『時空を越えた黄金の闘士』

第二十七話 「闇の書」

 

銀髪の女性の姿となったはやて……いや、『闇の書』の管制人格は涙を流しながら、なのはとフェイトに狙いを定めていた。

「……『デアボリック・エミッション』…」

愛しき守護者を目の前で破壊したなのはとフェイト(犯人はリーゼ姉妹なのだが……)に空間砲撃を放ってきた……が、その砲撃はカノンがあっさりと消し飛ばしてしまった。

「……クロノ。この場は俺とアイオリアに任せろ!お前はそこで虫の息になっているバカ猫共をさっさと回収しろ!!」

師の指示に従い、クロノはリーゼ達を抱え、本局に転移していった。

 

 

「止めろ!」

なのは達に攻撃を続けようとする『闇の書』にアイオリアが静止を掛けた。

「何故……あの娘たちを攻撃する」

「……守護騎士たちを破壊した者たちを破壊する……それが『主』の願いだ……アイオリア…」

「………」

『闇の書』の返答に、アイオリアは失望の表情になった。

「……シグナムたちの話では……『闇の書』は絶大な力を主に与えるという話だったが……ヴィータたちを破壊したのが本当にあの2人だと思っているのなら……どうやら、過大評価だったようだな…」

リーゼ達は、アイオリアの目の前でなのはとフェイトの姿から、『仮面の男』の姿に変わったが……それを見る前に既に、あの2人がなのはとフェイトではないことなど、すぐに見破っていた。

変身魔法とは、あくまで姿を変えるだけであり、その人そのものに同化できるわけではない。

あのなのはとフェイトは、はっきりいって気配が違いすぎていた。

そんなお粗末な変身……見破る事など『黄金聖闘士』には造作もなかった。

彼らを騙すなら、南氷洋の『海将軍』リュムナデスのカーサ級の変身能力が必要である。

「……本物か偽者の区別くらいも付けられん阿呆が……さっさと引っ込め!!」

アイオリアが『小宇宙』を高め、『ライトニングボルト』を放とうとしたとき、またもカノンが止めた。

「止めろ!」

「また止めるのか?カノン!」

「奴を始末することなどは確かに容易い……。しかし、それははやてにとどめを刺すことと同義だぞ!!」

カノンは説明を始めた。

『闇の書』はロストロギアであると同時にデバイスでもある。

なのはやフェイトが使う『インテリジェントデバイス』や守護騎士たちが使う『アームドデバイス』とも違う……『融合型デバイス』または『ユニゾンデバイス』とも呼ばれる。

これは、ミッドチルダ式の『インテリジェントデバイス』の設計思想を極端化したモノで、自意識を持つデバイスに人の姿を与え、状況に応じて『融合』することで魔法管制と補助を行う。

他のデバイスを遥かに超える反応速度と魔力量を術者は得ることが出来るが、融合適正を持つ術者は少ない。

更には、デバイスが主の身体を乗っ取ってしまう『融合事故』の危険もあるので、製品化するには至らなかった。

「今の『闇の書』の状態が融合事故だ。完全にはやての身体を『闇の書』が乗っ取っているから、はやての面影がないだけで、アレは間違いなくはやての身体なのだ……奴にお前の拳など放てば間違いなく、はやてを殺してしまうぞ!」

「では、どうすればいい?」

「とにかく今は戦略的撤退をするしかない……」

そういうと、カノンはアイオリアに肩を貸し、飛行魔法でその場を離れた。

なのはとフェイトも、ユーノとアルフと合流し、『闇の書』から離れた。

 

 ★☆★

 

一方、本局の医務室では、アイオリアに半死半生にされたリーゼ姉妹の治療が行われていた。

「どうですか?先生……」

「……これは………完治するには相当の時間と……彼女達の努力が必要です……。下手をすれば……一生ベッドで寝たきりになるでしょう……」

これほどのダメージを負ってしまえば、いかに強力な魔導師の使い魔とはいえ、完治するのは難しいようである。

かつて、魔法の指導をしてもらった相手の―――自業自得だが―――無残な姿を痛ましげに見つめていた。

そこへ、ロッサに伴われ、グレアムが病室に入ってきた。

グレアムは、自分の使い魔の状況に絶句していた。

「先生……すいませんが……」

「わかりました。彼女達の容態が急変したらお呼び下さい」

そう言って、医師は席を外した。

クロノはグレアムに哀しげな視線を向けた。

「……提督……」

「……君は…既に…私が何を企んだか掴んでいるんだな…」

査察部所属のロッサが自分を拘束に来たとき、グレアムは自分の計画が潰えた事を悟った。

「……提督の行動は……はっきり言って状況を悪化させる原因にしかなりません……。何故なら……カノンさんとユーノが無限書庫で見つけたんです……。提督の計画よりも遥かに確実で、安全な方法を……」

「……なんだって!?」

「……グレアム提督とリーゼ姉妹の行動で……かえってその方法を使い難くなってしまいました。多分……そのことも提督の罪状に含まれるでしょう……」

『闇の書』の完成前に、その方法を使えれば……『闇の書事件』は誰も傷つかず、誰も悲しまずに、そして……11年前の様な悲劇を起こさず、解決できたであろう……。

結局、グレアムの行動は完全な邪魔でしかなかったのだ。

「……その方法とは何だね……クロノ…」

グレアムの問いにクロノは静かに答えた。

そして、その方法を聞いたとき……グレアムは……己の行動の愚かさを悟った。

「……あと、カノンさんがこの事件が終わった後……聞きたいことがあるそうです……。下手に誤魔化すとカノンさんは容赦しないので……観念して素直に答えることをお勧めします……」

現場が気になる……といい、退室しようとするクロノに、グレアムは待機状態のデバイスを手渡した。

「……氷結の杖『デュランダル』…。これをどう使おうと君の自由だ……」

クロノは黙ってそれを受け取り、退室していった。

「………結局…、私は……クライドの仇を討つどころか……とんだ道化を演じていただけのようだな…」

自らの愚考をあざ笑うグレアムを……ロッサは哀しげに見つめていた。

 

 ★☆★

 

『闇の書』から距離を取ったカノン達は、『闇の書』が砲撃魔法を放とうとしていることに気付いた。

「……あれは!?」

カノンが小宇宙で意識を飛ばし、『闇の書』が放とうとしている魔法を確認した。

「奴が放とうとしている魔法は……『スターライトブレイカー』だ!」

「なのはの魔法!?」

「何で!?」

なのはのオリジナル魔法である『スターライトブレイカー』を何故使えるのか……。

その疑問に答えたのはユーノだった。

「なのはは一度、蒐集されている……『闇の書』……いや、『夜天の魔導書』は本来、優れた魔法を記録する為の魔導書……。奴は蒐集した相手の魔法を使うことが出来るんだ……」

「……感じる魔力から見て、なのはの『スターライトブレイカー』よりも強力なようだな……」

その時、バルディッシュから結界内に一般人が取り残されていると、報告が入った。

 

 

「すいませ〜ん!ここは危ないんでそこでじっとしてください」

「……えっ!?」

「今の声って……!?」

なのはの声を聴き、振り返った少女達は……アリサとすずかだった。

「アリサちゃん……すずかちゃん!?」

「……なのは……フェイト…!?」

「それに…カノンさんに……アイオリアさん…!?」

アリサとすずかは、混乱の極致だった。

楽しいクリスマス・イヴの日に、突如起こった異常事態。

家族連れやカップルたちで一杯のはずなのに……あたりを見回せば誰もいない。

空の方に妙な光の球が見え、とりあえず避難をしようと思えぱ、聴きなれた声が聞こえ振り向けば、親友2人がなにやら妙な格好をしていた。

無論、それはなのはとフェイトも同様だ。

取り残された一般人が、よりにもよってアリサとすずかだった。

自分達の今の姿を見られてしまった。

「……来たぞ!」

カノンの声に我に返ったなのはたちは、『闇の書』の『スターライトブレイカー』が接近してくるのを確認した。

「フェイトちゃん……アリサちゃんとすずかちゃんを…」

「うん」

なのはに促され、フェイトは2人の周りに結界を張ろうとしたが……。

「その必要はありません!」

「……ムウ!?」

「『クリスタルウォール』!」

突如現れたムウが、全方位に『クリスタルウォール』を張り巡らせた。

『スターライトブレイカー』は、『クリスタルウォール』に反射され、『闇の書』に撥ね返っていったが、『闇の書』は防御魔法を展開し、それを防ぐ。

「……遅れても申し訳ない……」

「いや、ナイスタイミングだった……」

なのはとフェイトでも防ぐことは出来ただろうが、かなりの負担が掛かっただろうが、ムウの『クリスタルウォール』なら、いかに『スターライトブレイカー』でも打ち抜くことは困難である。

『クリスタルウォール』にも弱点はあるが……、それはそう簡単には見破ることは出来ないだろう。

「……とりあえず、アリサとすずかの方は私が引き受けましょう……。この2人のことは気にせず……貴方達は目の前の件にしゅうちゅうしてください」

カノンやアイオリアよりも、ムウの方が誰かの護衛には適している。

「……ちょっと…今、何が起こっているのよ!?それに、なのはとフェイトは何をやろうとしているの?それにあの変な格好は何!?コスプレ?」

なのはとフェイトは、興奮しながらもこの状況の説明を求めるアリサを軽くあしらってムウを見て、安堵していた……が…。

「見られちゃったね」

「……うん」

その時、エイミィから通信が入った。

【なのはちゃん、フェイトちゃん……そしてカノンさんと……え〜っと…】

「……アイオリア…だ」

【アイオリアさん!クロノ君から連絡……『闇の書』の主……はやてちゃんに投降と停止を呼びかけてって!!】

 

 

「おい、はやて……そして、『闇の書』…聴こえるか!さっきも言ったがヴィータ達を傷つけたのはなのはとフェイトじゃない!止まれ!!」

「……その程度の事は理解しているよアイオリア……さっきのお前の言ではないが、アレがその2人ではないことぐらい……すぐに分かる」

アイオリアの叫びに、『闇の書』は静かに答えた……しかし…。

「我が主は……自分の愛する者たちを奪った世界が悪い夢であってほしいと願った。我はただ……それを叶えるのみ……主には穏やかな夢の中で……永久の眠りを……」

「何だと!!……はやてが……本当にそんなことを願っていると思うのか!」

確かに、目の前で守護騎士たちを喪った直後はそう願ったかもしれない……。だが……。

「そして、愛する騎士たちを奪った世界《モノ》には……永久の闇を!」

『闇の書』が手を翳すと、地面から触手を持った生物が召喚され、その触手がなのはとフェイトを拘束しようとするが……。

「フン!」

カノンとアイオリアの光速拳で一瞬のうちにズタズタにされてしまった。

「……これが……本当にはやての願いだとでもいうのか……。悲しみに満ちて…混乱していたときの状態に思った事など……本当の願いでないことくらい……理解できるだろう!……今まで、はやての傍にいて……貴様は何を見てきた!!」

「そうです……。そんな一時の悲しみの中での願いを叶えて……はやてちゃんは幸せになれるの!心を閉ざして……何も考えずに……『主』の願いを叶えるだけの『道具』でいて……貴女は…それでいいの!」

「……我は魔導書……ただの『道具』だ…」

『闇の書』の返答にアイオリアが激昂した。

「ふざけるな!なら、その涙はなんだ!!……ただの『道具』が……そんな悲しみに満ちた涙を流せるか!!」

「……この涙は『主』の涙……。私は『道具』だ……。悲しみなど……ない…」

フェイトが叫んだ。

「……悲しみなどない……。そんな言葉を……そんな悲しい顔で言ったって……誰が信じるもんか!!」

「貴女にも……心があるんだよ!悲しいって言っていいんだよ!!」

はやてはきっと、それに応えてくれる。

優しい娘だから……。

「だから、はやてを解放して!武装を解いて!!」

……………。

その時、『闇の書』の顔が歪み……苦しげになった。

「……早い……もう……始まったのか……。『あの男』が……もうすぐ……」

『闇の書』の苦しみに呼応して、辺りが震動し始め、火柱が立つ。

「……もうすぐ私は……『あの男』に全てを乗っ取られる……そうなる前に…主の望みを……叶えたい…」

「この駄々っ子!」

そう叫ぶと、フェイトは『闇の書』に向かって突撃した。

「待て!不用意に近づくな!!」

「言うことを……聞け!!」

カノンの制止の声に気付かず、フェイトは突撃した。

「お前も……我が内で……眠れ…」

フェイトの一撃は、魔方陣で防がれ……金色の光がフェイトを包もうとしたとき……突然、襟首を攫まれ放り投げられた。

「エッ!?……」

フェイトが目にしたのは……自分の代わりに『闇の書』に吸収されるカノンの姿だった。

「……カ……カノ〜ン!!

 

〈第二十七話 了〉


 

真一郎「フェイトの代わりにカノンを取り込ませたのか……」

うん。まあクロス先のキャラがフェイトの代わりに取り込まれるのは珍しい話じゃないけどね

真一郎「それでもあえてそうした……と?」

そのために、アリシアとの邂逅を無印編に持ってったわけだしね

真一郎「ところで…『あの男』って誰……」

このAS編においてカノン達の重要な相手になる……とだけ言っておきましょう

真一郎「シードラゴンは関係ないんだな」

アレはこの『闇の書』事件には関わってこないからね……

真一郎「さて、次回は?」

次回は、色々な謎が明らかにされる……予定…

真一郎「カノン達がこの世界に転移してきた理由とかが明らかになる……かも…」

では、これからも私の作品にお付き合い下さい

真一郎「お願いします」




うーん、アリアたちが比較的早くに退場したけれども、そうそう簡単に事は運ばないみたいだな。
美姫 「ユーノたちが見つけた方法も今はまだ無理っぽいみたいだしね」
あの男という言葉や取り込まれたカノンがちょっと気になるけれど。
美姫 「どうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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