『時空を越えた黄金の闘士』

第六十二話 「FWメンバー」

 

「………なのは…さん…」

「うん!?」

「…は…いえ、高町教導官……一等空尉!」

「…『なのはさん』でいいよ。みんなそう呼ぶから…。四年ぶりかな?背伸びたね…スバル」

「…えーと…あのっ……あの……」

「また逢えて、嬉しいよ」

スバル・ナカジマは、四年前の空港火災で救ってもらって以来、憧れている二人の内の一人、高町なのは一等空尉と再会したことで涙が溢れ、号泣した。

 

 ★☆★

 

陸戦魔導師Bランクへの昇格試験を受験すべく陸士386部隊所属のスバル・ナカジマ二等陸士とティアナ・ランスター二等陸士は、試験会場となる廃棄都市街にいた。

試験内容は、各所に用意されたターゲットを破壊しつつ、制限時間内にゴールを目指すというモノ。

当初、二人は順当に進んでいたが、一瞬の気の緩みからティアナが足を負傷していまう。

ティアナは、自分はサポートに徹するから、スバルだけでもゴールすることを提案するが、二人一緒でなければ納得しないスバルが、反則を取られるかもしれない裏技を提案し、それに賭けることとなった。

二人の力を合わせ、なんとか最後の難関である大型オートスフィアの破壊に成功。

最後のターゲットを破壊し、負傷したティアナを背負い、自作ローラーブーツ型デバイスを魔力全開で疾走させ、ゴールを目指すスバルだったが……止まる時の事を考えていなかったらしく、明らかにオーバースピードだった。

ゴールを通過した後、そのまま壁に激突しそうになるが、低速の爆風と六つの魔法陣の間に張られたネット、そして多数の白い緩衝材が二人を受け止めた。

なのはが『アクティブガード』と『ホールディングネット』を、試験官を務めていたリインが『柔らかき支柱《ヴァイヒ・スツーツ》』を発動させ、二人を救ったであった。

 

 

 

スバルとティアナの試験を上空のヘリから見学していた八神はやて陸上二佐とフェイト・T・ハラオウン執務官は、二人に新たな部隊である『古代遺失管理部、機動六課』についての説明をしていた。

スバルも巻き込まれた四年前の空港火災から、はやては新部隊設立に奔走し、やっとそのスタートが切れた。

登録は陸士部隊、FWは陸戦魔導師を主体とした特定遺失物の捜査と保守管理が主な任務。

広域捜査は古代遺失管理部の一課から五課までが担当するので、六課は対策が専門である。

「…で、スバル・ナカジマ二等陸士、それにティアナ・ランスター二等陸士」

「「はい!」」

「私は二人を機動六課のFWとして迎えたいて考えている。厳しい仕事にはなるやろうけど、濃い経験は詰めると思うし、昇進機会も多くなる。どないやろ?」

スバルとしては、憧れの高町教導官から直接、魔法戦を教われるし、執務官候補のティアナは、現職のハラオウン執務官からアドバイス等を貰える。

いきなりのスカウトの話に、流石にスバルとティアナは戸惑っていた。

そこに、なのはが二人の試験結果を持って来た。

結果としては…不合格。

技術は二人とも問題ないが、危険行為と報告不良は見過ごせるレベルではない。

だが、二人の魔力値や能力を考えると、次の試験まで半年間もCランク扱いにしておくのは、かえって危険と教導官と試験官が見解が一致、再試験の為の特別講習を受けさせることとなった。

合格までは試験に集中したいだろうから、はやてへの返事は試験終了後となった。

 

 

 

スバルとティアナは中庭で、今後のことについて話し合っていた。

選りすぐりの六課メンバー陣に不安を覚えるティアナだったが、スバルの励ましと自身の夢の為、入隊を決意するのだった。

 

 

 

「あの二人は、まあ入隊確定かな?」

「…だね」

中庭で相談し合う…というかジャレ合っている!?……スバルとティアナの様子を見ていたはやてとなのはは、二人の入隊を確信した。

「なのはちゃん嬉しそうやね」

「二人とも育て甲斐があるし、時間かけてゆっくりと教えられるし…ね」

「フフフ…それは確実や」

六課が戦うべき敵は付け焼刃ではとても勝てない。

じっくりと実力を身に付けさせなくては……。

「新規のFW候補はあと二人だっけ……そっちは?」

「二人とも別世界…。今、シグナムが迎えに行ってるよ…本当は隊長のフェイトちゃんが迎えに行く予定やったんやけど……」

そこに、フェイトとリインが姿を見せた。

「…私はこの後、外せない仕事が出来ちゃったから……」

ちょうど、その二人が到着する時間帯に仕事がかち合ってしまったフェイトはやむを得ずシグナムに任せることにしたのだ。

「私も久しぶりに、その二人とリニスに会いたかったんだけど……」

フェイトも残念そうである。

「ほんなら、今度会うのは六課の隊舎でやな」

「お二人の部屋、しっかり作ってあるですよ」

「うん」

「楽しみにしてるよ」

 

 ★☆★

 

第61管理世界『スプールス』から、第1世界『ミッドチルダ』へとやってきたエリオとキャロは、付き添いのリニスと共に六課からの迎えを待っていた。

「……もう時間過ぎてる」

「…まあ、シグナムも忙しい様ですから、少しくらいは仕方ないでしょう…」

「……やっぱり、中央の方たちって忙しいんですね?」

などと話していたら、エスカレーターで昇ってくるシグナムの姿が見えた。

「シグナム。こっちです」

「ああリニス、久しぶりだな…。そして、エリオとキャロ・ル・ルシエだな?」

「「はい!」」

「遅れて申し訳ない…古代遺失管理部、機動六課のシグナム二等空尉だ…。長旅ご苦労だったな…」

「…いえ」

シグナムは、自分の隊に所属することになる二人を見た。

「……リニス…。二人の『魔導師』としての実力はどうなんだ!?」

「そうですね……。Bランク相当の実力はあると思いますよ」

聖闘士の修行と併行して、魔導師としても育成されているエリオとキャロは、公式では嘱託魔導師としての扱いである。

クロノ・ハラオウン提督の推薦で、数ヶ月前に嘱託魔導師試験に合格している。

十年前のフェイトの時と違い、本局ではなく『スプールス』での異例試験だったが……。

「嘱託魔導師扱いだが、我々の相手には『海闘士』も含まれている。その時は、お前たちの『聖闘士』としての力を貸してもらうことになる…。よろしく頼むぞ…」

「「はい!!」」

「では、シグナム…。二人をよろしくお願いします…」

「なんだ…もう行くのか?テスタロッサには会っていかないのか?」

リニスは、このまま聖域にいるカノンの下に戻る予定である。

「…フェイトも忙しいでしょうし、別にこれから二度と会えないわけでもないですから……」

「そうか。カノンによろしくな…」

「じゃあ、エリオとキャロもしっかりとね…。そして…元気に老師の下に帰れるように…」

「うん。リニスも……」

「…また…今度……」

リニスとしては、これから二人が戦うことになるであろう敵の事を思うと、心配でたまらなくなる。

『ガジェット』と共に現れる海闘士達……例え雑兵とはいえ、侮れない相手だ。

エリオとキャロは、未だ実戦経験はない。

しかし、それでも正式な聖闘士となったからには、戦わなくてはならない。

それが、聖闘士となった彼らの宿命であり、自らが選んだ道なのだから……。

 

 ★☆★

 

一方その頃、ある場所において……。

【ヴィータちゃん、ザフィーラ…、追い込んだわ。ガジェットT型…そっちに三体】

『レリック』や、それに似たロストロギアの周りに集まってくる機械兵器『ガジェット・ドローン』。

カプセル型のT型三体が、陸士制服の上に白衣を纏った女性…シャマルに、狼の姿をした『守護獣』ザフィーラの正面に追い込まれていた。

「テォワアァァァァァァァァァァァァ!!」

ザフィーラの雄叫びと共に発動した『鋼の軛』がガジェットの一体を貫き破壊する。

そして武装隊アンダースーツ姿のヴィータがハンマー型アームドデバイス、『グラーフアイゼン』を振りかぶり一体を殴り飛ばす。

「…『アイゼン』!」

《Schwalbefliegen!》

『グラーフアイゼン』で魔力の篭った鉄球を打ち飛ばし、もう一体にぶつけて破壊した。

「…片付いたか…?」

「シャマル…残りは?」

【……残存反応無し…『ガジェット』は全部潰したわ…後は…】

シャマルが視線を向けた先では……皮製のプロテクターを纏った男が、鱗を模したプロテクターを纏った男二人と対峙していた。

「チッ…、『玩具』は破壊されたか…」

「こうなったら、貴様から血祭りに上げてやる!」

二人は同時に襲い掛かるが、突然その男から強大な小宇宙が発せられた。

「な…何っ!?」

「…ま…まさか、この男は!?」

「…さあ受けろ獅子の牙を…!『ライトニングプラズマ』!!」

男から発せられた無数の閃光が二人を貫く。

「「ギャアアアアアア――――――っ!!」」

ズタズタにされた二人は地に倒れ付した。

「…お…おま…えが…黄金の……獅……子…」

「…『獅…子座』の……アイオ…リ…」

言い切る前に事切れた。

ちなみに、二人がアイオリアを黄金聖闘士であることに気付かなかったのは、アイオリアが聖衣を纏っておらず、小宇宙も寸前まで抑えていたからである。

「……アイオリアさんの方も終わったわ…」

「…出現の頻度も数も増えてきているな…」

「…ああ、動きも段々賢くなってきてる」

「でも、これくらいならまだ私達だけでも抑えられるわ」

「…そうだな……」

「ド新人に任せるには、ちょっとメンドい相手だけどな…」

「仕方あるまい。我らだけでは手が足らぬ」

不安を口にするヴィータにザフィーラがそう諭した。

「その為の新部隊だもの」

「はやての……私達の新部隊…」

 

 

 

「……『機動六課』…かぁ…」

レールウェイから窓から外を見ているスバルは、自分が所属することになる部隊の名前を呟いていた。

疲れているのか、ティアナはその横で眠っている。

機動六課に所属することで、もう一人の憧れの人の再会と、自らの出生に関わる運命が待っている事をスバルはまだ知らなかった。

 

〈第六十二話 了〉


 

はい、これで機動六課のFWが全員揃いました。

真一郎「今回は、多少変わっただけで、ほとんど原作通りだったな」

まあ、あまり変えようのない回だしな…

真一郎「さて次回、ようやくアイオリアとスバルが再会します」

では、これからも私の作品にお付き合いください

真一郎「お願いします。君は、小宇宙を感じたことがあるか!?」




原作通り、六課のFWメンバーが集結。
美姫 「今回は大きな変化はないけれど、やっぱり敵側も聖闘士が動いているようね」
だな。その辺りの動きがどうなるのか楽しみだが。
美姫 「一体、どうなっていくのかしらね」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



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