『時空を越えた黄金の闘士』

第六十五話 「ファースト・アラート」

 

スバルとティアナはキャロとの模擬戦で、自分たちがこれから戦っていく相手というのがどのようなモノなのか、多少は理解したようである。

途中までは、自分たちのペースで進んでいた戦いだったが、本来トドメとなるはずの決め手がキャロには通用しなかった。

そんな2人にアイオリアが、対海闘士の対処法の説明をしていた。

「まあ、出向している聖闘士がいる部隊はあいつらに任せているが、数に限りがあるからな。聖闘士のいない部隊が海闘士と遭遇した時は、まず一対一では戦わない。必ず、多対一で戦うように心がけさせている。何とか撃退できてはいるが、その内の何人かは、良くて病院送り、悪ければ殉職している……」

無論、聖闘士も今の所、死者は出ていないが、何人かは重傷を負っている。

「あと、絶対に避けなければならないのが、密閉空間での戦闘だ。聖闘士や海闘士を相手にする場合、絶対にそういう場での戦闘は避けろ……」

魔導師が聖闘士に対抗するには、周りの環境を利用するのがベストだ。

周りの障害物やアウトレンジからの砲撃……、接近戦は圧倒的に不利なのだから……。

故に、狭い場所での戦いは魔導師が圧倒的に不利になる。

距離が取れないから、音速の動きがスタンダートな聖闘士や海闘士なら、あっという間に懐に入られてしまう。

数年前、暗黒聖闘士にアースラ内に侵入された時、リンディとリニスが暗黒聖闘士達相手に苦戦した様に……。

空を飛ぶことのできる空戦魔導師ならともかく、陸戦魔導師の場合は、障害物の余りない平原や荒野での戦いも同様である。

いかに距離を置こうにも、身を隠す所がなければ、音速の動きですぐに追い詰められてしまうからだ。

現に翌日、スバルとティアナはエリオと密閉空間や平原に設定させたシュミレーターで模擬戦を行ったが、5分と経たずに敗北していた。

 

 

 

それからしばらく、FW陣は訓練に明け暮れていた。

基本的には、なのはの教導がメインであるが、たまに聖闘士としてのエリオとキャロを相手に、海闘士対策の訓練も行われていた。

毎日、へとへとになって宿舎に戻るスバルとティアナは、今までの自分たちが行ってきた訓練がいかに甘いものなのか骨身に染みていた。

「……今日も疲れた〜〜〜……それにしても…」

スバルは自分たちとは対照的に、ケロッとしている年少組に視線を向けた。

「あ…あんた達…アレだけ扱かれて、なんで平然としていられるのよ…?」

「……今までの修行に比べれば、まだまだ軽いですよ。あの程度で根を上げていたら聖闘士なんかにはなれませんよ…」

「老師の修行って地味に厳しいですから……最も、辛いなんて思った事一度もありませんけど…」

ティアナの指摘に、苦笑しながら答える2人。

聖闘士の修行は、魔導師の訓練の比ではない。

油断すると、間違いなく死に直結する。

当然、エリオもキャロも地獄のような修行を課されていた。

しかし、2人とも不思議と辛いと思ったことがない。

それは偏に童虎という師を持った幸運といえよう。

星矢達、青銅聖闘士五人の中で、最も恵まれていたのは間違いなく紫龍だった。

星矢は、聖闘士発祥の地であるギリシア・聖域で修行したので、脱走すれば処刑、師である魔鈴も「死ぬ〜」と訴えても「死ねば?」と返すようなありがたくて涙がちょちょぎれる様な師匠だった。

それでも、魔鈴を慕った星矢を見て、どんな調教をされたのか疑問に思う。

氷河は、師匠は兎も角、修行地が東シベリアという極寒地なので、環境的に厳しい。

瞬も氷河同様、師匠には恵まれたが、昼間は灼熱、夜間は寒波という過酷な修行地だった。

一輝に至っては最悪の師匠、修行地も過酷な環境という目も当てられない地獄だった。

エスメラルダという心の支えがなければ、いかに一輝と言えど、耐え切れずに死んでいた事間違いなしだった。

それに比べれば、自然豊かな盧山五老峰。長江中下流の暑苦しい亜熱帯気候の中でも稀有な涼しい気候で有名な避暑地でもある。

そして、師匠の童虎は聖闘士としても人間としても優れていて、全ての聖闘士に敬意を払われる存在。

他の4人に比べれば、紫龍はかなり恵まれている。

当然、エリオとキャロも同様であり、カノンとアイオリアに指導を受けたクロノやヴェロッサから見れば、うらやましい限りであろう。

最も、クロノとロッサも星矢同様、それぞれ師匠を慕っているので、魔鈴同様、2人も弟子の調教はしっかりしていたのだろう。

 

 

 

未だに本出動はなく、勤務と訓練を繰り返すFW陣達。

最も、民間協力者であるエリオとキャロに勤務はないが………。

早朝訓練を終え、皆が集合してなのはの話を聞いていたら、フリードがキョロキョロと首を動かしていた。

「フリード、どうしたの…?」

「……なんか…焦げ臭いような……」

「あっ、スバル…アンタのローラー!」

エリオの言葉に、ハッとなったティアナがスバルに促す。

スバルの自作ローラーがショートして、煙が出ていた。

「うわっヤバ!…あっ……ちゃ〜…しまった、無茶させちゃった」

ショートしている自作ローラーを抱きかかえるスバル。

スバルのローラーだけでなく、ティアナのアンカーガンも実は限界だった。

先ほどの訓練でも弾詰まりならぬ魔力詰まりを起こしている。

手入れは怠ってはいないが、所詮メカニックマイスターの資格を持たないアマチュアのハンドメイドデバイスでは、なのはの厳しい教導には耐えられなかったようだ。

「……みんな訓練にも慣れてきたし……エリオとキャロはともかく/・・・2人はそろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなぁ…」

「…新?」

「…デバイス?」

なのはの呟きに、スバルとティアナはきょとんとして聞いていた。

 

 ★☆★

 

はやてとアイオリアの2人は、六番ポートから聖王教会に向かっていた。

はやてはフェイトの車で送ってもらい、アイオリアはバイクでそれについていった。

「…まあ、リア兄はバイクよりも自分の足で走る方が速いんやけど……」

「……流石に市街地を光速で移動されたら洒落にならないよね…」

 

 

 

執務室でデスクワークをしていた聖王教会騎士カリム・グラシアに、秘書であるシャッハ・ヌエラから通信が入った。

「騎士カリム…騎士はやてとお連れの方がいらっしゃいました」

カリムは、自分の部屋に通し、お茶を用意する様に伝える。

書類を書き上げペンを置くと、扉をノックする音が聞こえてきた。

「どうぞ!」

扉が開き、巡礼者の格好をした自分の妹分と皮のプロテクターを身に付けた男が入室してきた。

「カリム。久しぶりや」

「はやて。いらっしゃい!」

カリムは笑顔ではやてを迎えると、その傍らにいる男に頭を下げた。

「義弟がお世話になりましたのに、今日までご挨拶に伺わないどころかそちらから出向いて戴き、申し訳ありません。ヴェロッサ・アコースの義姉、カリム・グラシアです」

「…アイオリアだ…。始めまして…」

アイオリアは、差し出されたカリムの手を握り、堅く握手をし微笑んだ。

頼りがいのある微笑みと、手から伝わる力強くも優しい暖かさを感じた。

自分の周りにはいないタイプの男性を見て、カリムの頬は朱が差していた。

「……ヤバッ…。恋敵を増やしてしもうたかも…」

カリムの反応に、内心、焦りを覚えるはやて。

本人に自覚はないが、アイオリアは局の女性からの人気が高い。

はやてと守護騎士達を筆頭に、命を救われたスバル。

更には地上本部のレジアス中将の娘のオーリス三佐。

陸士108部隊所属でスバル同様、命を救われた姉のギンガ。

つい先日は、六課隊員寮の寮母を務めるアイナ・トライトンと親しそうに会話をしていた。

他のバックヤードの女性達にも好意を持たれている。

そこまで、女性局員の好意を持たれているにも関わらず、男性局員からの反感は少ない。

カノンやムウとは違い、基本的に年下に対し面倒見が良いので、アイオリアを慕っている者は数多い。

強さと優しさを兼ね備えた漢の中の漢とも言えるアイオリアは、女にも男(変な意味ではない)にもよくモテていた。

「それでは、立ち話も何ですし、もうすぐシャッハがお茶を持ってきますのでとりあえずこちらにどうぞ…」

 

 

 

カリムからの話の内容は、『ガジェット・ドローン』についてであった。

新型ガジェットの存在と……。

「ガジェット同士の戦闘?」

「ええ。極稀になんだけど、ガジェット同士の戦闘が確認されているわ」

「…同士討ちやろか?」

「……その可能性も否定できないけど……私達は、第三勢力の存在を疑っているわ…」

モニターに映し出されたガジェットの画像。

「……外観に多少の差異があるな…」

「ええ。性能に関してはほぼ一緒。同じ性能なのにその外観を変えるなんて意味はないし…外観が違うからって、機械兵器が同士討ちをするのも不自然。この件から考えて、海闘士達とは別にカスタマイズされた『ガジェット』を使用している勢力があると判断せざるえない…」

海闘士だけでもやっかいなのにここに来て、別の新たな勢力の出現。

その勢力は、敵なのか味方なのか……。

頭が痛くなってきたはやてに追い討ちをかけるように、ミッドチルダに『レリック』らしき不信貨物が運ばれたと告げられた。

 

 ★☆★

 

その頃、スバルとティアナに新デバイスが与えられていた。

スバルに与えられたのは、ローラーブーツ型インテリジェントデバイス『マッハキャリバー』。

スバルの固有魔法である『ウィングロード』を自動展開でき、スバルのもう一つのデバイスである『リボルバーナックル』の収納、瞬間装着、カートリッジロードの制御している。

ティアナに与えられたのは、拳銃型インテリジェントデバイス『クロスミラージュ』。

特徴として、『ワンハンドモード』から『ツーハンドモード』へと二丁に増やす事ができる。

更に後付けでカートリッジシステムを組み込んだなのはの『レイジングハート』、フェイトの『バルディッシュ』と違い、当初からカートリッジを組み込んで政策されている。

エリオとキャロのデバイスは、もともとリニスが管理局の最新技術を元に製作している。

特にエリオの槍型アームドデバイス『ストラーダ』は現段階での近代ベルカ式のデバイスの中では最良のデバイスである。

最も、聖闘士であるエリオは実戦では余りデバイスを使わないので、宝の持ち腐れとも言えるが……。

スターズに今、渡されたデバイスと、ライトニング達のデバイスには出力リミッターが施されており、訓練の段階ごとに解除していくとの事であった。

その時、隊舎にアラートが鳴り響いた。

一級警戒態勢のアラートである。

「グリフィス君!」

【はい。教会本部からの出動要請です】

そこに、聖王教会にいるはやてから、なのは達と車で移動中のフェイトに通信が入る。

【教会騎士団の調査部で追ってた『レリック』らしきモノが見つかった!】

エイリム山岳丘陵地区を走行中の『レリック』を積んだリニアレールが『ガジェット』に襲われ、車両の制御が奪われたようだ。

内部に侵入したガジェットは30体以上。

いきなりハードな初任務である。

【機動六課FW部隊……出動!】

「「「「「「「はい!」」」」」」」

【了解!】

 

〈第六十五話 了〉


 

今回は、ちょっと短めです

真一郎「何で…幕間でもないのに…」

予定では今回でリニアレールでの任務すべてにするつもりだったんだけど……流石に長すぎるので二話に分けることにした

真一郎「ところで、アイオリアはカリムにもフラグを立てたか?」

アイオリアはカノンやムウ程の美形ではないけど、男としての魅力は2人を凌駕している……と、私なりの判断です

真一郎「さすが、みんなの兄貴」

では、これからも私の作品にお付き合いください

真一郎「お願いします。君は、小宇宙を感じたことがあるか!?」




訓練でやっぱり疲れるのはスバルとティアの二人か。
美姫 「流石に聖闘士の修行よりは幾分かましみたいだものね」
新しいデバイスもお目見えして、更には出動が。
美姫 「いよいよね。新人たちは初の出動だしどうなるかしらね」
楽しみです。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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