この話は、『桜舞う日の邂逅』や『桜散りし日の決闘』を参考にして創作した話です。

すべてにおいて初挑戦の二次創作SSです。

文法などおかしな点が多々あると思いますが、海より深く、山より高く、大目に見てください。

 

『少年恭也と女子高生薫の恋物語』

第三話 「退魔師」

 

 恭也と薫が一緒に鍛錬を始めて一ヶ月が過ぎた。小太刀の二刀流、しかも実戦流派というマイナーな剣術を使う恭也には海鳴でまともな相手はいないに等しかった。薫にしても風ヶ丘学園剣道部においては、男子部員も含めて薫以上の実力を持つ選手がいない……あくまで剣道部内においてだが……。同じ寮に住んでいる自分以上の達人とは、怒りに任せて真剣を振り回して追いかけるのがほとんどで、身のある鍛錬とは程遠い。恭也も薫もこの時間が楽しく仕方がなかった。

 

「えっ……明日は無理。」

 

 薫が明日の鍛錬を断ってきた。

 

「ああ。明日は家業の仕事があって、そちらに行かなくてはいけなくなったんだ。」

 

「家業……ですか。」

 

「先祖代々続けられてきた神咲家の家業じゃよ。」

 

 恭也は残念に思ったが事情が事情だから仕方がない。

 

「わかりました。明日は一人でやります。明後日は大丈夫ですね。」

 

「うん。明日だけですむから大丈夫じゃよ。」

 

 

 

 次の日。

 

 恭也は一人の鍛錬を終え家に向かって歩いていた途中、あまりにも異常な気配を感じ身構えた。現れたのは今時の普通の若者であった。いや、普通とは違う。目は血走り、涎を垂れ流し、呼吸が荒かった。

 

「何だこの男は、麻薬中毒者か。」

 

 思考しているところに、いきなりナイフを取り出し襲い掛かられたが所詮、素人。恭也の敵ではなく持っていた木刀で昏倒させた。…………が、男はゾンビのように立ち上がった。

 

「馬鹿な。確実に入ったはず………。」

 

「キヒャァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」

 

 いきなり奇声をあげ、先ほどとは比べ物にならないほどの動きで襲ってきた。

 

「はぁっ。」

 

 御神流『徹』を込めた一撃を相手のナイフを持つ腕に叩き込む。確実に男の腕はへし折れた。しかし、折れた腕を物ともせずナイフを振り回してくる。

 

「痛覚が麻痺する薬物を使用しているのか。」

 

 恭也は、相手に重症を負わせる覚悟を決めた。

 

小太刀二刀御神流 奥義の六 

『薙旋』

 

 抜刀からの四連撃。………鞘のない木刀で放っただけに若干剣速は落ちていたが………男を上回る速さで叩きのめした。男は完全に意識を失い倒れ伏した。もはや立ち上がることは不可能だろう。恭也が近くの公衆電話で警察と救急車を呼ぼうとした、そのとき・・・・・・・・・・・・・・・・。男の体から影のようなものが抜け出し恭也にまとわりつこうと迫る。

 

 感じるのは憎悪。

 

 立ち込めるのは殺意。

 

 そのなんともいえないものが恭也を包み込もうとしたとき・・・・・・・・・・・。

 

「高町君。」

 

 横から、いつもとは違う式服……修験者が着るような着物……を着ている薫が飛び出してきた。

 

「神咲さん。」

 

「神気発祥。」

 

 薫のもつ霊剣『十六夜』が霊力をまとい・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

神咲一灯流 真威 『楓陣刃』

 

 恭也に迫ろうしていた影は恭也から引き離され、切り裂かれる。

 

追の太刀 『疾』

 

 影に迫り両断。

 

閃の太刀 真威 『弧月』

 

 影は消滅する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 数分後、事後処理を警察に任せた薫は、恭也と帰路についていた。

 

「退魔師、ですか。」

 

「ああ、うちの家は約400年前から続く魔を払ってきた退魔師の血統なんだ。」

 

「霊能力者というやつですか。では、あの男は。」

 

「そこいらにいるチンピラだよ。本来ならお払いですんだ仕事だったんじゃが、立ち入り禁止を無視して進入して悪霊に取り憑かれてしまったんじゃ。どうやら憑いた相手の力を増幅させ暴れまくる悪霊だったようじゃ。逃げられてしまい追いかけている途中で君と遭遇したんじゃ。君が霊を追い出してくれたから、奴を払うことができた。ありがとう。」

 

 実際、あの悪霊に憑かれたチンピラによって警官数人が負傷していた。そのことを考えていた薫だったが、恭也は別の疑問が生まれ質問した。

 

「もしかして俺の膝を治癒したのは、神咲さんのそういう能力だったんですか。」

 

「ああ。そのことについても説明しよう。十六夜。」

 

 刀から、何かが出て、人の形を作る。

 

「始めまして恭也様。神咲一灯流伝承 霊剣『十六夜』と申します。」

 

 いきなり現れた金髪の着物の人に、恭也も驚く。

 

「君の膝を治したのは、うちの霊力と十六夜の『癒し』を使ったんだ。十六夜は昔からうちの家に伝えられている。」

 

 冷静に説明しているように見えるが、薫の心中は穏やかではなかった。恭也が危機にさらされていたため思わず飛び出していた。あのままではあの悪霊は次に恭也に取り憑いていただろう。それを防ぐために飛び出した。そして、普通の人間とは違うところを見られてしまったのだ。

 幼いころ特別な力を持っていたため苛められた記憶があるため、恭也に嫌われたらと思うと苦しくなる。

 既に薫は自覚していた。恭也に特別な感情を抱いていることに。まだ中学生くらいの恭也だが、同年代の男子よりはるかに落ち着いていて、年下という気がしなかった。普段は無愛想だがたまに見せる小さな微笑に何度も魅了された。容姿もいいがそれ以上にその内面をあらわしている飾りのない、外面が良いだけの輩、自分を良く魅せようと考える輩には絶対にできない不器用だけど素敵な微笑。

 出会って二ヶ月。恭也の事をよく知っているわけではない。しかし、彼の心根はこの微笑で理解できた。

 以前にさざなみ寮管理人、槙原耕介に抱いた淡い想いより遥かに強く恭也のことを想っていた。

 

「ありがとうごさいます。」

 

「えっ。」

 

「神咲さんには二度も助けられましたね。」

 

と、恭也の微笑。

 

ドキン。

 

 この微笑に再び胸が高鳴る。冷静に考えれば恭也は薫が心配したようなことを感じる人間ではない。そんな輩にはこんな微笑はできない。そのことに思い至り薫は安堵した。

 

「恭也様。お顔に触れさせてもらってもよろしいでしょうか。」

 

「え……構いませんが………。」

 

 薫に手を引かれ、十六夜が恭也のもとに来る。

 

「もしかして、目が………。」

 

「はい、生前から………。はぁーーーー。想像したとおり可愛らしくも凛々しいお顔で。」

 

 その言葉に僅かながら照れが浮かんだ。

 

「そうじゃ高町君。うちのことは名前で呼んでくれんか。親しい相手にはうちのことは下の名前で呼んでもらっておる。」

 

「わかりました。薫さん。これでよろしいですか。俺のことも下の名前でいいですよ。」

 

「ありがとう、恭也君。」

 

 薫も笑顔で返す。その後、様々なこと語りあっていた。

 

〈第三話 了)


後書き

 前回までとは違い、今回は三人称。その回の私の気分によって、変わります。

 さて、今回の話はいかがだったでしょう。

 薫は己の気持ちを自覚しますが、相手は『無愛想』、『朴念仁』、『強烈な照れ屋』の恭也。

 薫の想いは報われるのか。

 中学生(くらい)相手の恋愛に寮のセクハラ魔人にどうからかわれるのか(←どこからでてきた)

 では、また次回




薫の裏家業について知った恭也。
美姫 「とは言え、特に拒否する事もなく良かったじゃない」
だな。さてさて、次はどうなのかな。
美姫 「気になる次回は」
この後すぐ!



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