、私にはあの男が負けるとは思えん」

「そう?」

「ああ。直接戦ったわけではないが、おそらく私たちが戦ってきた中でも最上位に来るほどの強者だろう」

 

 あの人が走っている辺りを眼下に収めてシグナムは言った。私たち守護騎士の将は、思った以上に彼のことを高く買っているらしい。同じ『剣士』と分類される者同士、なにか感じるものでもあるのかしら。

 ここからでは目では見えないけど、こうして話している間にも戦闘は続いている。

 あの人の周囲には何本もの矢が飛び交い、シグナムやテスタロッサちゃんと同じかそれ以上の反応速度と反射神経で躱している。

 その矢の動きもまた、私の思うものとは違う。ヴィータちゃんやなのはちゃんの誘導弾ほどではないけど、それぞれが個別に飛び回る。

 それは確かに、常人では為すことの叶わない奇異な戦い。

 そんな戦いに驚きつつ、しかし自分たちの方がより奇異と受け入れつつ、その戦いを見届ける。

 

 

 

      *   *   *

 

 戦闘開始からすでに三分が経過した。

 あたしは決して、自分が優位に立っていないことを理解している。

 あたしの鷹の目がそうであるように、あの男にとっても夜の闇や一里を越える遠間はなんら障害にならない。現に、あの男はあたしの射た矢の全てを認識し対処しながら、それでも確実にこっちへと近づいている。

 

 しかし、迅い。

 

 こちらに照準する余裕すら与えず、人間の限界を踏み越えた速さで街を駆ける姿は下手をすると見失いそうですらある。

 けれど今夜与えられたこの機会、見失った、見過ごした、で済ます気はない。打つ手などいくらでもある。

 クイ、と合図するように空いている右手の指を動かす。(意味はない。気分というヤツだ)

 それに呼応するようにいくつかの矢の軌道が変わり、神雷の近くを飛ぶ七本の矢に多方向から襲わせる。

 けど、その全てを背中にも目が付いているかのように紙一重で避け、しかもその交錯で一本叩き落された。

 その結果を苦々しく思いながらも、避けられた矢の軌道を返し、再び神雷の進路へと走らせる。

 それは物理法則を完全に無視した、本来ありえない矢の動き。

 だけどあたしは、それをこの世で唯一可能とする存在。(少なくとも、他にこんなことをできる人間をあたしは知らない)

 

 あたしが胚に宿している呪い『ヒヒイロノカネ』は本来、命を代価にあらゆる金属を創り出せるというものだった。

 だがしかし、そこに不老不死というありえない呪いが干渉することで、誰の予想をも超える事象が発現している。

 それは創り出した金属に異能の力を付与できる、というもの。

 今海鳴の街を飛び回っている赤い矢――『猟犬の牙』を構成する金属には遠隔操作の異能を付与してある。

 そして――

 

 『雷鋼』精製。形状は矢。数は一。

 

 バチバチと唸りを上げて青白い電気を発する矢を手元に創り出す。

 この電気を帯びた矢もまた、あたしの持つ二つの呪いの相乗によってのみ創り出せる金属の一つ。しかも今回は最高級の電気を付与している。

 

 『硬い稲妻』。

 

 手に掴んだそれを、指先でくるんと回し弓につがえ、弦を引き絞る。その軌跡を青白い電気が残滓を残した。

 そうする間にも、宙を舞い飛ぶ『猟犬の牙』の制御も緩めない。一つ、また一つと叩き落されているが、まだ十近く飛んでいるそれらを、仕留めるためでなく追い込むために軌道を変える。(当然、それを気づかれないように細心の注意を払う)

 これまで見てきた神雷の運動能力と行動パターン、『猟犬の牙』の性能、『硬い稲妻』の速さ。それら全てを数瞬で組み合わせ、一つの予測を立ち上げる。(多分に感覚の要素が入っているけど、下手な計算よりは信用できる)

 ……その企みは成功したと思っていいのだろうか。本人は気づいているのかいないのか、神雷はあたしの思い通りに道を選び走っている。

 『万里』につがえた『硬い稲妻』の鏃を、最適な瞬間と予測したその地点に寸分の狂いなく照準を合わせる。

 それから鷹の目の視線だけを動かして神雷の姿を捉え、その瞬間を待つ。ほんの数秒に過ぎないはずの時間がやけに永く感じる。

 

 まだ……

 

 ジリジリと、一秒毎に緊張で神経が焼きつきそうな感覚。

 

 あと少し……

 

 刹那のズレも許されない瞬間に備え、更なる力を込める。 

 

 ――今!

 

 その瞬間には『硬い稲妻』は引き止めていた右手から開放されており―― 

 轟ッ! と、

 その矢は音の壁を貫き、青白い軌跡を残して闇の彼方のあの男の元へと飛んだ。

 

 

 

      *   *   *

 

 青白い光線が国守山の展望台から走った。

 そしてそれを、偶然、八束神社での夜の鍛錬の途中で目にした。

 

「あれは……」

「恭ちゃん?」

 

 突然意識を他所へ割いたからか、美由希が怪訝そうな声を上げる。が、それもすぐに消えることになる。

 走る青白い光は目にも止まらぬ速さで街の方へと落ち――

 

 爆撃でも落ちたのかと思わせる閃光と轟音。

 

 そしてその爆風は八束神社までも届き、森の中に潜んでいた野鳥たちが飛び立って騒がしくなる。

 それから数秒、その喧騒が落ち着いた頃に美由希が、ようやく理解したように呟いた。

 

「恭ちゃん、今の……」

「ああ」

 

 間違いなく、あの夜神雷さんと見知らぬ誰かが雷を撃ち合って起きた爆発だった。

 そして、昼間聞いたあの人の言葉が、耳によみがえる。

 

――今夜殺し合いをすることになってな

 

 見に行ってもいいかと訊いたら、神雷さんは参考にならないだろうと言っていた。

 確かにそうだろう。今の時代、実戦で刃物を武器にすることはあっても、弓矢を使うことはまず考えられない。それよりも銃の方がずっと有効だろうから。

 でも、あれほどの射程で、あれだけの正確さを持つというならそうとも限らない。

 

 いったい、どんな人が……

 

 興味が湧いた。

 そして、ここからそう離れていない、青白い光線が走った起点――国守山の展望台を見て、決意する。

 

 

 

      *   *   *

 

 犠牲にしたのは、左手だった。

 

 

 赤い矢を回避するために、わずかに宙に浮いた瞬間を狙われた。

 足場がないため満足な体捌きはできず、歩法の『天駆』で霊子を足元に収束させる余裕もない。

 だから、最低の策を採った。

 刀を持っていない左手に雷を集中、飛来した青白い矢に叩きつけた。

 

 

 雷の炸裂する刹那、閃光に乗じて歩法『絶影』で高速移動し、無刃の死角へと入り込む。幸いと言おうか、この辺りにはビルが乱立しており遮蔽物はいくらでもある。わずかでも撹乱になればとここを経由するつもりだったのが吉と出た。

 

 数秒、待つ。

 

 それでも追撃が来ないところを見ると、こちらを見失った、と見てもいいか。まぁ、ここから動けばその瞬間にでも見つかるのだろうが。

 一度、大きく息を吐く。ここまで走ってようやく半分。力は抜けるときに抜いておくべきだ。

 しかし――

 いまだ雷の残滓を帯びる左腕を見て、舌打ちとともに独りごちる。

 

「甘く見たつもりはなかったが……」

 

 そんな言葉が出る時点で甘く見ていたということだろうか。

 それがどうかは分からないが、結果がそこにある以上、認識を多少改める必要があるか。

 持ち上げた左腕――左手首から先は、焼死体のそれを繋げたような有様になっている。羽織の袖は肘の辺りまで衝撃の余波で破れている。腕自体も外見は満遍なく炭化しており、五本の指は半分だけ握るような半端な形で凝固しており、そこに感覚は何一つ残っていない。

 

 もうこの手では刀を持つことはできない。

 

 ここからは右手だけで刀を振ることになる。となると斬撃に十分な力は伝わらないし、斬術之極も四割程度しか力が出せないだろう。

 それでも、唯一つだけ、それを救いとも幸いとも思わないが、とりあえず左手の形だけでも残っているのはよしとしよう。あるとないとでは、再生に使う力も時間も違う。

 そしてそれきり、左手のことは忘れる。ここは戦場だ。傷のことをいちいち気にかけている余裕はない。ないならないで、あるもので補えばいい。

 それより――

 一度目を閉じ、心眼を一局集中。それでも無刃を捕捉できないくらいに距離は残っているが――

 

 そろそろいいか……

 

 もうすでに行程の半分は消化した。ここからは後のことを考える必要はない。

 そう考えるのは、体力に問題があるからではなく、ただ、早いうちから手の内を晒して、対策を取られるのが面倒だっただけだ。

 そしてそれは無刃も同じだろう。その証拠と言おうか、あの夜俺の右腕を吹き飛ばし、心臓を撃ち貫いた光を使っていない。

 そこにどんな意図があるのかは分からないが、知ったことではない。最後の機会と与えたこの夜、力を出せずに終わるならそれまでの人間と、それだけのことだ。

 右腕の調子を今一度確かめるために、バチバチと唸りを上げる雷刃で目の前の空間を薙ぐ。何一つ問題はない。

 そう確認した次の瞬間、ダンッ! と強く地を蹴って再び駆け出した。

 

 

 その瞬間――意識が完全に無刃へと向いたために気づかなかった。

 ピキッと、小さく軋む音が鳴り、手にした刀に小さな亀裂が走っていた。

 

 

 

      *   *   *

 

 すごい……

 自分のいる空のずっと下、国守山の展望台にいるその人――志乃さんを見てそれしか感想が出てこない。

 ピリピリと空気が痛い。それが殺気というものだと知るはずもなく、手に持ったレイジングハートを抱きしめるようにしてその空気を我慢する。近くにいるヴィータちゃんは、それは気にならないみたい。

 けどそんなわたしの様子に気づいたみたいで、ヴィータちゃんが、

 

「にゃの……なのは、大丈夫か?」

「うん、大丈夫……。ってヴィータちゃん、またわたしの名前間違えかけたでしょ」

「う、うっせー! いいだろ、ちゃんと言い直したんだから」

「うん。……ありがとう」

 

 少しだけ、緊張が取れた。もう一度下の方に視線を向けて呟く。

 

「大丈夫なのかな? 志乃さんも神雷さんも……」

「知らねー。あたしははやてが悲しまないならどうでもいい」

 

 即答。そこに迷いはなくて、本気でヴィータちゃんはどうでもいいと思ってるみたい。でもはやてちゃんが悲しむ結果っていうと、神雷さんが死ぬとか殺すかとかした場合で……。あれ? たぶん最後はそうなると思うんだけど、それはいいの?

 でもヴィータちゃんの目はしっかりと下の方でやってる戦闘を見ていて、なにかあればすぐに対応できる程度に身構えている。その真剣な雰囲気につられるように、わたしも同じ方向を見る。

 

 ここまでの二人の戦い方を見ていて(とはいっても神雷さんの方はわたしの目では見えないけど)、だいたい分かってきた。

 片方――志乃さんは相手の間合いのずっと外から正確に射抜く遠距離狙撃型。

 もう片方――神雷さんは高速で動き回り、接近戦に持ち込む高速機動近接型。

 なんとなく、わたしとフェイトちゃんにタイプが似てるように見える。(あくまで似てるだけだし、わたしたちはあの二人ほど極端じゃないけど)

 でも、あの二人はきっとわたしたちよりずっと強い。

 そして、なにより驚くのは――

 

『やっぱり。何度調べても同じ。あの人たち、全然魔力反応がない』

 

 アースラで状況を解析しているエイミィさんから通信が入る。

 そう。

 あれだけのことをしているのに、今目の前で行われている戦闘に魔法は使われていない。

 すずかちゃんやフィアッセさん、それにくーちゃんみたいに、魔法とは違う不思議な力を持つ人たちがいることは知っている。だから魔法じゃなくても、あんなことができてもおかしくはないんだけど……

 

「マジかよ……」

 

 ヴィータちゃんはそれが信じられないみたい。 

 ちょっとフォローしておいた方がいいのかな。

 そう思ったけど、それどころではなくなった。

 視線の先では、もう何度目になるのか志乃さんが赤い矢を三本まとめて射るところだった。

 

 

 

      *   *   *

 

 動きが変わった?

 ビルの立ち並ぶオフィス街を飛び出した瞬間から神雷の姿を見つけることはできたが、その動きはさっきまで――『硬い稲妻』が炸裂する直前までとは一線を画すものだった。

 一言で言うなら、さらに迅くなった。

 さっきまでも十分に人並み外れていたが、今ではもうそれが人間の脚によるものとは思えないくらいだ。『猟犬の牙』が追いきれないほどの迅さで駆け、ときに宙を蹴り、鬼気迫る勢いで距離を詰められる。

 焦る。

 さすがにあれほど人外の動きをするものとは想定していなかった。五百年前に討伐の依頼を請けたときには、せいぜいあの三分の二くらいだったのに。悪足掻きのようになおも『猟犬の牙』を五本放つが、それにどれほど意味があるのか。

 自分の無力さに歯噛みする。なんであたしはたった一つの願い、たった一度の復讐も押し通せないのか。

 すでに宙を舞う『猟犬の牙』は二十を超える。いっそのこと、その全てで集中狙撃してやろうかと神雷を睨んで――

 

 目が、合った。

 

 ありえない、と思った。常人の視力なら明るいところでようやく人影を確認できるという距離だ。それをこの闇の中から見つけ出すとはどんな偶然か。

 いや、しかしあの男も『呪い憑き』の一人。あたしほどではなくとも、異常視力を持っていても不思議ではないか。

 そう思い直す視線の先、神雷は走る足を止めることなく、右手だけで持った刀を大きく振り上げて――

 瞬間、ゾクリとかつてないほどの悪寒が走る。

 と、同時に直感/経験/本能/恐怖が考えるより速く体を動かした。

 ダンッと全力で大きく跳び退り、自分でも驚くほどの距離を一挙動で越えて――

 

 ドンッ!!

 

 と、さっきまで立っていた地面が大きく裂けた。それが神雷の手によるものというのは考えるまでもなく分かる。退がっていなければ地面と一緒にバッサリと斬られていた。だけど――

 

「しまっ……!」

 

 大きく退がり過ぎた。そのせいで神雷の姿が、展望台の端で死角になる位置に入り込んでしまっている。 

 ここからではあたしには打つ手がない。

 どんな異能の射手でも、相手がいなければ狙えない。

 『猟犬の牙』には簡単な自動追尾の異能を付与することもできるが、それも標的を認識できてこそ。誰かも分からない相手を自動で探し出すなんて真似、どんな理屈なら成せるかあたしには分からない。

 となれば、再び狙い撃つにはさっきまで立っていた場所まで出なければいけない。だがそれは、今の斬撃の前に身を晒すということと同義。

 数秒の逡巡。そしてそれは決定的な隙。

 その答えを選べぬうちに、紅い影が、展望台の縁から飛び出した。

 まさかあの崖を駆け登ってきたのか。いやそれは愚問だ、この男ならやる。というか、迅ッ!

 その男――神雷は飛び出した勢いのまま大きな弧を描いて着地し、慣性のままに地面を滑り、やがて止まる。その体勢は、安定のためか足幅は広く重心は低く、そして値踏みするように射抜くように、金色の瞳がしっかりとあたしを見据えている。

 数秒、そのままで膠着。神雷はなにを考えてか動かないし、あたしは金色の瞳に縫い止められたように動けない。

 

 そこから先に動いたのは神雷だった。手にした刀の切っ先を、突きつけるように持ち上げて――

 

「これで、王手だ」

 

 なんの感情も感じられない声で告げた。

 そしてそれは正しい。二十歩の距離などこの男にとって間合いの内。一瞬で首を落とされる危険地帯。そして自分にそれを防ぐ術はない。

 だけど――

 

「そうだね。でも――」ばっと右手を真上に挙げて「詰みには、まだ早いよ」

 

 その仕草にも、神雷は決して注意を逸らすことはない。

 だがそんなことは構いはしない。すでに最後の一手は下された。

 神雷の頭上に、合計で三十を超える白金色の短剣が浮いている。それらは全て、あたしが創り出した異能の金属『錬星鋼』によるもの。そしてその金属に付与された力は――

 

 短剣の刃がより強く輝き、長くなっていく。

 その変化さえほぼ一瞬。挙げた手を反動でそのまま振り下ろすような動作を引き金に、『錬星鋼』による魔弾――『星の光』が降り注ぐ。

 

 『錬星鋼』に付与された異能は、星の発する光を集束させ自身を拡張する擬似物質化。そして集束され物質化した光はそれでもなお、本来の性質――世界最高の運動速度を失うことはない。

 そして今精製、発動させたのは、上方からの無数の『星の光』による射撃。ここまで近ければ『万里』の力を使う必要はない。そして光より速く運動する物質は存在しない以上、この魔弾の雨の回避は不可能。のはず。

 だと、いうのに――

 

 あらゆる感情を忘れて、それに魅入った。

 ありえないことにその男は、秒間二十を超え、ほぼ光の速さで落ちる魔弾の雨を紙一重で躱し続けている。躱しきれず、服を貫き、皮を削ぎ、肉を灼く光にも動揺し動きが鈍ることはない。その動きは目にも止まらぬ高速の舞のようで、残像が何人にも重なって見えた。

 そんな中、突如、神雷が不可解な行動を起こす。

 その男の手に在るのはただ一振り、どこから持ってきたかも分からない不出来な長刀。それがどんな異能を纏っているのか、黒と銀の光を帯びている。

 その一振りの刀で、回避運動の体捌きに合わせて、なにもない空間を薙ぐ一閃。

 直感が警鐘を鳴らす。

 その命じるままに最高硬度の鋼を五本、自分と神雷の間に打ち立てる。

 と、ほとんど同時、その鋼の四本が折れ、残りの一本も半分近く断裂した。

 それが、神雷の到着の直前、地面を斬り裂いたのと同じ一撃だと理解する余裕もない。

 それは一瞬にすら満たない時間。たったそれだけ、あたしの意識は神雷ではなく、目の前の断裂した鋼へと向けてしまい、そして再び光の雨の降り注ぐ場所へと目を向け――

 

 いない。

 

 すでにそこに神雷の姿はなかった。

 そう。この男相手に、対峙しておきながら意識を逸らすなど、自殺行為でしかないというのに――

 考えるより早く、自分の体が直感/経験で動いた。

 一息に、左に動く。

 だけど間に合わなかった。眼帯で作られた右側の死角から黒と銀の輝きが閃き、首の右側を浅く斬られた。それと同時に、剣山で掻き毟られているのかと思わせるほどの痛みが、傷口を中心に走る。

 

「ぎッ――!」

 

 声にならない悲鳴を、歯を食いしばって飲み込んだ。

 なにも考えず、ただ一歩でも離れようと傾いた勢いを利用して後退さる。そんな無茶な移動で転ばなかったのは奇跡とも言える。まぁ、転びそうになったところで崖沿いの手すりにぶつかって止まっただけなんだけど。

 そんなあたしを、神雷は追撃もせず驚いたように、

 

「ほう」

 

 とだけ漏らして、焦る様子も見せずチャキ、と喉元に刀の切っ先が突きつけられる。対してあたしは、腕を上げることもできない。

 完全な決着の形。

 それでも――

 

「……これでも、まだ諦めないか」

「だ……れが……ッ!」

 

 誰が諦めるものか。あたしの五百年は、綺羅との絆は、そんなに軽いものじゃない。

 

「……そこまで憎しみに身を委ね、俺の首を狙う心意気には感服するが」冷ややかな目であたしを見詰めて「言っただろう? お前に、俺は、殺せない」

 

 昼と同じ言葉を、一句ずつ、言い聞かせるように言う。

 

「ッ――――!」

 

 なにか言い返したいと思う。

 なにか言い返さないとと思う。

 だけど、今の状況はそれさえ許してくれない。事実として、この男を殺すことができないまま、ここまで来られてしまったんだから。

 そして、この男はそれだけでなく、心底不思議そうに――

 

「そもそも、お前は俺を殺して、なにを手に入れるつもりだ?」

 

 そんなことを言った。

 そしてその言葉で、あたしの中のなにかに、亀裂が走った。

 

「それは……」

「俺もかつて憎しみのままに、殺して殺して殺し尽くした。だが、戻ってくるものなどなにもなかった。……お前は、俺を殺して、なにを取り戻すつもりだ?」

「それは……」

 

 同じ言葉を繰り返して呻く。

 呻いてから、答えが出せないことに愕然とした。

 

「は……、ははは……」

 

 力なく、笑う。

 分かっている。

 どんなに嘆こうと憎もうと、過去は決して変えられず、死者がよみがえることはない。今ここで神雷を殺せたとしても、取り戻せるものはなにもない。ただ、生きる理由と自分に課していた目的が一つ消えるだけ。

 

「でも――」

 

 他に、どうすればいいのか分からないんだよ。

 

 それは言葉にできなかった。

 弱みを見せるような躊躇いもあったけど、なにより、グラリ、と世界が歪んだから。

 

 それは必然だった。呪弓『万里』と呪具『ヒヒイロノカネ』。両方ともが使用者の命を代価として発動するもので、それを今夜は嫌というほど使い続けてきたのだから。

 とはいえ、命を代価にするとは言っても不老不死の呪いが霊脈から力を吸い上げ続けて消費を肩代わりしているからか、死ぬということはない。それでも疲労はしていくし、ここまでは集中力とかそういうもので堪えていたけど、とうとう誤魔化しも効かなくなってきたみたい。

 

 手すりにもたれかかるようにしてなんとか立った状態を保ち、肺の中の空気全部を吐き出すような大きなため息を吐いて、まだ左手に握り締めていた『万里』を、背後の崖下へと放り投げた。

 ここまで間合いを詰められてはもはや弓は意味を成さない。遠距離攻撃とは遠くから撃つからこそ『遠距離』攻撃なのだ。

 

 それを降伏の意思と見たのか、神雷の表情に怪訝な色が混じる。それでも動きは淀みなく、手にした刀を大きく振り上げて――

 きっと、それで終わり。

 その一撃は間違いなくあたしを殺す。そして『顕現』したあたしの呪いをも、この男は容易く壊す。

 でも――

 

――絶対に、生きて帰ってこいよ?

 

 リスティとの約束がある。それだけではなに一つ今の状況を好転させることはできないけど――

 でもせめて、最後まで足掻いてみよう。

 そして打ち出す『本当に』最後の一手。

 

 『朱燐鋼』精製。形状は槍。数は一。

 

 瞬間、紅い槍が神雷の背後に出現する。

 その槍の穂先は神雷の延髄へと向けられており、あとはただ主の命令を待つばかり。

 そしてその命令を下し、槍は必殺の意思を込めて放たれる。

 

 

 血の色をした槍は獲物を貫かんと空を走り――

 雷を纏った兇刃は終わりを告げるように振り下ろされた。




 さて、第2章第12話お届けしました……

「どうしたのかな? なんだか元気ないけど」

 ああ、志乃か。……いや、今回は予定通りバトル中心で書いてみたんだけど、読み返してみて「ヘッタクソだなぁ……」としか感想が出ない気分で

「ん〜〜、そうだよね。会話とかほとんどないし」

 会話、欲しいか? あれだけ距離が離れてると、延々独り言呟くアブナイ人になるけど……

「ゴメンナサイ」

 ……まぁ、それとは別に、いくつか書きたかった描写があったんだよ。書いてるうちにいつの間にか忘れてたけど。神雷の方では、某剣士と騎兵の戦闘みたいに壁面を飛び回るとか。君にしても、中盤で隠れているビルごと神雷を撃ち抜くシーンとか。

「え!? なんであたしはやってないの?」

 だから、忘れてた……っていうか、書いていたらそのシーンのない構成で出来上がってしまったというか……

「なにそれ? それに最後、結果を先延ばしとかよくあるやり方だけど、君はそろそろ控えたほうがいいと思うよ」

 まぁな。今までも何度かやってきたことだし。……まぁ、今回はオマケが多いからこのくらいにしておこう。では最後に次回予告。次回でようやく、第2章も終わり。そんなわけで戦いの後始末と第2章のまとめ、そして今後の展望など。生き残った奴には色々語り合ってもらいましょう

「生き残った奴って……なんだか不吉」

 気にするな

 

 

 オマケ

 まずは、今回出てきた戦闘能力評価から

 

■??  《神雷》

 ・斬術之極

  斬月

   常人とは桁外れの剣圧により、間合いの外を斬る斬撃。

   『斬撃を飛ばす』というより『距離を無視して斬る』という概念が適合するため、受け止めるという行為は非常に困難。威力、射程などは気迫など精神状況にも多少左右される。(実際、ツキ自身射程の限界を把握していない)

   大技であるため乱発はできず、肉体への負担も大きい。そのためツキ自身も好んで使うことは少ない。

 ・雷術

  千鳥

   手に持った武器に雷を流し、斬れ味を格段に上げる雷術。

   雷を流す必要があるため、電導性のない物質(竹刀や木刀)では使用できない。

   なお、当然だがその武器には電撃の付随効果が発生する。

 

 

■比良坂 志乃  《無刃》

 戦闘スタイル  超長距離狙撃型

 愛用の武器  呪弓『万里』

 

 筋力  A

 敏捷  AA

 反応  AA−

 射程  SS

 

 総合能力レベル  AAA+

 

 備考

 

 『呪い憑き』の一人で、『辛(かのと)(陰・金)』の字に当たる。

 胚に宿す呪い『ヒヒイロノカネ』によって『呪い憑き』に選ばれた。その呪いの力は『命を代価にあらゆる金属を創り出す』というもの。しかし、不老不死の『呪い憑き』でもあるため、どんなに力を使っても死ぬことはない。

 

 ・影の矢

   なんの異能も付与されていない黒い矢。特殊な形状により風切り音がほとんどなく、暗殺用として使っている。鏃に毒を塗って使うことが多い。

 ・猟犬の牙

   異能の金属『念鎖鋼』によって精製する矢。

   赤い顎状の鏃をしている。遠隔操作・自動追尾の能力を有しており、志乃が狙う限りどこまでも追い続ける。

 ・硬い稲妻

   異能の金属『雷鋼』によって精製する矢。

   その金属はほとんど固形化した稲妻。貫通力・破壊力については志乃の持つ矢の中で随一であり、あらゆる防御を貫いて標的を射抜く。

 ・星の光

   異能の金属『錬星鋼』によって精製する矢。

   この金属により精製される鏃は光と同じ性質を持ち、発射と同時に着弾するため、事実上回避は不可能(のはず)。他にも、『直線にしか運動しない』、『反射、屈折、吸収の干渉を受ける』などの性質もある。

   ただし、矢として使う場合、精製してから照準を変えることができないという欠点と一〜二秒の溜め時間があるため、動き回る相手を狙い撃つには向いていない。

 

 

 それと最後は、どうでもいい補足 その3

 

・各キャラの使う電撃の強さランキング

 1位 久遠(大) 『雷』  ――推定レベル 700

 2位 フェイト 『サンダーフォール』  ――推定レベル 300

 3位 ??《神雷》 『雷霆』  ――推定レベル 280

 4位 久遠(小) 『雷』  ――推定レベル 150

    志乃《無刃》 『硬い稲妻』  ――推定レベル 150

 6位 リスティ 『サンダーブレイク』  ――推定レベル 110

 7位 フィリス 『サンダーブレイク』  ――推定レベル 30

 番外 ファリン 『静かなる蛇』(現在使用不能)  ――推定レベル 80

 

注1:これらはあくまで、この作品時点でのものです。なのでこの数年後の数字などは考えてません

注2:これらはあくまで、純粋な電気の強さによるランキングです。なのでフェイトは他の魔法の場合大きくレベルが落ちますし、志乃は主点は金属なので実際の破壊力は別です





遂に決着が。
美姫 「どんな結末が!?」
うーん、気になるところではある。
美姫 「次回ね」
だな。次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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